表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/7

5話

 家に戻ってきたルナフレアは、乱雑に積み上げられた古い書物を一心不乱に漁っていた。

 やがて一冊の書物を見つけ出し、そのまま何時間もその場を動かなかった。


「……やはりな」


 ルナフレアが呟くと書物を閉じて、僕の方を向いて話し始めた。


「アルト、よく聞いてくれ」


「お前が使った魔法……あれは本当に白魔法なのか?」


「はい。光魔法は使えなくて、白魔法しか……」


「……とんでもないことだぞ、それは」


 ルナフレアの表情はこれまでになく真剣だった。


「この世界がどうやってできたか、知っているか?」


「え……? いえ、詳しくは……」


「大昔、この世界は暗黒に支配されていた。光も命も存在しない、ただの闇だ」


 ルナフレアは古びた書物を開き、挿絵を見せてくれた。黒く塗りつぶされた世界に、白い光が差し込む絵が描かれている。


「神がその暗黒を白色に変え、地上を創った。その時、神が使ったのが『白魔法』だ」

「白魔法は、世界を創った神の魔法……ってことですか?」


「ああ。そして光魔法は、白魔法から派生した力だ。川の源流と、そこから分かれた支流のようなものだな」


 ルナフレアは立ち上がり、窓の外の星空を見上げた。


「神は人間の中から勇者を選び、光魔法を伝授した。魔王を倒すための力として。ルビスが使っていたシャイディーンも、その光魔法の最上級だ」


「でも、白魔法は……」


「そうだ。白魔法は神が人間に与えなかった。源流たる白魔法を使えるのは、神だけのはずなんだ」


 ルナフレアが振り返り、僕を真っ直ぐに見つめた。


「なのに、なぜお前が使える?」


「……分かりません」


「私にも分からない。こんなこと、歴史上一度も記録がない」


 僕は自分の手を見つめた。この手から放たれる魔法が、神の魔法だなんて、信じられなかった。


「ただ、一つだけ言えることがある」


 ルナフレアが僕の肩に手を置いた。


「ルビスの光魔法は、魔王ヴァンデルには届かなかった。光魔法の最上級であるシャイディーンでさえ、奴を倒せなかった」


「……」


「でも、お前の白魔法は、光魔法の源流だ。支流で届かなかったなら、源流ならどうだ?」

 ルナフレアの目に、希望の光が宿っていた。


「お前の力なら、ヴァンデルを倒せるかもしれない」


 魔王ヴァンデル。その名を聞くだけで、胸の奥が熱くなる。母さんを殺した仇だ。


「……倒したい」


 気づけば、僕は口を開いていた。


「僕の力がどれほどのものか分からない。白魔法で何ができるのかも分からない。でも……母さんの仇を討ちたい」


 ルナフレアは真剣な表情で頷いた。


「ああ。ルビスの仇を討ちたいのは、お前だけじゃない。親友だった私もだ」


「ルナフレアさん……」


「よし! そうと決まれば善は急げだ!」


 ルナフレアの表情が、一気に明るくなった。


「さっそく、あいつらにも声をかけに行くぞ!」


「あいつらって……?」


「決まってるだろ、残りの聖戦士だよ。まずはティーエに会いに行くぞ」


 ルナフレアは勢いよく立ち上がると、部屋に散乱している飲みかけの酒瓶を集め始めた。


「……と、その前に決起会だな! よし、アルト! 今日はとことん飲み明かすぞ!」


「え、僕まだそんなに飲めな――」


「酒だ酒だ~! こんなにめでたい気持ちで飲める酒は久しぶりだ!」


 僕の言葉など聞いちゃいない。ルナフレアは上機嫌で酒瓶を抱えている。

 その後、しこたま酒を飲んで酔っ払ったルナフレアの姿は、僕の口からは言えるようなものではなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ