16話
その夜。ローザの手で綺麗に繕われた服を着て、温かいお風呂に入ったアルトは、用意してもらった寝床に横になっていた。
ローザは、アルトの布団を念入りに整えていた。
「寒くないように、毛布を多めにかけておいたわ」
丁寧に布団の端を整え、枕の位置を調整する。
「夜中に寒かったら、いつでも言ってね。おばさん、すぐに起きるから」
「ありがとうございます……」
アルトは、ローザの優しさに胸が熱くなった。
「まるで、お母さんみたいです」
その言葉に、ローザは頬を染めた。
「お母さんだなんて……おばさんで申し訳ないわね」
少し寂しそうな表情を見せる。
「ルビスみたいに、綺麗で強くて、素敵な人だったら良かったんだけど……」
「そんなことないです」
アルトは慌てて否定した。
「ローザさんも、とても優しくて、素敵な人です」
「……ありがとう」
ローザは嬉しそうに微笑んだ。そして、ふと顔を上げると、アルトをじっと見つめた。
「……ねえ、アルトちゃん」
「はい?」
ローザが急に顔を近づけてくる。月明かりに照らされたローザの顔は、とても美しかった。
「こんなおばさんに、こんなに優しくしてくれて……」
冗談っぽく微笑みながら、小首を傾げる。
「責任、取ってくれるのよね?」
「え、えええっ!?」
アルトは顔を真っ赤にして固まった。心臓が激しく鼓動する。ローザの顔が、こんなに近くにある。
「ふふっ、冗談よ、冗談」
ローザはクスクスと笑う。
「こんなおばさん、本気で相手にする人なんていないわよね」
そう言って、少し寂しそうに笑うローザ。その表情を見て、アルトは慌てて言った。
「そ、そんなことないです!」
「え?」
「ローザさんは、とても素敵な人です!優しくて、料理も上手で、綺麗で……」
アルトは一気に言葉を紡ぐ。
「僕、ローザさんみたいな人が、お母さんだったら……いや、その、えっと……」
途中で何を言っているのかわからなくなって、アルトは言葉に詰まった。
「あ、あら……」
ローザは本気で照れて、顔を真っ赤にした。
「そんな、お世辞言わなくても……でも……ありがとう」
嬉しそうに微笑むローザの表情は、まるで少女のようだった。
「おやすみなさい、アルトちゃん。いい夢を」
ローザは優しくアルトの頭を撫でると、部屋を出て行った。一人残されたアルトは、まだドキドキする胸を押さえながら、天井を見つめた。
ローザの優しさ。母親のような温かさ。そして、あの冗談めかした言葉。アルトは顔を赤くしたまま、なかなか眠れなかった。
翌朝、豪華な朝食の匂いで目が覚めた。
「アルトちゃん、起きて。朝ごはんできたわよ」
ローザが笑顔で呼びかけてくる。テーブルには、焼きたてのパン、ふわふわの卵料理、色とりどりのサラダ、温かいスープが並んでいた。
「こんなに……!」
アルトは驚きの声を上げる。
「今日から修行だから、たくさん食べなきゃダメよ」
ローザは嬉しそうに、アルトの器に料理を盛っていく。
「おばさん、アルトちゃんが強くなれるよう、精一杯サポートするわね」
ローザの温かい笑顔に、アルトは胸が熱くなった。新たな家族を得たような、そんな温かさに包まれながら、アルトの旅は新たな一歩を踏み出した。




