元旦警察
元旦は1月1日の日の出から正午まで。
ー元旦警察 条例第1項ー
元旦警察が実体化したのは、
一月一日の午後だった。
最初は、ニュース記事のコメント欄だけだった。
「元旦は一月一日の朝だけです」
「午後に使うのは誤用」
「ライターの質が落ちた」
誰かが
「元旦の午後、外出した」
と書くたび、必ず現れる。
訂正は正しい。
どこまでも正しい。
だから誰も反論しなかった。
問題は、
**訂正がコメント欄から出てきたこと**だ。
一月一日の夕方、
私は編集部で原稿を直していた。
タイトルは、
《元旦の午後に起きた出来事》。
その瞬間だった。
背後に、気配が立った。
振り返ると、
黒いコートの集団が並んでいた。
全員、無表情。
白い手袋。
胸には小さな名札。
――**元旦は朝だけ**
そのうちの一人が、
淡々と告げる。
「それは、午後です」
声は穏やかだった。
怒りも、感情もない。
「ですから、元旦ではありません」
私は言い返せなかった。
正しいからだ。
原稿を見ると、
赤字が入っていた。
《元旦》に二重線。
《一月一日》に修正。
次の日から、
訂正は拡大した。
・放送原稿が差し替えられる
・SNSの文章が書き換えられる
・「元旦の午後に会おう」という約束が消える
元旦警察は、
誰も罰しない。
ただ、直す。
正しく。
一月六日。
世間はもう、
すっかり平常運転だ。
だが、元旦警察は
まだ解散していない。
俺は見てしまった。
カレンダーの前で、
誰かが呟くのを。
「……あけましておめでとう」
その背後に、
静かに立つ影。
白い手袋が、
そっと肩に触れる。
「それは、もう
元旦ではありません」
今日もまた、
何かが正しく訂正された。
ご覧頂きありがとうございますm(_ _)m
またホラーコメディの扉の向こうでお会いしましょう♪




