青い口紅は治外法権
狂気のラーメンは、血の味がするのを計算して、血と混ざった時に一番美味しくなるように計算しつくされている。
女店主の口紅の色の謎から始まるラブロマンス。
数年前。
「あー、腹減ったな」と誰もいないので独り言を言いながら、僕が歩いていた時です。
そこにタイミングよく、ラーメン屋さんがありました。
ラーメン屋の前には、大きなモニターがあり、そこに女性の店主が映っておりました。
映り方が顎の先端がギリギリ入っておらず、頭のてっぺんがこれまたちょうどギリギリ入っていないぐらいのドアップの画角です。
「このラーメン屋は、わたしが、赤い口紅をしている時は営業中です。そして、わたしが青い口紅をしている時は、やってません。
ただし!!
青い口紅をしてるけど、たまにやってる時もあります。どうしてもわからない場合は私に直接聞いてください」
僕は自分の耳を疑いました。
俺の人生で一番、変な奴かもしれない。
なんせ、このラーメン屋さんは、醤油ラーメンなのか味噌ラーメンなのか、とんこつラーメンなのか、外からはメニューも何にもわからないのです。
ループした映像なので、また女店主が同じことを言います。
「このラーメン屋は、わたしが、赤い口紅をしている時は営業中です。そして、わたしが青い口紅をしている時は、やってません。
ただし!!
青い口紅をしてるけど、たまにやってる時もあります。どうしてもわからない場合は私に直接聞いてください」
何回聞いても意味がわからない。
“営業中”とか“仕込み中”と書いた裏表の札をつけておけばいいだけではないか。
いちいち唇を見るということなのか。
青い口紅なんて、ミュージシャンとかアートモデルとか、そんな人しかつけてるイメージがない。
そんなことを考えている間に、またループ映像の最初に戻っていました。
「このラーメン屋は、わたしが、赤い口紅をしている時は営業中です。そして、わたしが青い口紅をしている時は、やってません。
ただし!!
青い口紅をしてるけど、たまにやってる時もあります。どうしてもわからない場合は私に直接聞いてください」
もっと説明することあるやろ。絶対。
何ラーメンがあるねん。一体。
ライス無料の時間帯があるとかさ。ないとかさ。
なんやねん。口紅の色でやってるかやってないか判断するって。
ほんで、青の時は、やってないのになんで店おんねん。
ほんで、青やけどやってる時もあるってマジでなんやねん。どうしよう。
入りたい気持ちと怖い気持ちがオレの中で戦っている。
「このラーメン屋は、わたしが、赤い口紅をしている時は営業中です。そして、わたしが青い口紅をしている時は、やってません。
ただし!!
青い口紅をしてるけど、たまにやってる時もあります。どうしてもわからない場合は私に直接聞いてください」
映像の“赤い口紅をしてる時は”という説明部分のところまでは、真っ赤なルージュをひいていて、青の説明のくだりになると、青色の口紅に変わっています。
そんな細かいところの映像の加工をしているのに、なんでこんな顔全体が入らないような奇妙な画角で撮影してるんだ。
くそ!!!ここから離れられない!!!!!!
「このラーメン屋は、わたしが、赤い口紅をしている時は営業中です。そして、わたしが青い口紅をしている時は、やってません。
ただし!!
青い口紅をしてるけど、たまにやってる時もあります。どうしてもわからない場合は私に直接聞いてください」
何回聞いてもわからん!意味がわからん!!!
僕は、おそるおそる店内をのぞいてみました。
いました!女店主です!!!
青い口紅です!!!
や、やってない日か。。。
くそ。
こんな変な奴に出会うのも、人生でそんなにないことだ!!!!
せっかくだから、ラーメンを食べてみたい。そう思って、青の時もやってる時もあるというセリフのほうにかけて、ドアを押して入ってみました。
女店主がこちらをギロリと見てきます。
「なんですか?」
「あ、いや、あの、えっと。あいてますか?」
と、僕が聞いた瞬間です。人外のスピードで僕に近づいたかと思うと、僕のレバーに女店主は思いっきり、左フックを突き刺しました。
「うぐっ!」と悶絶している僕の胸ぐらをつかみ、「来い!」と叫び、女店主は店の外にやってきました。
そして、れいのモニター画面のところに僕の頭を何度も何度も叩きつけました。
「青い口紅をしてる時は!!やってないんじゃ!!!!」
「で、でも、青い口紅を、してる時でも、やってる時もあるって!」
僕が泣きながらそう言うと、女店主は割れたモニター画面に指をつっこみ、自分の指を切りました。
そして、赤い血を唇になすりつけたのです。
その時の顔の、なんと美しいこと!!!!!!
そして、女店主はこう言いました。
「直子ちゃんラーメン、開店だよっ!!!!!」
僕は、普通に警察を呼ぼうかと一瞬、思いましたが、そんなことよりも、赤い口紅の時の女店主の美しさにポーっとしていました。
もう一度店の奥に入ってカウンター席に座ります。
「直子ちゃんラーメン、大盛りでも同じ値段になる時があるよ。黄色い口紅の時はね」
と女店主の直子さんは言いました。なぜ、今は黄色くないのに、その説明をするんだろう。
「ていうことは、今は同じ値段にならないんですよね」
と僕は聞きました。
すると、直子さんは、厨房から人外のジャンプで僕の顔面に飛び蹴りを喰らわせました。
「お前、目ぇ、見えへんのか!!!殺すぞ!!!!!」
僕は、歯が四本折れ、口の中が血だらけになりました。
でも、幸せでした。
直子さんがポケットから黄色い口紅を取り出し、塗り塗りしはじめたからです。
「今日は特別に大盛りも同じ値段で作ってやるよ!!!!」
そう言うと、直子さんは、ラーメンを手慣れた手つきで作り始めました。
ボコボコにされたあとの豚骨ラーメンは、口の中が血だらけなので、染みるかと思いきや、血が混ざることによって、とても美味しいという、不思議な不思議なラーメンでした。
「どうだ?血が混じるとうまいだろ」
「はい!!」
僕がそう返事をすると、直子さんは「気に入った!!お前をセフレにしてやる!!!!」
そう叫びました。
それ以来、直子さんとはセフレの関係を現在でも続けています。
めでたしめでたし。
おしまい^_^
読んでくれてありがとうございました。芸人をしています。noteやらYouTubeやら色々やっております。応援してくれたら幸いです。




