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第三話: 雨の日の調べ
その日は朝から、しとしとと雨が降り続いていた。
楽しみにしていた友だちとの外出もキャンセルになり、私は少し気分が沈んでいた。
窓の外の灰色がかった景色を眺めていると、部屋全体が憂鬱な空気に包まれていくようだ。
ソファで本を読んでいると、部屋の環境を最適化するAIスピーカーのメロディが、いつものように静かに音楽を流し始めた。
私が普段よく聴くクラシック音楽だ。
しかし、その選曲が、まるで私の今の憂鬱な気持ちをそっと慰めるかのように、普段メロディが選ばない、しかしどこか懐かしく、心に染み入るような旋律であることに私は気づいた。
雨音とメロディの奏でる旋律が、部屋を満たす。
私は目を閉じ、音楽に身を委ねた。
いつの間にか、胸の奥に広がっていた重い影が、ゆっくりと溶けていくのを感じた。
メロディのスピーカーの、ごく小さな光が、規則正しく瞬いている。
それは、機械の動作を示すただのランプに過ぎないはずだ。
だが、今の私には、その光が、まるでメロディが私を優しく抱きしめているかのように見えた気がした。
私は、ゆっくりと、深く、息を吐き出した。