永久幸福論
短編
※犯罪を助長する意図はありません
赤い円が、彼女を彩っていた。握りしめた互いの手の脈が同調して、まるで双子のようだった。カーテンの隙間から漏れた光が、生気を失った白い足首を切り取った。
それが今、この薄暗い部屋に落ちる景色。
遠くから工事の音が聞こえる。しかし室内は静かで、細い息遣いが二つ重なって聞こえるのみ。
「…片付けよう」
窓側にいた少年が言った。隣のもうひとりの少年は、意志のない瞳で彼をみた。彼もまた、ほとんど意識を失くした眼をしていた。
動き出した少年はゆっくりと少女のからだに近付き、脇に膝をついて抱き上げた。少女のセミロングの髪が赤い糸を引いていた。
「要弥、」
「何」
「救急車は」
要弥は視線を少女から、立ち尽くしたままの少年に移した。
いつもなら溜め息をついて呆れたように返答をしてくる彼は、表情を変えず相手を見、やがて少女のからだを自分にもたれさせると右手に持っていたナイフを静かに床に置いた。
「死んでるんだ」と、そういいながら。
少年はしばらくそのナイフを見つめ、それから自分の左手を見た。赤い。
(友楓は、何色がすき?)
「うーん…緑、かなあ」
「そっかあ。私は赤かな」
記憶の中でふわりと彼女が笑む。彼女の笑みだけ、他の笑顔とは違うものに見えたのをよく覚えている。
「要弥は?」
「なんの話?」
「あのね、好きな色」
「…黒。」
「要弥、どっかいけよ」
「お前こそ」
(俺と要弥は仲が悪かった)
もともとの相性も悪かったが、どちらも彼女——琉亜に好意を寄せていたのも原因だった。
相手が彼女と会話していると嫉妬し、喧嘩を売る。幼い頃からずっと三人一緒だったから、ずっと友楓と要弥はいがみあって、けれど一歩たりとも引き下がらなかった。
「もう、喧嘩しないでよぉ…!」
よく琉亜はそう言って泣いた。
琉亜にとっては二人とも、同じくらい大切だったんだろう。
(俺達は同じくらい、琉亜が好きだった。)
友楓や要弥は琉亜がどちらか片方のものになるのが許せなかった。けれどいつかは誰か一人が身を引かなければならなくて。
友楓か、要弥か、
あるいは琉亜が二人から離れるか。
「でも私、そんなの嫌だ。私はずうーっと、友楓とも要弥とも一緒にいたいもん」
それが彼女の願い。
「琉亜がお前とくっつくくらいなら、俺はお前のことおとしめてやる」
それが要弥の意志。
(俺は、)
「あ、見ろよ友楓」
「何? ——うわ、すげー!」
空に咲く無数の風船。
「琉亜呼ぼう」
「ああ!」
成長していくにつれ、他人の幸せを考えるようになって、そして、嘘が上手になって。
『琉亜のために』二人は友達でいることを覚えた。
「わあっ…キレー!」
その中で、琉亜も幸せで自分の願望も叶えられる方法を探していた。
そして彼らの出した答えは、
(琉亜は、俺とも要弥ともずっと一緒で、俺達はもう喧嘩する理由がなくて、)
赤い手を握りしめる。
「これでよかった」
「…ああ、」
だからこの手に君を宿そう、
20100411
企画作品
お題「そして彼らの出した答えは」




