Ep.1 民間治安対処部隊の創設
「人選はあなたに全て任せるわ。あなたの好きな人物を集めてその組織を作ってちょうだい」
その一言で、とあるプロジェクトが開始された。
そのプロジェクトとは....
香浜の支配者とも言っていい、大財閥の明智家の令嬢であるアシュリー・アカリ・アケチが明智家が守って来たこの街を守るためであった。
アシュリーはまだ20代と若いがその頭の回転と人脈のネットワークでは明智家の中でも群を抜く人物である。
香浜政府が持つ通常の警察力で対処できない事件を捜査、鎮圧するために彼女がCEOを務める香浜警備保安公司の社長直属で特殊事業部門『影浪』という民間の治安維持実力行使部隊を組織することになった。
民間と言ってもこの香浜で空港内や鉄道駅沿線内をそもそも香浜警備保安公司が香浜政府の認可を受けて警察業務を行っているので全くのノウハウがないというわけではなかった。
名目上はその空港施設や鉄道沿線での緊急対処部隊という形をとって設立を進めることになっている。
しかし、ただのSWAT部隊の創設が彼女の目的でないのは、この部隊を作る上で拾い上げた人物にあった。
「わかりました。アシュリーさん...とっておきの部隊を作り上げます」
そう、アシュリーの話を聞いて40代ぐらいだがどこか落ち着いた雰囲気もあるいかにもエリートなサラリーマンの雰囲気がある男性がある書類を手に取り中身を確認した。
彼は斎賀太一。
彼は元本土の大手である丸菱総合商社にいる商社マンである、主に世界各地を飛び回って数々のプロジェクトを回してきた人物....しかしそれは表の顔だった。
「頼むよ〜。斎賀さん...あなたの噂を聞いて雇ったんだ。きっちり給料働いて欲しいのよね」
アシュリーはそう斎賀太一の裏の顔が書かれた軍の機密文書を手に取りそれを見ていた。
「ケンブリッジ大学卒業後...ROTCで陸上自衛軍に入隊。その後3年後に丸菱ってのは...全然嘘じゃん。
だって...13年前の北華事変で、基隆上陸作戦や金門島奪還作戦、ある浸透作戦にって大活躍したって....
アメリカの友達から聞いたんだけどね」
「あら...そこまではやっぱりお見通しなんですね。これは参りましたよ」
斎賀はそうアシュリーの言葉を聞いて、どこか白々しくニコニコと笑みを浮かべてそう返事を返した。
アシュリーの人脈は確かで、各国のいろいろな人材が彼女の武器だ...彼女の目の前にいる斎賀をこうやってスカウトできたのはそれがあってのことだった。
アシュリーは懲りたような表情をしている斎賀を横目に機密文書の続きを見始めたーーー
それを見ていた斎賀は首を傾げてこう呟くように言った。
「まーその本当は消えてるはずの書類が、アシュリーさんの手元にあるだけで私はお手上げですよ」
「私をあまり舐めない方がいいよ。飼い犬にはきちんと首輪をつけて芸もちゃんと叩き込む派だからね.....
やっぱり経歴は思った通りねーーー
陸上自衛軍の初級幹部教育過程後にそのまま特殊作戦群入りね....そしてすぐに情報部別班で世界各国を飛び回ってたってやつね」
「あー怖い怖い。でも、利害は一致してます。私はこの国を守るこれは信念です。
アシュリーさんはこの香浜と日本を守るという信念をお持ちだーー」
斎賀はそういうとカバンから、持ち込んでいた資料をアシュリーのデスクの上に置いたーーー
「早速ですが....これが現在。スカウトを考えてる人材の一覧です。予算などはお願いしますよ」
斎賀のその言葉を聞いて、斎賀においた書類を手に取ってこう言った。
「手書きのドキュメントなんて...古いわねーーまーこっちの方がセキュリティレベルは高いんだろうけど...」
「まーまーまー。私は割とアナログ人間ですからね。
少数精鋭によるここに独立した行動を行える人材で構成する。
チームワークなんて生ぬるいことは無しに並列にそれぞれが思考して目標を目指すそんな柔軟性と機動性を武器にしらチームを作る予定です。
リーダーにはこの男を指定します。
彼とは現場で何回か共に過ごしたことがありますーー
対テロ作戦での指揮官としての経験も豊富でなんでもできる基本スペックの高いジェネラリストです」
「なるほどね...本土のゴリゴリの国粋派の組織からのヘッドハントねーーーいいわ。予算はいくらぐらいでこの彼はきてくれそうかしら?」
「値段交渉は直接、やってみますよ。それ相応を出してもらえればですがね」
斎賀のどこか自信に満ちている顔を見て、アシュリーはどこか気持ち悪い感覚を感じた。
彼は外国で敵勢力下にある人物を何人もエージェントとして引き入れた経験がある凄腕のスパイでそのどこか異質な懐柔作戦が普通ではないの滲みでてたからだ。
「わかった。人員は最大で11人を考えてる。その後、増やすかは運用をしてみてから考えるーーー
人員の選抜は任せるって言ったけど、香浜警察局やうちの社員も入れてよね。
私たちがやりたいのは戦争屋じゃないから、軍人ばかりで集めて欲しくはないわ」
「わかってますよー。では早速向かって行きますね」
ーーーー
『香浜本部から各局。現在発生中の番号678の立て籠り事件にあっては、現時刻2230もって。龍頭署から警備部へ指揮権を委譲。
龍頭01は指揮権の委譲後は直ちにエリア223までの封鎖と周辺検問を実施せよ。以上、香浜本部』
その無線を対策本部が建てられた。
香浜警察局龍頭署の大会議室に集まっていた面々は聞いていた。
指揮権が香浜警察局本局の警備部に切り替わるタイミングで、斎賀とアシュリーはその大会議室に堂々と入り込んでいた。
唖然としてる警備部のお偉い警察官たちもいたが、多くは2人を好意的な目で見ていた。
対照的に本土から派遣された香浜担当の国家警察の官僚と国家憲兵隊の大佐はどこか嫌そうな目で2人を見ていた。
「由々しき事態なのはわかってるのか?民間の警備会社がしゃしゃり出てるまくじゃないんだが...」
そう開口一番に口を開いた国家警察の官僚である隅田警視監がそう言った。
それを聞いた、香浜警察局の警備部長がこう言った。
「呼んだのは私です。
香浜警察局警備部のSDUと機動部隊PTUとの合同作戦として香浜警備保安公司の機動部隊がこの事件の解決を行います」
それを聞いた、隅田警視監はどこか嫌そうな顔をしてこう言ったーーー
「今回の立て籠りの人質には本土の高官がいる。重大な危機を孕む事態だ....人質は犯人に死傷者が出た場合は
香浜警察局での事態対処ができない場合として...
待機している憲兵隊GSIGが事の対処を行う」
それを聞いたアシュリーはため息をついてこう言ったーー
「あーあーこれはどうもどうも。心配しなくてもうちの特殊事業部門の隊員たちがなるっと事件を解決しますから。本土の皆さんには、お茶でも飲んでゆっくりしててください。
我がアケチグループで販売してる紅茶とお菓子を用意しましたのでぜひお召し上がりください」
アシュリーはそういうと、3人の庶務係の警察官が会議室にいる人々にお茶を用意し始めた。
どこかフラストレーションが溜まっている本土の2人は席を立ち上がり会議室を出て行くのが目に入ったーー
「さて...ここで本土政府につけ込まれるのも嫌だから...一つマジで行きましょうか?」
アシュリーはそう言って腕を回して、机にある地図を見て状況を把握することにし始めた。
斎賀も同じで、卓上にある図面を色々と見ながら書き込むや周りにいた香浜の警察官たちに聞くことを聞き始めていたーーー
そして、斎賀はチームメンバーに暗号通信もできるアプリケーションを使いメッセージと情報を送信した。