第七章幕間 送別会
あの激戦から三ヶ月。新しい年が迎え、戦いの痕跡が大きく残るほか、平和のために活動する人もいるのであろう。事件で命を落とした人たち、甚大な被害に遭った人たち、戦闘に巻き込まれた人たち、安らかに眠れ。そのレクイエムは唄っていく。
第七章幕間 送別会
前回の話は、「アレグロ雪郎」の目的を知るために「街の生徒達」は一隻の船に潜み、戦いの舞台へ向かったものの、「シチメン」が派手に出しゃばりすぎたのせいで目立った活躍はないまま帰還。不毛な成果しか残らなかった。さらに動乱から3ヶ月の間、停学していた生徒会書記「デイモン」は外部組織「シャドウオーガニゼーション」から足を洗ったうえで今年1月より復帰した。雅史」は引き続き、「アレグロ雪郎」の保護下でこの学園を通っていた。
2011年3月9日(水) 9時
【体育館】
中等部卒業式はグラウンドフロア(1階)のメインアリーナで行われる。
「(中等部在校生:)これから樋串武学園中等部・卒業式を会式します。卒業生、在校生、起立。...礼。...着席。」
まわりを見る限り、2011年当時の雰囲気だ。この学園では基本的に国歌斉唱しない。その代わりに斉唱はしないものの、この学園の校歌のインストルメンタルが流れることになっている。
その次は卒業証書授与。授与担当者はもうすぐ退任するであろう臨時教員「アレグロ雪郎」。順番に卒業証書を授与することに。
「(アレグロ雪郎:)大原雅史。」
「(雅史:)はい。」
「(アレグロ雪郎:)君はこの学園生活において、半分くらいの経験をした。中等部卒業後、ラファエルのもとで学ぶためにニューヨーク州に戻らなければならない。ここでのスクールライフに悔いはないか?」
「(雅史:)ニューヨーク州に逃げて、いろんなことを学んだ。多様性を得るためにラファエルのもとで修行するって決めたの。悔いはないよ。」
「(アレグロ雪郎:)ラファエルをよろしくな。」
卒業証書授与が終わり、次は卒業生代表による答辞。「清子」は卒業生代表として、答辞を読み出す。
「(清子:)この学園に編入してから1年半、数え切れないくらいのトラブルがありましたけれど、学園生活の充実は前の学校在校時代と比べて遜色ないものでした。
この学園は中高一貫校でして、高等部があるようで、わたくしら卒業生はその高等部に進学しますが......。」
答辞の途中だが「雅史」がこの学園を卒業して、再びニューヨーク州に戻ることになり、再び離れ離れになると思うと「清子」は泣き出しそうに...。
「(清子:)雅史さん......。ごめんなさい。健太さん、答辞の続きをよろしくて。」
感情むきだしの「清子」に代わり「健太」が答辞の続きを読む。
「(健太:)雅史は卒業して、留学生としてニューヨーク州に戻るそうだよ。この学園に来ることはない。だが僕らは中等部を卒業しても高等部としてこの学園にいるんだから、さみしい思いはない。彼の分まで高等部での学園生活を精一杯楽しんでやるからな。卒業生代表、郷田健太。」
「雅史」は再び留学生としてニューヨーク州に戻ることになり、また離れ離れになるだろう。彼の分まで、高等部での学園生活を3年間楽しむつもり。
卒業生一同は自らが羽ばたくための歌を斉唱する。
It's time to take off.
Wings are not what you want, but what you grow and fly.
Have you finished farewell, let's say goodbye.
Teacher, friend, I'm leaving, so goodbye.
Leaving in the beautiful sky.
Precious memory.
(今飛び立つ時が迎えた。
翼は欲するものではなく、生やして飛んで行くもの。
別れは済ませたかい、別れの言葉を告げよう。
先生、友、私は旅立つので、さようなら。
美しき大空で去ってゆく。
尊い記憶。)
「(中等部在校生:)これで卒業式を閉会します。卒業生、退場!!」
こうして、この学園中等部卒業式は終わった。体育館の外に出る卒業生、その後......。
「(雅史:)...終わったね。それにしても卒業式の歌のことだけど、『今こそ分かれめ』とか『いざさらば』とかじゃなくて『翼』と『巣立ち』の合体歌なのはどうよ?」
「(健太:)どうって言われても、いけ好かない先生に聞いてよ。」
「(雅史:)あの先生なら契約満了して去ったよ。もうここには戻らないって。」
「(健太:)...ま、それはそれとして、雅史がまたいなくなるとは驚いた。どういう風の吹き回し?」
「(雅史:)...ラファエルのもとでホームステイしてわかった。多様性を求めるものかなって。」
「(健太:)何を求めるか知るつもりはないけど。おかっぱの姿が見えない、どこで何をしているのか...?」
「(雅史:)言われてみれば、人知れず杏璃とともに学校を出た気が。居場所に心当たりがあるんで、河川敷に行ってみようかな。」
「(健太:)...先に行ってて、あとで追いかける。」
「(雅史:)じゃあお言葉に甘えて、ハイペリオン。お願いね。」
「(ハイペリオン:)あいよ。」
「雅史」は「ハイペリオン」に運ばれる形で河川敷へと向かった。
【河川敷】
同日 卒業式終了から30分後
「清子」は悲しい顔をしている。
「(ダイアナ:)ラファ兄がついてるから。ねっ。」
「(杏璃:)そういう問題ではありません。また雅史がいなくなるんですから、それも仕方ないということです。」
「(清子:)うぅ...ひっ。」
涙をこぼし、再びお別れになるであろう「雅史」が頭いっぱいで泣く「清子」。
「(ミュゼット:)気を落とさないでよ清子。冗談がうますぎるよ。」
「(和子:)わたしは大丈夫ですよ。イイんちょうさんはハンナさんとの時間を作るために海外留学するのですよ。」
「(ミュゼット:)そういう和子だって、目元に涙の跡が残ってるし。ま、無理もないか。2人には事情があって海外留学しなきゃならないからね。雅史はラファエルのもとでホームステイの続き、委員長さんはハンナ姐さんとの思い出を作るための留学とか。それにしても私と和子、カルウとチイアは委員長さんと同じ学校で3年間一緒だね。」
「(和子:)それもそうですね。清子さんはあの学園の高等部へ進学しますけどね。」
「(ミュゼット:)お、噂をすれば、2人が来たよ清子。」
「(清子:)......。」
普通の速さで「雅史」と「ハイペリオン」が来た。
「(ミュゼット:)いつもとは違って、ゆっくりで来るのってありなの?ん?ハイペリオン。」
「(ハイペリオン:)おかっぱが泣いていると見たんで。」
「(ミュゼット:)そういう理由で気遣って...?気遣いというか配慮とでも言いたいのかな?ほら、ギャン泣きおかっぱの前よ??」
「(ハイペリオン:)あーそうだ、キャプテン。おかっぱ風紀委員が泣いているとわかってここに来た、ということは考えがあってのことか?」
「(雅史:)様子がいつものとは違うかなって一応。翌日の朝に出発だから、過ごす時間を作ろうかなっと。」
「(ミュゼット:)翌日までに清子との時間を作るのね。さっ、私らはお邪魔だから帰ろっか。杏璃、和子、ダイアナ。おイトマしよっ。」
「(杏璃:)あたしはここに残ります。雅史くんとの時間が欲しいので。」
「(ミュゼット:)そうか。じゃあ、ゆっくり過ごしてね。」
「ミュゼット」と「ダイアナ」、「和子」「ハイペリオン」は河川敷をあとにした。3人っきりになった「雅史」と「清子」と「杏璃」。それに加えて「健太」が「ミュゼット」とすれ違う形で駆けつけてきた。
「(健太:)雅史、少しいいか?」
「(雅史:)遅かったね。軽い運動?」
「(健太:)ダイエットの話は置いといて、確認したいことが。おかっぱのことをどう思ってる?おかっぱのどこがいい?雅史のことだから女に好意があるとは思えない。」
「(雅史:)...あのね健太、君にそう言われるようだけど僕の答えを教えてあげる。清子のいいところは、なにより心が清らかで、綺麗。物事の決まりを遵守する、間違いそうなところを正してくれる。信頼に値する風紀委員だから。」
「(健太:)...そうか。それがわかった以上、何も言うことはない。」
「(雅史:)...清子。僕がいなくても、やっていける?」
「(清子:)...デリカシーの有無を問わず雅史さんが何を言おうとも、わたくしは......ぐすっ。」
「(雅史:)清子ならできる。この先、何が起きようともきっと乗り越えられる。僕はそんな君を信じてるよ。」
「(清子:)...ま...雅史さん......。」
いつから泣き虫になったのだろうか。「清子」は明日で別れる「雅史」に縋り付く。
「(雅史:)寂しかったらメールしよっ。」
「(清子:)...お電話でも......いつでもお話できる手段があれば......。」
「(杏璃:)リア充...いっそのこと爆発してください。」
「(健太:)...何も言わない。」
「(雅史:)再び羽ばたくための荷造りでもしなきゃね。清子、僕の家で手伝ってくれるかな。」
「(清子:)...うん。」
「(杏璃:)あたしも手伝います。」
......翌朝。
【ターミナル】
昨年と同じ空港で、皆は再びニューヨーク州に戻る「雅史」やワルシャワへ渡航する「仁雄」を見送ることに。
「(雅史:)よし、この前のような不備はないし、別れの挨拶しなきゃ。」
「(仁雄:)...。」
「清子」、幼馴染2人「杏璃」「健太」、「ダイアナ」ならびに「ハイペリオン」、日本に留まる「ミュゼット」や「和子」といった仲間達は「雅史」にお別れの挨拶を。
「(ダイアナ:)キャプテン...留学頑張ってね。」
「(ハイペリオン:)俺とダイアナは引き続き、あの学園の調査を続けるんでな。御主人様のことを、よろしく頼むな。」
「(ミュゼット:)いつまた会えるかは不透明だけど、会えたらいいな。ガジュ、デイカ、アマデのこともあるし、私は日本でバリバリ活動するから。」
「(杏璃:)...雅史くん、もしあたしらが恋しくなった時は、いつでも連絡してください。あなたの帰りを待ってますから。」
「(健太:)てぇぇぇええ(てめぇ)なんて、傲慢先輩のとこへいってしまえ!!」
「雅史」とその5人はお互いにハグしあう。
「(雅史:)ステキな挨拶ありがとう。これでお互い心置きなく自分の道を歩むことさえできる。さて、最後の挨拶いくよ。...いつかまた会える日まで。」
「(仁雄:)...俺はこれで。」
2人は搭乗ゲートをくぐろうと進む...。
「(清子:)雅史さん、いかないで!!」
一度も挨拶しなかった「清子」が「雅史」に抱き着く。
「(健太:)ちょ、おかっぱ...!!」
「(清子:)お願い、ここにいて!!」
「(雅史:)...別れたくない気持ちはわかるよ。引き止めても僕は飛び立つことは、清子にはわかってるはず。」
駄々をこねても運命は変えられないことは「清子」にはわかっている。わかっているけど、別れの挨拶を考えてる暇はなかったので、駄々をこねて自分の気持ちを伝えることくらい。
「(杏璃:)いつから駄々っ子になったのでしょうか...。」
「(ミュゼット:)それより和子、委員長さんに挨拶してないじゃん。」
「(和子:)...ごめん、イイんちょうさんに別れの一言を言いたいですけどね...。昨日の話になりますがね、海外留学すると聞かされて、わたし...ギャン泣きしましたけど、『別れは永遠じゃない。別れが永遠になるか一時になるか、それは自分次第だ。』って、イイんちょうさんがそう言ってましたよ。一時的であれば、別れの一言を言わないようにしようかなと。」
「(ミュゼット:)なるほど、納得...かな?」
「(仁雄:)...お利口さん。3か月後にハンナを連れて戻ってくる。」
「(和子:)イイんちょうさん...帰りを待ってますよ。それに比べて清子さんは...。」
「(清子:)お願い、雅史さん!!わたくしも行きます!!わたくしなら雅史さんの支えになりえます。あの頼りないラファエルさんよりも。お願いです、わたくしが信じられませんの!?ただわたくしを信じて、少しだけお時間をください!!」
「(雅史:)あぁ...君の必死を見ると......。......。」
「(杏璃:)雅史くんを泣かして、どうするのです?現実がわからないのですか?誰か、おかっぱを取り押さえてください。」
「(健太:)杏璃ちゃん...周りの人に迷惑をかけるおかっぱを抑えなきゃな。」
「健太」は泣きわめく「清子」を取り押さえる。
「(健太:)雅史!!行け!!留学がんばれよ!!帰りを待ってるからさ!!」
「(雅史:)健太...みんな......。別れは永遠じゃなく、一時的だからまた会える!!清子、高校卒業まで待っててね...。」
「(仁雄:)...そろそろか。『じゃあな』とは言わない、『I'll be back.』だ。」
改めて2人は搭乗ゲートをくぐる。取り押さえられた「清子」は泣き叫ぶ。
「(清子:)雅史さん行かないで!!ぃゃあああ!!!!雅史さん!!!!雅史さぁぁぁああああ!!!!!!」
「(健太:)こら、おかっぱ!!大声で叫んじゃあ周りの人に迷惑だよ!!」
「(雅史:)...また会える日まで。」
運命という言葉に再び引き離される「雅史」と「清子」。前回とは違う気持ちでニューヨーク行き便の航空機(「仁雄」の場合は乗り継ぎ、あるいは経由便でワルシャワ着)に乗り、アメリカへと飛んでいった。
ー「雅史」が再び飛び立った。
ーなにより私の心を支えるキャプテンが、いろんな想いが駆け巡る。受け入れがたい運命。再び引き離れるにも酷な。
ー...それでも弱気を見せなかった彼の雄姿を見届けた私には、ほっとしたかのように落ち着いていた。
ーきっとお互いはこの現実を理解したに違いない。今の私には、引き離された悲しみを嘆くことなどありえない。そうですわね?雅史さん。わたくし、雅史さんの分まで頑張りますわ。
To Be Continued
しばらくの間、休憩させてください...。




