第七章 予期せぬ派閥(2)
2010年12月6日(月) 朝礼
【杏璃、健太、清子の教室】
今日から非正規教員がこの学園に来るという知らせがあってのことか、皆はざわついていた。肝心の「杏璃」は来ていない。
「(健太:)おかっぱ、説得に失敗したと聞いたけど、しょせんは生徒会ってことがよーくわかったよ。」
「(清子:)...失敗なんかしていませんわ。奥の手を使いましたので、お楽しみにしてくださいまし。」
朝礼が始まる一分一秒前、教室に入ってきたのは、噂の非正規教員「アレグロ雪郎」だった。
「(健太:)誰?」
「(アレグロ雪郎:)あんたらにとっては初めまして、かな?今日から事故で入院しているあんたらの教員に代わり、臨時教員として勤めさせていただく『雪郎・コンブリオ』だ。指導してやるから、よろしくな。それと、あんたらのクラスメイトである杏璃のことだが、不登校のままじゃあ気味悪いからな。俺が強引に連れてきたぜ。待ってろ。」
「(典子:)私らの知らない先生が杏璃委員長を連れ出すって...。」
「アレグロ雪郎」が連れ出したのは長らく不登校でいた「杏璃」。
「(アレグロ雪郎:)ほれっ、不登校支援だぜ。」
「(健太:)だからといって、そんな横暴な!!」
「(アレグロ雪郎:)いいだろ?毎日学校通わないほうが悪いんだ。それと、あんたらにとびっきりのサプライズを用意したぜ。見て驚くなよ?さ、入れ。」
教室に入ってきたのは、アメリカに亡命したはずの「雅史」。
「(健太:)ま、雅史!?えっ!!!あ!!!!!」
「(典子:)......私は夢を見ているのか?」
「健太」の過剰反応はいかに?なにか不都合なことでもあるのかな?
「(雅史:)しばらくの間、復学することになった『大原雅史』だよ。杏璃、健太、幼馴染2人を助けるといえど、日本に引き返して、ごめん。中等部卒業まで、改めてよろしくね。」
「(アレグロ雪郎:)よかったな雅史。中等部卒業までとはいえ、幼馴染2人とともにいることになってな。俺がサポートしてやるから、スクールライフを思う存分に楽しめよな。」
朝礼終了後、「典子」は「雅史」に謝るべく声をかける。
「(典子:)雅史、あんたに謝りたいことがある。......中1からの友だったのに、ひどいことをして、ごめん!!」
「(雅史:)気にすることはないよ典子。僕のほうこそ、君とツヨシを疎かにしてしまった。」
「(典子:)...夢の中と同じ展開......。中等部卒業までに昔のよしみで過ごそう、ねっ。」
もう一度言ってみる。「健太」にとって不都合なことがあるらしい。
「(健太:)杏璃ちゃんは僕のもの。誰にも渡さない!!」
「(雅史:)あのね健太、僕は恋愛感情に乏しいので、意外な子以外に付き合う気はないの。なのに、それって心配すること?」
「(清子:)意外な子とは、わたくしのことでして。」
「(雅史:)そうそう、清子とは付き合ってるの。去年の夏休みの頃から少しずつ惹かれていき、最終的にカップル成立したの。9ヶ月前より既にね。」
「(清子:)わたくしは去年の夏休みの頃から雅史さんが気になりまして、付き合っていくうちに好きになりました。そう、大好きなくらいに。」
「(健太:)......杏璃ちゃんを傷つけるような言い方......。幼馴染とはいえど、本人の前での発言は看過できない!!」
「(典子:)やめろ。無神経な発言とはいえ、悪気があるわけじゃないんだよ。それに、私らは桃姫FC側に付いているんでね。雅史も桃姫FC側のもとで働こうや。」
「(雅史:)...それもそうだね。って桃姫ってなによ?」
「(清子:)あら、雅史さんにこのことを話してませんでしたわ。桃姫FCとは『中立に近い勢力で、帰宅部および生徒会の思想および行動指針にも合わない場合は所属することになります。』とのことです。わたくしは風紀委員のままでいるため、新派閥側に移すつもりはありませんがね。雅史さん、いかがいたしましょうかね?」
「(雅史:)...どうしようかな。なにより幼馴染が大事だけど...健太がね、マサオくんのごとく杏璃にラブコールを送るほど頑固でね、誰にも渡さないと言わんばかりなんで、まいったものよ...。彼の気持ちを尊重する形で移籍を検討しようかな。」
「(清子:)...でしたら、中等部卒業間近ですが生徒会側に移しても構いませんわ。」
「(雅史:)僕は生徒会の柄じゃないし、卒業に近いというなら新派閥側に移ろうかな。」
「(典子:)おお、さすがは昔馴染みの鑑!!持つべきものはキャプテン雅史だな。そういうわけだ健太。いっそうお前一人でやってろ。」
「アレグロ雪郎」が介入した結果だ。「雅史」とはもう相容れないくらい溝が出来てしまった。孤立してしまった「杏璃」と「健太」はどう動くのか?
「(健太:)僕の恋を邪魔する恋敵がいなくなって清々したのに...とんぼ返りして僕の前にして、また邪魔しようと......。」
自分の本音を漏らす「健太」。今の発言は「雅史」を刺激するようなものであるため、衝突は避けられない。だが「雅史」には「アレグロ雪郎」という先生がいる。「アレグロ雪郎」が幼馴染同士の衝突に介入する。
「(アレグロ雪郎:)おっと揉め事はここまでにしな。もうすぐ授業が始まるというのに、騒ぎを大きくしてどうするんだ?雅史、あんたの幼馴染に何を言われようが、ここは我慢だ。さ、落ち着くんだ。あんたらもだ。」
「(典子:)ちぇ......いけすかない先生。」
同日 昼食
今日の昼飯は、ピーマンの炒め物にブロッコリーサラダ。「アレグロ雪郎」や「清子」の好き嫌いがはっきりする。
「(アレグロ雪郎:)俺はな、ブロッコリーが食えんだよ。口の中でモサモサしていて、気持ち良いものじゃないし、そのままでも茹でてでも無理なものは無理だぜ。」
「(雅史:)そういや清子って、ピーマン嫌いだったのね。」
「(清子:)わたくしはピーマン嫌いなのですが、熟れたものなら好んで口にしますがね。」
「(雅史:)赤ピーマンのことだね。赤いのっておいしいよね。」
「(アレグロ雪郎:)そういうあんたらだって、よくも平然とブロッコリー食べられるな。どうやったら、平気なんだい?」
「(清子:)生のままでは食べられたものではありませんので、茹でて食べたほうがいいのかと。」
「(アレグロ雪郎:)そういうのじゃなくてな......。」
「(典子:)それより先生、杏璃委員長や健太はいずこ?」
「(アレグロ雪郎:)あの2人なら1階の保健室で昼食してるぜ。心の休養には時間がいるようだから、しばらくの間、保健室登校を続けるかもな。」
【グラウンドフロア(1階)保健室】
ここは保健室。当分の間、「杏璃」はここを通うことになるだろう。未だに昼飯を出されても、手つかずにいる。それでも「健太」は彼女のためだけ支える。
「(健太:)ごめんね杏璃ちゃん...。雅史が引き返してきて......。」
「健太」に何を言われようとも「杏璃」は応答しない。「マサオくん」に見向きもしない「酢乙女」のようなので、一方的な恋愛はうまくいくことはないだろう。
「(健太:)...無理しなくていいから、食事しよう。」
「バサカ」を喪った今の「杏璃」は虚無感で、何もしたくないという。
同日 放課後
「アレグロ雪郎」の保護下にある「雅史」は、実家ではなく「グッドウィン号室」でもなく、正しいルート(本来の道、ニューニコチュウ襲来ルート)に戻り、「杏璃」は人知れず帰宅。帰宅部のメンツ...「健太」だけは帰宅部らしく帰宅。今や「桃姫FC」側の3人「源郎」「典子」「魂二」は主である「桃姫」に奉仕するための活動。「清子」は「生徒会ガールズPlusインキュバス」のメンツ2人「ダイアナ」「ハイペリオン」とともに「桃姫」の思惑を議論することになった。
「(ダイアナ:)中立的な生徒を集めるってあの人はそう言ってたけど、新派閥には裏がありそう。清子はどう思うの?」
「(清子:)杏璃さんのもとを離れた3人が満足できそうな新派閥に移り、何事もなければいいですが。」
「(ダイアナ:)裏で生徒会書記と繋がっていて、隙を見て奪還...なんてことは......。」
「(ハイペリオン:)考えすぎじゃね?奴に限って面識があるとは思えんし、それにあの偶像は独自の派閥を発足してなにがしたいのか。」
「(ダイアナ:)それがわかれば苦労しないのに...あの人の思惑が読めなくて...。」
「(清子:)とりあえず、様子を見てはいかがです?特に停学処分を受けていて登校していない生徒会書記のほうです。」
「(ダイアナ:)生徒会書記管理ならうん、順調にね。」
「(ハイペリオン:)グッドウィン号室でおとなしくしているらしい、だから俺らのしていることは監禁じゃないぜ?コンブリオ先生が直々保護者に事情を話しといたらしいから、さほど問題はなかろうよ。」
「(清子:)...わたくしら...いえ、雪郎先生のしていることは、一方的な保護観察ってことになりますかね...。とはいえ、法令に抵触しない範囲で行使しているらしいので、今のところ大きな問題が起きていません。...どちらにせよ生徒会書記ならびに桃姫さんの動向を注視しなければなりません。杏璃さんは未だに立ち直れないままですし、いろいろ大変でしょうけど可能な限り、立ち直れるきっかけを模索しましょう。」
「(ダイアナ:)うん。」
「桃姫」の本当の狙いは現時点ではわからない。2週間後に彼女の目的が明らかになるので気長に待つしかないのであった...。Phase-3へ続く。




