第六章 キャプテン不在の舞踊会(1)
第六章 キャプテン不在の舞踊会
2010年7月16日(金)13時 終業式後
夏休み前日である本日をもって、この学園は生徒会書記「シャドウ・デイモン」の手に落ちた。他の帰宅部は抑圧されていて、今は動ける帰宅部はただ一つ「立ち向かエーヨ部」だけとなった。
【生徒会室】
「(デイモン:)ワタシの力を使った帰宅部共々の抑圧は順調に進んでますかナ?」
「(風紀委員A:)問題なく順調です、デイモン様。ただ...。」
「(デイモン:)ただ...とハ?」
「(風紀委員A:)我々生徒会に抗う輩がいるということです。デイモン様の能力をかわしながら。」
「(デイモン:)ああ...なんてことダ。弱い者同士、ワタシの力を乗り切るとハ...。それはもう、許されざることでス。あのお方に何と言えばいいのカ...。」
「(風紀委員A:)その心配にはおよびません。われわれ生徒会はただ、帰宅部共を対処するだけです。」
「(デイモン:)ならいいですがネ...。問題は帰宅部寄りのあのおかっぱ風紀委員とダイアナ、そして付き人インキュバスは侮れませんからネ。あの三人には十分気をつけましょウ。」
「(風紀委員A:)そのことなんですが...え?知らないのですか?キャプテン雅史がいなくなってから帰宅部との関係が最悪になった、という話ですよ。」
「(デイモン:)それが本当なら好都合でス。あの3人含めて帰宅部を排除しましょウ。一切の躊躇もなく、でス。...では、期待してますヨ。」
「風紀委員A」率いる生徒会直属の風紀委員が24人動き出す。それを見た「立ち向かエーヨ部」は...。
「(典子:)動き出したか。どうするの?杏璃委員長。」
「(杏璃:)じっとしても仕方がありません。迎え討つだけです。」
「(源郎:)雅史抜きでいけるか?無理しなくていい、おれが片付けたる。」
「(魂二:)杏璃先輩主導ってことでいいよね?なら頑張るよ、僕。」
「(杏璃:)では、生徒会書記の能力をかわしつつ、本人まで接近しましょう。」
「(典子:)...いいのか?それで...防ぐ手立てのない、ただ迎え討つだけなんてさ。」
「(源郎:)放送委員の相方の大盾では防げんぞ。考えはあんのか?」
「(魂二:)なにの策もなく、先走る先輩じゃないはず。つまり、窓?」
「(杏璃:)はい、強い光で掻き消せばの話です。今はお昼ですし、生徒会室を目指して頑張りましょう。」
「(典子:)...。」
「(健太:)あれ?今回の僕ってお荷物かな...。」
主要メンバーの自己紹介まだだったかな。では早速、紹介しよう。
高1としてこの学園に編入した「兵藤源郎」。昨年8月、帰宅部リーダー「鍋小路マチ」の手引きで校門を占拠した不良の親分だった。たいした能力はなく、己の腕力を信じている、そういう男である。
更生したばかりの「衣笠典子」。昨年11月に起きた事件の主犯だった。今年の3月下旬の修了式後、学園長に召集され、処遇を名目に外に放り込まれ死亡のはずが、幸いなことに「清子」とともに1日中監禁されたことで、死は免れたという。
放送委員長になったばかりの「杉本杏璃」。今年の3月下旬に母を失くしており(死因:第三者が仕掛けた練炭による殺害。やはり「テリー」関連。)、精神状態はあまりよくないらしい。...持ちこたえるのが精一杯である。
タンクの「郷田健太」。「雅史」がいなくなってから3ヶ月にわたり、無理なダイエットを続けた結果、100kgまで減量した。その分、わずかだが身軽になったという。
今年入学したばかりの新入生「遠藤魂二」。「遠藤麗下」の弟とのこと。
第二部突入直後にいきなりの非日常。生徒会書記「デイモン」を止めるために「杏璃」率いる「立ち向かエーヨ部」一同は今、動き出す!!
【Phase-1】
今回の敵将は生徒会書記「シャドウ・デイモン」。能力「暗黒汚染/Darkness Corruption」は影から形成される霧状の魔手で相手の胸または頭を貫き、混乱させる闇魔法。その力で、校舎全体のありとあらゆる場所の物陰に魔手を忍ばせ、生徒に限らず職員まで巻き込んだ動乱の宴が始まった元凶。それを阻止することが今回の目的である。
「雅史」抜きでの戦いになるだろう。放送委員長「杉本杏璃」の指揮能力は「清子」に負けるくらい未知数で、人に指示するのがそう上手ではない。標的を叩く、ただ簡単なことを実行するだけである。
生徒会直属の風紀委員24人が迫ってきてる。正面で戦って、かなう相手じゃない。そこで壁役の出番だ。
「(健太:)立ち向かエーヨ部の盾役は僕が!!杏璃ちゃん、生徒会書記を止めてね。」
「(杏璃:)ここは任せました。」
「健太」の能力「どすこいパヴィース」で、風紀委員の大群をせき止める。残りのメンバー4人はフロア4(5階)を上がり、生徒会室に向かった。そこには能力によって汚染された生徒3人(生徒会、帰宅部問わず)が待ち構えていた。
「(典子:)まるで昨年の私みたいだ。なんとか正気に戻らないの?」
「(杏璃:)抜かりありません。帰宅部幹部の夢田巧さんがあたしにコレを託してくれました。テレパスエミュレーター。」
「テレパスエミュレーター」とは、精神感応系能力者から受信した信号を増幅し、任意の対象に送信できる能力汚染解除アイテムである。
「(魂二:)先輩、コレって帰宅部と教職員だけ渡されるものだよね?噂のおかっぱ風紀委員の清子先輩はどうなんだろう...。」
「(杏璃:)おかっぱ風紀委員のことです、コレを使わなくても解除する手はいくらでもあります。」
「(源郎:)おれの斧で目を覚ましてやらぁ。」
「(典子:)それはないじゃん、親分。今は目前の敵を抑えることが第一だ。それに、帰宅部幹部から受け取ったコレを信じるしかない。」
「(源郎:)...わぁったよ。」
この機器を使って、目前の生徒を正気に戻そうと試みるも...。
「(ハイペリオン:)おっと、機器を持っているのは帰宅部だけじゃないぜ。俺だって帰宅部だし、持ってても不思議じゃない。...俺らのお出ましだぜ。」
生徒会室に向かっているのは「立ち向かエーヨ部」だけに限らず、「ハイペリオン」のほかに、生徒会側女子2人「清子」「ダイアナ」が駆けつけたようだ。おまけに汚染解除機器を1個だけ手に持ってな。
「(魂二:)おお、生徒会2人だ。インキュバス先輩も、ちぃーっす。」
「(ダイアナ:)あの...使うならお先に。」
「(清子:)杏璃さん...手柄が欲しいでしょう?ここはあなた達に譲りますので、ご自由にどうぞ。」
「(杏璃:)...そうさせていただきます。」
「(ハイペリオン:)帰宅部の機器の効果はどれほどなのか見てみるとするか。いわゆる性能テストだぜ。」
「杏璃」は汚染された生徒3人を対象に「テレパスエミュレーター」を使う。その身体に蝕まれている生徒会書記の瘴気を取り払った。
「(生徒:)あれ、どうしたんだろう...。」
「(清子:)正気に戻れたようで何よりですわ。...生徒会書記を止めるための機器を配布してくれた帰宅部幹部に感謝しなきゃなりませんこと。ほら、生徒会室にお入りくださいまし。」
「立ち向かエーヨ部」に生徒会室に突撃するよう促す「清子」。
「(杏璃:)おかっぱ風紀委員が先に行ってください。」
「(清子:)何のマネですの?せっかく与えてあげたチャンスを拒むおつもりで?」
「(杏璃:)いいから先に入ってください。」
「(ハイペリオン:)帰宅部の言うことを信用するのか!?」
「(杏璃:)何の小細工もありませんよ。証拠があるというなら、それを証明してみてください。」
生徒会室に生徒会書記の罠があることを2人はわかっていた。だが、それをわからない新入生は扉を開き、生徒会室に入る。
「(魂二:)お互い揉めあってるところ悪いけど...僕、開けちゃったよ。」
「(清子:)い、いけませんわ新入生さん!!」
時すでに遅し。遮光カーテンが閉まっていて、暗くなっている生徒会室の中から溢れ出す魔手が新入生の胸を貫く。貫かれた「魂二」はワレを忘れるくらい凶暴化になり、飛びかかる。
「(清子:)...新入生さん、狙うなら根暗放送委員長さんにしてくださいまし。生徒会書記の罠に気づかなかった新入生の失態は一切責任を負いませんので。」
「(魂二:)がおぉぉぉぉおおおおお!!!!」
「ハイペリオン」は自分の手にある「テレパスエミュレーター」を使い、「魂二」の正気に戻す。
「(ハイペリオン:)...ったく、おとなげないぜ。罠に気づかねぇかいな、新入生さんよぉ。」
「(魂二:)僕、なんでそんなことを...。」
「(清子:)...杏璃さんの監督不行き届きですかね。さて新入生さん、わたくしら生徒会とともに屋上に向かいましょう。」
「(典子:)...結局、出番奪われてるよ杏璃委員長。」
「(源郎:)しっかりせぇ放送委員!!風紀委員のやつに負けてるんじゃねぇ!!...戦いはこれからじゃんか。」
「(魂二:)...お先に、杏璃先輩。」
「(杏璃:)...また、あたしを差し置いて、出しゃばるとは...おかっぱ風紀委員一味に邪魔されましたね...やられました。そんなことより急がなきゃあたし、皆さんに後れを取るようなものですから。」
「立ち向かエーヨ部」と「生徒会ガールズPlusインキュバス」は合同して敵将のいる屋上へ向かった。序章とほぼ同じ展開で皆の目に映るのは、敵将「シャドウ・デイモン」の姿が。
「(デイモン:)...おや、皆さんお揃いデ。」
「(清子:)生徒会書記ともあろうあなたがたがどうして、このような動乱を?」
「(デイモン:)...帰宅部寄りのあのおかっぱ風紀委員とその一味、おまけに帰宅部ですカ。片付けよとお願いしたにもかかわらず、ワタシのシモベはいったい何をしているでしょうかネ...。」
「(清子:)まずはわたくしの質問にお答えください。」
「(杏璃:)おかっぱ、今の生徒会書記に何を言っても無駄です。風紀委員24人なら健太が止めてくれました。」
「(デイモン:)はたして、どうですかナ?アナタのいう健太やらはすでにワタシの手駒でス。これで形勢逆転でス。」
屋上の出入口から溢れ出す風紀委員24人のほか、汚染された「健太」が「立ち向かエーヨ部」と「生徒会ガールズPlusインキュバス」を包囲する。
「(魂二:)健太先輩...どうしちゃったの!?」
「(健太:)杏璃ちゃん...僕のことを見てくれないし...雅史のことばっかり...!!」
「(典子:)嫉妬...か?そういえば昨年の私もそんな感じだったような...さては...生徒会書記の仕業?」
「(清子:)...おかしいですわね。それならツヨシさんにも影響を及ぼすはずです。」
「(デイモン:)はて、何のことだカ...そんな話ご存じありませン。ワタシの能力を使わなくとも勝手に堕ちタ。ただの嫉妬でしょウ。」
「(清子:)...じゃあ、『テリー』って言ったら、わかりますかね?」
「清子」の決して呼んではいけない名前に「デイモン」の態度は激変する。
「(デイモン:)その名を口にするナ!!学園の部外者に深く関わりすぎた女帰宅部のせいで生徒会3人は死んダ。その代償、高くつきまス!!」
「(清子:)...繰り返し申し上げます。どうしてこのような動乱を?」
「(デイモン:)アナタが知る必要ありませン!!」
「(清子:)...質問の答えになってません!!ご自身の気持ちでもいいですのでお話ください。」
「(杏璃:)[溜息]...我田引水ですか。あたしたち帰宅部を取り囲み、追い詰めようとしたって無駄です生徒会書記。おかっぱの言う通り、あなたはテリーと裏で取引しているのは事実のようで。」
「(デイモン:)その名を口にするナァ!!!!」
「(杏璃:)...哀れな生徒会書記。あたしら帰宅部、ならびに職員達に生徒会の理想の素晴らしさを説くためって唱えながらもテリー。生徒会書記も落ちたものです。」
「(デイモン:)貴様ァ!!!!よくもこのワタシ生徒会を侮辱したナァ!!!風紀委員の皆さん、忌々しき帰宅部共を鎮圧せヨ!!!!!」
「(源郎:)万事休す...ここまでか。」
「(典子:)私たちを差し置いて風紀委員だけ目立って、潮時かな...。」
生徒会直属の風紀委員24人で「生徒会ガールズPlusインキュバス」もろとも「立ち向かエーヨ部」の始末を試みる生徒会書記。もはやここまでか...。
だがその時である!!
「(風紀委員A:)デイモン様、あなたの命令には従えません。やはり信用に足る清子様のほうがマシです。」
「(デイモン:)...ワタシの命令に従えないということですカ!!このワタシを信用しないのカ!!よりによって、おかっぱ風紀委員のほうがいいとハ、なんという甚だしイ!!」
「(杏璃:)おかっぱ風紀委員を甘く見ないでください。このような痛い目に遭います。」
「(風紀委員A:)生徒会側所属生徒に自身が何故生徒会に従うのか再確認させるため、そう申しましたねデイモン様。でも結局、反逆しているじゃあないですか。あなたは狂ってます。まもなく帰宅部幹部4人とリーダーが来ますので。」
屋上の出入口から出てきたのは、帰宅部幹部4人とリーダー。幹部3人亡くしてなお、友情は生死を飛び越えるかのように駆けつけてくれたのだ。
「(デイモン:)帰宅部の幹部共!?クッ、本調子ではないにもかかわらズ!!」
幹部4人がかりで隙を突いて「デイモン」を捕縛、「鍋小路マチ」は学園全体を対象に手元の機器で生徒会書記の状態異常を解除させた。
夏休み前日において学園全体を混乱させ、たくさんの生徒および教職員を陥れた動乱の元凶「シャドウ・デイモン」。そんな中、生徒会長「餅月ヤミ」と学園長「ラザール夢ノ橋」が屋上に現れた。序章とほぼ同じ展開だ。
「(ラザール:)なんて嘆かわしいことだ。タダでさえ若者の心は複雑で、ワダカマりも生キズも多いのに...それを引っ掻きまわすなんてことは...。いかなる理由だろうが、デイモンくんのしたことは先生...許すつもりはないな!!『生徒同士の殺し合いを禁ずる。』校則違反だといったはずだよね?よって、生徒会書記を停学処分とする。今回は典子の時とは違うと思え。」
「デイモン」は素直に負けを認め、風紀委員23人に連行される形でこの場を去る。
「(風紀委員A:)デイモン様を止めてくれたことに感謝します。」
「(魂二:)清子先輩、この風紀委員の名はなんていうの?」
「(清子:)鈴木アーサー。帰宅部寄りのわたくしとは違い、生徒会直属の風紀委員ですわ。」
「(アーサー:)よろしくです。」
「(清子:)...それにしても、今回の動乱で生徒会への信頼が揺らぎましたわね。」
「(ヤミ:)学園長のお怒りはごもっともだ。彼の独断とはいえ...帰宅部の連中に限らず清子風紀委員をはじめとする帰宅部寄りの2人、教職員の皆さんにひどいことをしてしまったこと、今回に限らず学園長の頼みとはいえ帰宅部の生徒を弾圧したこと、生徒会の代表として、この場を借りて深くお詫び申し上げます。...ああ、なんてことだ。今年に入ってから異様な事件が相次いでいて、生徒会3人亡くしてしまうとは、世知辛い世の中だ。」
「(マチ:)...まったく、自業自得ってことだ。俺達帰宅部を弾圧しておきながら...。生徒会役員には頭がキてる輩がいるし、つられて今回のような事件でも起こしてこなきゃいいが...。」
揺らぐ生徒会への信頼、生徒たちに問いかけられるのは何なのか...。
「生徒会」と「帰宅部」の二極的勢力図に変化が...と言いたいところだが事件はこれで終わるものではなかった...。
同日16時 高層タワー
停学処分を言い渡され、追放された「デイモン」は...。
「(デイモン:)...ワタシの居場所を...失うわけにハ!!」
「(徹子:)デイモン、計画失敗しておめおめと戻ってこられたな。」
「(デイモン:)徹子...ワタシハ......!!」
「(徹子:)ちょうどいい。新入りのサンドバッグとして付き合ってもらおう。」
「(デイモン:)新入り...?まさカ!?」
新入りとは、今日から組織の構成員になったばかりの「安広浅香」と「桑田キョウ」のことである。
「(浅香:)わたくし(1991年生)より年下(1994年生)とはいえ、これからもよろしく。」
「(キョウ:)ちぇっ、俺(175cm)より背が高い(182cm)だけのひよっこかよ。トレーニングに付き合え。」
「(デイモン:)待テ!!ワタシハ!!」
「(徹子:)残念ながら、あのお方はお出でにならない。新入り2人の糧となれ。」
「(デイモン:)...ぁぁぁぁぁぁぁあああア!!!!!!」
1ヶ月の間、新入り2人のサンドバッグになり下がる「デイモン」であった。
7月26日(月)
その日の「清子」は、友人「和子」や委員長「仁雄」3人で海外に飛び立った。丸一日かかるくらいの長時間を経てニューヨーク州に到着、「清子」だけ降ろし、残りの2人はもうひとつの目的地「ワルシャワ」に向けて飛び立ったのだが、それらについては別の話である。




