第五章 バレンタイン事変(2)
2月13日(土) 渋谷・百貨店
今日の話はバレンタイン前日ということで、チョコの材料を買いに来た女子たち。「清子」と「和子」、「杏璃」のほか、どう見てもチョコをあげるタイプではない、仕方なくショッピングに付き合う3人「ダイアナ」「ミュゼット」「ハンナ」。
「(清子:)いいこと?できるだけ植物油が入ってないチョコレートをお選びくださいませ。」
「(和子:)そうですね。植物油入りのチョコはチョコじゃありませんね。」
「杏璃」は植物油入りチョコレートに手を伸ばす。
「(清子:)杏璃さん、植物油入りのチョコは食べられたものではありませんの。」
「(杏璃:)あんたに何を言われようと、あたしの勝手です。」
「(清子:)...やれやれですわ。」
「(ミュゼット:)盛り上がってるところ悪いんだけど、そのままあげるというのはどうかな?私、料理下手だし...。」
「(ダイアナ:)そもそもあたし、花束を受け取る側なのに...。」
「(ハンナ:)バレンタインチョコというものを私は作らない。保護者として見守るだけ。」
「(清子:)ま、皆さんのご自由ですの。ではそろそろ会計に進みましょう。」
ホワイトチョコレート(内容量:45g、おそらく128円)に手を伸ばす「杏璃」。
「(清子:)またお体に障るようなものを、油の味しかないくっそマズチョコレートを取ってどうするですの?そんなに命惜しいですの?」
「(ミュゼット:)こら、言い過ぎだって...。」
「(ハンナ:)清子さん、そこまでよ。杏璃さんの自由だから放っておいて。」
「(ミュゼット:)いつもごめんね。なにぶん辛口おかっぱでしてね。それに、ガーナにこだわるねぇ。西アフリカだけに?」
「(杏璃:)...あたしが好んで食べるチョコレートです。ミュゼさんにはわかりませんでしょうけど。」
「(ミュゼット:)私はバカだからチョコレートの価値がよくわからないのよ~。」
「清子」が購入するチョコレートは1枚につき内容量58g100円。財布に優しいコスパ重視といったところか。対して「杏璃」のチョコレートは60g100円。植物油で水増ししてまで内容量優先か?
会計を済ませ、百貨店を後にする女子6人。電車に乗り帰路につき、駅から降り住宅街へ向かう14時34分。彼女たちの前に裏バイトの刺客が現れた。
「(敵将:)ここのアホ共は死んでもらう!!」
1人に限らず、複数人。総数13人の刺客が女子6人を囲む。
「(清子:)わたくしだけでなく、皆さんまで亡き者にするおつもりのようですが?」
「(杏璃:)...話が違う!!そんなはずでは!!」
「(清子:)...やっとボロが出ましたわね。杏璃さん、わたくしとラファエルさんを封じ込めるつもりが裏目に出ましたこと。後始末は杏璃さん、あなたがたが指揮を執るということでよろしくて?」
「(杏璃:)どうしてあたしが指揮を執らなきゃいけないですか?あたしは何も持ってないのに!!」
「(清子:)あなたがたの内なる声が聞こえるはずです。悪魔の囁きとか。」
「(ミュゼット:)おお、面白いことになってるね?指揮を執りナ...やっぱ私は囁くような柄じゃないし、良心持たなきゃね。」
「(ハンナ:)私が指揮を執る。雅史くんの保護者としてあなたたちを守る。」
「(和子:)委員長さんの彼女がやってくれるのですね。応援しちゃいますよ。」
「(ダイアナ:)ラファ兄...怖いよ...。」
「(清子:)...どうやら指揮はハンナさんが執るようです。気を引き締め、ハンナさんに続きましょう!!」
この前に続く異例の早さの非日常。やはり厄災の日が近いといっても過言ではない。5人を守るために「ハンナ」は、その困難を乗り越えんとする一方...。
「(悪魔の囁き=イレギュラー:)目立ちたいんだろう?」
【Phase-2】
女子6人が今置かれている状況は、12人に囲まれていること。カッターナイフ、バールなどなど凶器を武装していること。打破するためにはどうすればいいのか、冷静に「ハンナ」は考えた。
「(ハンナ:)私が12人の注意を引く。その間に杏璃さんは警察に報せて。」
「(清子:)いいこと、ハンナさんの言うことは絶対です。逆らうことは許されませんわ!!」
「(杏璃:)招いたのはあたしのほうなのに...あたしのしてきたことは許されることではないはずないのに...。」
「(ミュゼット:)それはつまり、杏璃を責めてる場合じゃないってことよ。あんたの処遇は13人を片付けてからでよ。」
「(ダイアナ:)た、助けてラファ兄...ァアァァァァァァアアアアア!!!!」
「(ミュゼット:)ちょ!!ここで能力行使かい!!」
「ダイアナ」の能力の調律がうまくいかず、新技もどき「拡散音波光線」を発し、広範囲の敵を吹き飛ばす。もろとも吹き飛ばされた「ハンナ」は地面に身体を叩きつけられる直前になんとか垂直着地する。
「(ハンナ:)ふぅ。」
「(清子:)...あ、驚いている場合じゃありません。杏璃さん、今すぐ110番通報なさい!!」
「(ミュゼット:)通報する気ないなら私がやる。携帯電話(831SH/ミントグリーン)貸☆し☆て。」
意地でも貸借および110番通報を拒む「杏璃」。
「(ミュゼット:)清子よ、どうやら通報を拒んでるらしいよ。」
「(清子:)へっ!!それで強情を張るつもりですの?命惜しければ通報すればいいものを...何か不都合なことでもありまして?」
もたもたしているうちに、敵将が「杏璃」を背後から殺めにかかった。
「(敵将:)死ぃねぇ!!」
「杏璃」を目掛けてバールを振り下ろした...その時である!!
なななんと、帰宅部(えた☆そな部)の幹部「ゾーイ・エンジェル」が「クレイパペット」で「杏璃」を守った。刺された「クレイパペット」は当然のようにただの土塊に戻った。彼女だけじゃなく「中川魄子」のほか、生徒会会計「北村マルティナ」も一緒である。
「(魄子:)なんとか間に合ったね。」
「(ゾーイ:)ここは私たちが引き受けるよ。あなたたちは自宅まで走って!!」
「(ハンナ:)恩に着る。」
メイン6人は自宅まで走るところだが、しつこく追いかけてくる可能性がありうるので「魄子」の能力で12人の刺客を目の届かぬ場所に放り出した。敵将1人だけになった、3対1で学生側が有利に見えた。
「(北村:)相手は大学生...どう料理しようかしら。」
「(魄子:)野放しにすると一大事だから、ラファエル先輩が駆けつけてくるまで固めておかないと。ゾーイ、お願いね。」
「(ゾーイ:)念の為、もっと固めておこっ。」
これ以上暴れ回らぬよう、敵将を「クレイパペット」で拘束した。重ね重ねて何重も。数分後、学園の主要人物3人を連れて巡回してきた「ラファエル」が駆けつけてきた。
「(ラファエル:)凶悪犯の確保ご苦労。褒美として、とびっきりの花束を贈ろうではないか。明日の昼、楽しみにしときなさい。」
「(魄子:)それはどうも。」
確保された敵将の身元が判明した。闇サイトを運営する裏社会のならず者。「闇の商人」とは訳が違い、ほぼ10年前の桶川凶悪事件レベルじゃないほど極悪で、何人もの女を手にかけたらしい大量殺人者(Mass murder)である。
「(ラファエル:)聞きたいことがある。なぜ複数人を率いて無関係の6人を襲った?」
「(敵将:)お前に言う必要ない。」
「(ラファエル:)...そうか、もういい。」
以後いかなる時も「コンブリオ主義」を遵守する「ラファエル」だが「ハンナ」の言葉を思い出す。
「(ハンナ:)『...いい?最近相次いでいる異様な事件は警察が対処する。学校の生徒のあなたたちには荷が重い。』」
「(ラファエル:)何馬鹿なことを...くだらん。...試してみるか。」
「ラファエル」の持つ携帯電話(T-Mobile G1)で110番通報を試みる。到着次第、敵将は殺人未遂で逮捕された。事情聴取は現場の3人だけで行われた。6人を襲うならず者の姿をこの目で見たとのこと。取り調べでもやはり終始一貫黙秘しており、収穫がないままだった。
「(ラファエル:)...信じた結果がこれか。俺は俺のやり方、コンブリオ主義を貫き通す。ハンナ、悪く思うな。」
【清子ンち】
無事、「清子」の自宅前に到着した6人の女子。第二章以来の「清子ンち」だ。
「(清子:)皆さんは先に上がってください。杏璃さん、話がありますの。」
これで2人っきりに、誰も邪魔されず問い詰めるところ。
「(杏璃:)...あたしのせいでみんなをあんな目に...。」
「(清子:)...[溜息]。わたくしとラファエルさんを封じ込めようがうまくいきませんでしたようで。あなたがたのしてきたことは許されるものではありません。ですがそれは普通の話のことで、実際は御自身の心がどうかしてしまい、つい恐ろしく例の商人または例の旧友以上のもっと大きなことに手を出してしまい、周囲の人にも危害が及ぶ結果になり、刑事責任能力どころではなくって。ま、さほど怖かったでしょう...。」
「(杏璃:)...何が言いたいです?」
「(清子:)警察では対応できない異様な事は不問にすると言っているのです。あなたがたの不祥事は水に流しましょう。でなきゃ雅史さんが悲しみますわ。」
「(杏璃:)...理解しかねます。言ってることがわからなくて、頭に入りません。」
「(清子:)...わたくしはただ、あなたがたの助けになりたいだけです。内なる悪魔を胸にしまい込み、良心のままでお願いしますわ。」
「(杏璃:)...あたしにいぢわるをするくせに、よくそんなことが言えますね。」
「(清子:)...どうやら、あなたがたとわたくしは相容れないかもしれませんわ。いつから話が通じないあなたがたになったのかしら?」
「(杏璃:)...。」
恋敵同士「清子」と「杏璃」は相容れることはなく、立ち話するだけで時間の無駄といえるうちに、「ミュゼット」が玄関からチョコっと顔を出す。
「(ミュゼット:)2人とも〜、バレンタインチョコの作り方教えてよ。全然うまくいかないよ!!」
「(清子:)あら、ミュゼットさんには難しいかしら。今見ますので。」
「清子」は台所へ向かっていく。
「(ミュゼット:)杏璃もさあ。作り方わかるでしょ?」
「(杏璃:)...はい、わかりました。」
「(ミュゼット:)なにこの反応よ。雅史にチョコあげるでしょ?さ、辛気くさい顔しないで一緒に作ろう。」
辛気くさい顔でも家に上がる「杏璃」である。2人が見た光景とは?
「(杏璃:)...何ですか、これは。」
「(清子:)どうやらわたくしと杏璃さんじゃないと無理らしいですの。」
「(和子:)実はわたし、ミュゼットさんほどではないですけどお菓子作りが不得意なのです...。」
「(ダイアナ:)ミュゼットのせいでせっかくのチョコレートが台無しに...。」
「(ミュゼット:)それは悪かったよ。」
「(清子:)どうしてこうなりまして?」
「(ハンナ:)こういうお菓子作りがうまくいかない。パルシュキのようなヨーロッパのお菓子でないと難しい。」
「(清子:)...やれやれですわ。わたくしと杏璃さんが教えて差し上げますので。杏璃さん、皆さんの手助けをしてくださいませ。」
「(杏璃:)...とりあえず湯煎から始めます。この失敗を見る限り、ミュゼさんではうまくいかなかったようですね。どうも味がおかしくなってますし。」
「(ミュゼット:)っはは。煮え湯で溶かしたせいでチョコの風味がダメになってしまった、ごめんてへぺろ。...カルウのギャグがうつったかな。」
「(清子:)ミュゼットさんの場合は板チョコを割って、そのまま入れて沸騰した熱湯で溶かしたどころか飛び散った水が入ってしまったので、理想的なチョコではなくなっています。時間かけて溶かすためにまずはチョコレートを細かく刻みます。簡単な事ですわ。」
「(ミュゼット:)地道な作業...めんどくさい。和子はどうよ?」
「(和子:)時間かけて作るのって、明日はバレンタインの日ですよ?手間のかかりそうなチョコ作りはさすがに...。」
「(ハンナ:)...じゃあ、あなたたちの家族に連絡して許可を取っておく?」
「(ミュゼット:)私の場合はドクターが用意してくれた小屋だけどね。」
「(ダイアナ:)明日の夕方まで完成しなきゃ、ラファ兄がどれだけ心配するのか...。」
「(杏璃:)...お願いします、姐さん。」
6人の女子は残りの時間を費やしてまで明日の為のチョコ作りに没頭することになった。「ミュゼット」は2人のアドバイスを受けてチョコ作りに励むも出来の悪いヘナチョコができてしまった。「和子」は「ポーキーモン紅玉/蒼玉」初出のポキブロックに似たチョコブロックで、「清子」はジャムクッキーに倣ったみかんジャムチョコ、「ハンナ」はパルシュキの形をしたチョコ、「杏璃」は幼馴染だけ贈るミルクとホワイトを使った勾玉型チョコ。「ダイアナ」はなななんと、シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテを作ってるところだが工程が多い上で明日の夕方まで仕上げるとおっしゃっているので今日はここまでにして、体を休めることにした。
翌日はいよいよバレンタインデー。今日の襲撃に鑑みると大変な1日になるかもしれんが、それでも彼女が作ったチョコで人生最高の日になるといいなのだが...。




