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☆ジョゼとイヴェットとブリュノ

『姉さん。レアンドルとはどうなってるの?』


「うーん、前より仲良くなったと思うわよ」


『それは見ればわかる。まだ性交できそうにないのか?』


「そういう話にならないのよねぇ」


『毎週デートに行ってるんでしょ?ここでもしょっちゅう一緒にいるじゃない?』


『レアンドルがジョゼを気にしているのは確実だと思うんだが』


「最近、なんか過保護になってるというか……前より距離が近いなって感じることはあるんだけど、そこからもう一歩っていうのがないのよ」


『ここは、姉さんからドーンと迫るしかないんじゃないかしら!』


「やっぱりそう思う?」


『待て待て、前にそれをやって逃げられてしまったではないか。

 もっと用意周到に事を運ばなくてはダメだ』


「用意周到、ねぇ……具体的にどうしたらいいのかしら」


『竜だったら、食べ物を与えて求愛するんだが』


「それは、私も試したのよ。でも、不評だったの……」


『ジョゼ、あれは食べ物とは言えない』


「食べ物よ!クッキーだったの!あれでもマシなのを選んだのよ!」


『食べ物じゃなくても、なにかレアンドルが好きそうなのをあげることはできない?』


「レアンドルが好きなもの……竜と酒……?」


『以前に竜騎士が剣帯を伴侶に貰ったと自慢していたことがあったが、あれはどうだ』


「剣帯はね、正式な婚約者か、妻にならないと贈れないの。

 私はそこまでの関係じゃないから、さすがに無理よ」


『人間は面倒なルールが多すぎるわ!』


『ところで、ジョゼ。おまえは、レアンドルをどう思っているのだ。

 契約のことがなかったとしても、性交してもいい男だと思っているか?』


「うーん……思ってる、と、思う、わ……」


『それなら、やはりあと一押しだな。

 おまえたちは随分と親密になっているのだから、きっとなにかきっかけがあれば、性交できるのではないか』


「そう思う?でも、きっかけって言っても、どうしたら」


『姉さん!ここは、同じ人間の雌に相談したらいいと思うわ!

 友達がたくさんいるんでしょ?

 人間の雄の口説き方は、人間の雌が一番よく知っているはずよ!』


『それもそうだな。長く人間の側で暮らしてきたとはいえ、私たちは竜だ。

 人間とは根本的に考え方が違う。

 人間の友達に相談してみなさい。きっといい助言が得られるだろう』


『姉さんも、早くレアンドルと番になりなさいな。

 番がいるって、とっても幸せなことなのよ』


『そうだな。ジョゼとレアンドルなら、いい番になれる。

 私たちのようにな』


『ブリュノ♡』


『こらこら、ジョゼが見ているじゃないか』


「じゃ、また後でね!」


 イチャイチャし始めた番の竜に、ジョゼは背を向けて足早に立ち去った。



☆ ジョゼとメイドの友人たち

「それで、ジョゼの相談ってなに?」


「えっとね、レアンドルと……恋人?みたいになるのは、どうすればいいのかなって」


「なんで疑問形なのよ」


「ていうか、まだ恋人じゃなかったの?」


「ええ……まだ、恋人って感じにはなってない、と思う」


「「「「ええぇぇぇ~~!!」」」」


「嘘でしょ!?あれだけいくつも贈り物もらっておいて!」


「いつもエスコートしてくれてるじゃない!」


「レアンドル様があんな顔で笑うの、他で見たことないわよ!」


「毎週デートでなにしてるのよ!ただ城下町を歩き回ってるだけなの!?」


「教えてもらったデートスポットに行って、ご飯食べて、なにか買い物して……それくらいかしら?」


「それでいい雰囲気にならないの?」


「いい雰囲気っていうのが……よくわからないのよ」


(レアンドル様は初心ではないはずなのに)


(火遊びも含め過去に関係した女は、私が把握してるだけで二桁にのぼるわ)


(見た目通りの肉食系だって聞いてたけど)


(ということは、それだけジョゼを大事にしてるってことよね)


「デートは、レアンドル様から誘ってくれるのよね?」


「そう、かな?最近は、毎週行くのが当然みたいになってるから、デートに行くかどうかというより、どこに行きたいかを訊かれるの」


「贈り物は、いつもレアンドル様が選んでくれるの?」


「私が選ぶ時もあるわ。私もレアンドルもいまいちセンスに自信がないから、店員さんにお願いすることもあるけど」


「それは無難なところね。変なのを買うよりよほどマシだわ。

 ジョゼからは、なにか贈ったの?」


「買い物に行っても、私がなにか買ってあげるっていうのは絶対に断られるの。

 だから、この前クッキーをつくったんだけど……」


「「「「あぁ~……」」」」


(あれは酷かったものね)


(ていうか、あれってクッキーだったんだ)


(あの材料からどうしてあんなものが出来上がったのか、不思議でしかたがないわ)


(あれは料理というより錬金術だったわ)


「それじゃ、ハンカチに刺繍するとかは?」


「刺繍もあんまり得意じゃないの……またがっかりされるかも」


「得意ではなくても、できることはできるのよね?」


「うん……時間かかるけど」


「なら!次はそれで攻めなさい!」


「そうよ!刺繍は食べ物じゃないんだし、少しくらい下手でもお腹壊したりしないわ!」


「家族でもない男に刺繍したハンカチを渡すっていうのは、『ハンカチと一緒に私も貰ってください』っていうのとほぼ同じ意味なのよ!

 ここまですればレアンドル様にジョゼの気持ちが伝わるはずよ!」


「伝わるかなぁ」


「伝わるわよ!伝わるに決まってるわ!」


「ジョゼは可愛いんだから、自信もちなさいよ!」


「可愛い?そんなこと言われたことないけど」


「あんたの家族と婚約者に見る目がなかっただけよ。

 ジョゼは可愛いし、美人だし、とってもいいコよ。

 レアンドル様も同じことを思ってるはずだわ」


「そうでないと、毎週デートに連れて行ってなんかくれないわよ。

 好きでもない女に、そんなに時間を割いてくれるわけないじゃない」


「知ってると思うけど、レアンドル様ってすごくモテるのよ?

 なのに、ジョゼが来てから浮いた話をぱったり聞かなくなったわ。

 つ・ま・り、今のレアンドル様はジョゼ一筋なのよ!」


「そう……だといいんだけど……」


「女は度胸って言うでしょ!当たって砕けてみなさいよ!」


「そうよ!玉砕したら、骨は拾ってあげるから」


「ダメだったら、次の合コンのメンバーにジョゼも入れてあげるわ」


「その前に、刺繍の図案を考えないと!

 イニシャルは外せないとして、あとはやっぱり竜かしら」


「剣とかもいいんじゃない?」


「刺繍糸の色は水色か藍色で決まりよね」


「刺繍道具は持ってる?ないなら私のを貸してあげるわ」


「ありがとう、皆。私頑張ってみるね。

 あと、図案はできるだけ簡単なのでお願いします……」




☆ ローランと竜騎士団長

「レアンドルとジョゼが最近どんな感じか知っているか?」


「まだなんともなってませんよ」


「まだなのか……全く、レアンドルのやつ、なにやってんだ」


「あいつはあいつなりに頑張ってはいるんですよ。

 ジョゼちゃんがいつもつけてるネックレスも、あいつが贈ったものらしいですから」


「あの赤い石のついたのだよな。思いっきり、レアンドルの色じゃないか。

 あんなものを身につけさせておいて、なにをグダグダしているんだ」


「あのネックレス以外にも、服やら靴やら、いろいろ贈ってるみたいです。

 ジョゼちゃんも素直に受け取って、次のデートで着てくるらしいですよ」


「そこまでの関係になっていて、まだなんともなっていないのか?」


「そこで足踏み状態になってますね」


「レアンドルは手が早い男だと思っていたんだが」


「いつもはそうですね。速攻で口説いて、ベッドに引きずりこんで、『私と仕事(もしくは竜)とどっちが大事なの』って詰られて、後者を選んで捨てられる、というところまでが一セットです」


「あいつは、優先的に遠征に行かせてたからな……」


「本人も喜んで遠征に行ってたんで、そこは団長が気にすることじゃないですよ。

 とにかくですね、レアンドルは普通なら、二回目のデートでジョゼちゃんが赤いネックレスつけてるのを確認したら、その日のうちにベッドに誘うくらいのことをするはずなんです。

 普通だったら、ですけど」


「それは、つまり……」


「それだけ、ジョゼちゃんに本気なんでしょうね。

 今までの女なら、フられてもまぁいっか、くらいで済まされる程度の気持ちしかなかったから、簡単に誘えたんです。

 でも、ジョゼちゃんを同じように誘ってフられたら、大ダメージを喰らってしまう。

 だから、慎重に慎重を重ねていて、先に進めないでいるのだと俺は思います」


「気持ちはわかるが……もういい加減に、先に進んでもいい頃だと思わないか」


「思いますよ!俺だって、じれったいって思ってますよ!

 あいつがさりげなく他の男を牽制したり排除したりするのを、一番よく見てるの俺なんですからね!

 なんだったら、俺のことすらジョゼちゃんから遠ざけようとするんですから!」


「ジョゼはどうだと思う?レアンドルのことを異性として意識してると思うか?」


「うーん、多分そうじゃないかなって思います。

 ジョゼちゃんって、そういうのわかりにくいんですよねぇ」


「俺としては、あの二人の相性は悪くないと思うんだが」


「俺もそう思いますよ。

 なんだかんだいって仲良くしてますし、恋人とか夫婦になっても今みたいな感じで上手くやれるんじゃないかなって思います」


「そうだよな。あとは……最後の一歩を、いつ踏み出すかってとこか」


「そこはもう、なんていうか、レアンドル次第です」


「これが竜騎士団に関わる重要事項じゃなければ、ただ遠くから見守ってられるんだけどな。そうもいかないんだよなぁ」


「レアンドルが竜と契約できたら、それだけで戦力が上がりますからね」


「というわけで、俺たちでレアンドルの背中を押してやろう。なにかいい案はないか?」


「そうですね……あ、ジョゼちゃんに竜との飛行訓練をさせてはどうでしょう?

 それの補助をレアンドルに担当させるんです」


「ジョゼを飛ばせるのか?」


「はい。ジョゼちゃんは、薬草とかに詳しいそうですから、直接薬草採取に行ってもらった方が効率がいいと思うんです。

 それに、ジョゼちゃんは剣は使えなくても、魔法はかなりいけますよね?

 いざとなったら、戦力になりますよ」


「ジョゼを前線に出すというのか!?」


「最悪の場合、ですよ。俺たちはそれに備えるのが仕事じゃないですか。

 この前だって、もう少しで戦争になってたかもしれないんですよ?

 そうなってたら、竜騎士団はもうとっくに全滅してたかもしれません。

 俺たちが誰もいなくなったら、誰がジョゼちゃんを守るんです」


「……そうだな。おまえが正しい。

 よし、ジョゼに飛行訓練をするように命じよう。

 で、問題なく飛べるようになったら、二人でどこかに薬草採取に行かせる、というのでどうだろうか」


「それいいですね!一石二鳥じゃないですか!

 ここまでお膳立てされてなにもできなかったら、レアンドルのことをヘタレと呼んでやりましょう」


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