晴天。
明日はいよいよ帝都に行く日。
ギディオン様は、一ヶ月の帝都研修という名目で騎士団を離れることになっていた。
お仕事は副官のジーニアスさんに任せて行くらしい。
この国の騎士団の指揮系統ってどうなってるんだろう。
あんまり深く聞いたことなかったけど、そもそもギディオン様もお姉様も帝国帝国っていつも言ってるし、お姉様はそもそも帝国聖女庁の筆頭聖女な訳だしね?
まあでも、マグナカルロは小国でお隣は帝国領。この国だって王国になる前は帝国の属領の一つだったってはなしだ。
芸術の街ガレリア。
商業の街ガウディ。
王国って言っても街らしい街はこの二つだけ。
この国所属の貴族だって、その所領はマグナカルロ国内に止まらず北のガリアにも広がっていたりする。
あたしの実家のリンデンバーク公爵家がそう。
公爵領はずっと北まで、ガリアの北ノルマンとの境まで広がっている。
大規模な穀倉地域と沿岸地域の海の幸まで手に入るそんな大貴族。
帝国領内で比べてもかなりの力のある大貴族であるのは間違いなかった。
だから、アドルフお父様は実はこの国マグナカルロの公爵位だけでなく、帝国の公爵位ももっている。
帝都にだってお屋敷を当然のように持っているらしいんだけど、今回は事情も事情だし話して反対されても興ざめだから、お父様には特にお話ししていない。
まあ、お姉さまのお屋敷でお世話になるわけだし?
向こうについてからお父様には近況をお知らせするかなぁ。くらいしか考えてなかった。
ってことで、お話し脱線しちゃったけど。
この国マグナカルロは文化の国としては有名だけど、独自の騎士団を持てるほど軍事力? みたいのはないのかな?
どうにもギディオン様の騎士団、マグナカルロ王国の指揮下にあるように見えないんだよね。
まあ、もともとギディオンさまのお家であるベルクマール侯爵家だって、帝国の重鎮、ベルクマール大公家の分家だし。
彼が帝国騎士団の所属であったって驚く事ではないんだけど。
うん、昔の日本でいうと。
日本って国が帝国で、大阪がベルクマール大公領、名古屋あたりがマグナカルロみたいなイメージ?
マグナカルロって国は、帝国の中にある国。そんなイメージで考えればいいのかな?
結局ギディオン様の説得はミーシャがかってでてくれた。
「空を飛んで移動、ですか」
「そうよ、ギディオン。多分それが一番手っ取り早くて危険も少ないと思うのよ」
「ミーシャ様のおっしゃる通りですよ、ギディオンどの」
「そう、ですね。確かにそうかもしれません」
「そそ。幸いね、この子ノワールは収納魔法も得意だから、少々の荷物だったら運べるわよ。本当は人間だって収納可能だけど、流石に生身の人間だと怖がっちゃうからお勧めしないけど」
「なるほど。まあ今回はニーアの屋敷に滞在することになる。ベルクマール家の使用人が大勢いるわけだから、人は残していけばいいか」
ギディオンさま、そうひとりごちる。
ギディオン様を挟んで二人の猫がテーブルの上から話しかけている光景はなんだかシュール。
まあ、でも。
ノワールも普通に受け入れられてよかった。
ノワールの正体が大精霊マクギリウスだなんて、あたしの口からはとても言えなかった。
一応、ハルカのミーシャが「あたしの知り合いだから」っていうのをとりあえず受け入れた感じのギディオン様。
訝しんではいたけど、っていうか、ギディオン様のことだから薄々感づいているのかもしれないけど、まあ、しょうがないなぁ。
◇◇◇
真っ青に晴れ渡った空。
ギディオン様はドラゴンに姿を変え、あたしをその背中にいざなった。
あたしの両側にはちょこんと座るミーシャとノワール。
白と黒の子猫にしか見えないけど、彼らはあたしの周囲に風の結界をはる。
「では、いくよ」
「ええ、ギディオン様、お願いします」
ブワッと空に浮かぶドラゴン。
宝石のような輝きを発して、ギディオン様は空高く舞い上がった。




