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日本人の江藤遥香。

「にゃぁあ?」

 あたしの心を察してくれたのか、ミーシャがにゅっと起き上がって小首を傾げるような感じにあたしの顔を覗き込む。

 そのままにゅにゅっと胸に前足かけながからだを伸ばして、右前足を上に伸ばした。

 ほおに、にくきゅうのやわらかい感触。

 爪を出すなんてことはしない。にくきゅうだけ、そっとあたしにほおにやさしくぽんと触れる。

「にゃぁぁ」

 ああ。

 心配してくれているの? ミーシャ。

 あたしのことを気遣ってくれてるの?


「ミーシャ、ありがとうね……」


「ううん、だって、あなた、ほっとけないわ」


 え?

 うそ?

 今の声、ミーシャの声?


 びっくりして涙もとまっちゃった。

 ギディオン様も驚いてる?


「ミーシャ、いまのミーシャ? ミーシャ、喋れるの??」


 こちらを覗き込むかわいい子猫の顔。

 その口が、ふわっと開く。


「喋れる、っていうか、あなたのマナをいっぱい浴びてるうちに、なんだか起きた? っていうか、そんな感じ?」


「起きた?」


「そう。目が覚めた? っていうの? 気がついたらあなたのそばにいた? そんな感じかなぁ」


「寝てた、の?」


「うん。きっとそう。寝てたのよ、あたし」


 まさか、まさか、ミーシャって……。


「ミーシャ、転生者、なの?」


 この喋り方。寝てたっていうか、意識が戻ったときのあたしと似てる……。


「転生者、っていえばそうかな。あたし、江藤遥香。ハルカって呼んで。セリナ」


 え?

 え?

 えとう、はるか?


 ミーシャ、日本人なの?


「ミーシャったら、日本人、なの!?」


「そうよセリナ。あなたの心がいっぱいいっぱい伝わってきたからわかるわ。あなたも一緒だものね」


「ええ!?」


「安心して、心を読んだ、とかじゃないから。多分一番強いあなたの記憶の一部が、あなたのマナと一緒にあたしの心に流れ込んできたの。そのおかげであたし、目覚めることができたんだわ」


 マナが流れ込んだ? 記憶と一緒に?


「ああ、マナのミルクを飲んで同調したときか……」


 え? ギディオンさま!?


「ふふ。あのミルク、おいしかったわ。あれにはあなたのマナがこもっていたのよね。それが呼水みたいになったのかしら、ずずずってあなたのたましいのマナがあたしの心に流れ込んできたのよ」


 え? そんなこと、あるの?


「よっぽど深く同調したんだね。今も、君たちがマナの糸で繋がっているのが見えるよ」


「そっか、あなたの瞳にはドラゴンズアイがあるのね……」


「え? どうして、ミーシャがドラゴンズアイのこと知ってるの!?」


「あはは。あたし、転生したのこれが初めてじゃないから。前回はもう何千年も前? 世界には、マ・ギアがいっぱいあったし、あたしも持ってたのよ。マギア・キャッツアイってマ・ギア」


「え?」


「ごめんね。実は夜な夜なおそとに出てこの世界のことを調べてたの。だから、大体のことはわかるわ。今がいつなのか、ここが、どこなのか」


「貴女は……、ミーシャに転生する前は、この世界の人間だったのですか? それも、かなりの高位魔法を習得されていらっしゃるとおみうけしました……」


「ギディオン、さま!?」


「そうね。あなたたちに内緒にしててもしょうがないわよね。あたし、昔は『セリーヌ・マギレイス・ラギレス』って名前の人間だったこともあるわ。魔法は、そうね。けっこう使えるのよ」


「セリーヌ!?」


「そうよ、あたしもびっくりしたけど名前も一緒なの。ほかにもいろいろ似てるし、もう他人と思えないほどよ」


 あああああ。


 ほんとう、こんなことって、ある?


「だから、セリナ。あたしのことはハルカでいいわ。まあ、ミーシャもあたしの名前だからそれでもいいけど、二人っきりの時はハルカって呼んでくれたらうれしいな。あたしのアイデンティティはやっぱり日本人だったころの遥香だから」


 そう言って、ミーシャのハルカは猫の仕草であたしの胸に頭を擦り付けた。

 その姿は本当に猫にしかみえなくて、かわいくて。

 でも、ハルカ……。

 なんだかほんと他人に思えない。不思議だ……。




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