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古のメニュー。

「お、お母様に……」


「お母様?」


「セリーヌの母君はセラフィーア様だからね」


「ああ、セラ姫の娘さんか。なら納得だ。セラ姫もうちの料理を好いてくれててね。ベルクマールにきた時は必ず来店してくれたものだよ。そっか、君はセラ姫の娘さんかぁ。そうだよねよく似ている。なんで思いつかなかったんだろう……」


「お母様をご存知なのですか!!?」


「そりゃぁ。俺らくらいの歳でセラ姫を知らない人間はこの国にはいないさ。本来であればセラ姫はこの国に公主として戻ってくるはずだったんだから。皆それを望んでいたんだ。だけど、ご本人が辞退されてね」


「セラ様は、自分は公主となる器じゃないって頑なに固辞されたんだよ。その身に秘めたマナはかなり膨大であったのにも関わらず、うまくゲートが開けないって悩んでいたからな」


 ああ。

 お母様……。


「そんな時に君のお父様と恋に落ちてね。あっという間に結婚が決まって、私たちはまだ幼かったけれど、とても残念に思っていたんだよ」


「そうそう。このベルクマールの宝だったのに、あんな男に掻っ攫われたって。うちの親父もいっつも酒を飲んだ時は管巻いてたもんだ」


 かははと笑うジェフさん。


 そっか。お母様はここでも慕われていたんだな。ベルクマール侯爵家の人たちがみんなあんなにも親切にしてくれたのも、そういう理由もあったのか。

 そう、感慨に耽って。


 ああでも、流石に前世で知ってた料理だって言うわけにいかなかったし、咄嗟にお母様って言っちゃったけどほんとはあたしにはお母様にお料理を教わった記憶はない。

 お母様、ごめんね。

 嘘を吐いちゃったことをお母様に心の中で謝って。


 それにしても?


 この方のご先祖様。

 タカスギ様って言ったっけ。

 高杉様?

 だとしたらもしかしたら……。


「あの、つかぬことをお伺いしますが、タカスギ様のご先祖様が考案したお料理って、オムライスの他にもあるんですか?」


 これは、すっごく気になる。

 もしかして他にも日本のお料理が食べられるの? って。


「ああ、そりゃあもちろん。って言いたいところなんだけど、長い年月の間に失ってしまったレシピも多くてね。そうだ」


 ジェフさん、厨房の奥に戻って冊子のようなものを持ってきた。

 魔法でコーティングしてあるけど、とても古い年代の物っぽい。

 食べ終わって食器が下げられたテーブルの上に置き、あたしたちに見えるように開いて見せる。


「これが当時のメニューだよ。もうこの文字を読める人間もいなくてね。なんて名前だったのかもわからないんだ」


 え?


 え? だって、これ。


 見せてくれたのは、色とりどりのお料理の絵が載ったメニュー。

 そこに書かれていたのは……。


 だってこれ、日本語じゃない。なんで!!?





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