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偽りの妻。

「アドルフ義父上が回復された、と?」


パトリックの寝室の、そのベッドの上。しなだれかかるようにその体に腕を巻きつけるマリアンネ。


「ええ。贈られたお薬のおかげだと感謝しておりましたわ。貴方とお姉様に感謝を伝えてほしいと頼まれましたもの。お姉様なんていらっしゃらないのにね」


「そんな……」


「いいじゃありませんか。あのお薬、多分偽物なのでしょう? なかなか治らないのは心配しておりましたが、自然回復したのなら問題ないですし。パトリック様はお父様にお姉様の家出を知られたくなくてご病気が治らなければいいと思っていらっしゃったのかもですけど」


「ああ……。そうだ、な……」


「ご一緒したお食事会のあとお父様が急に寝込んでしまわれたから、あの時のお食事に何かあったのではないかって、わたくし少し疑っていましたのよ? 眠くなるようなお薬でも盛ったんじゃないかって。ねえ? パトリック様?」


「そ、そんなこと……」


「ふふ。はっきりおっしゃいませんのね。まあいいですわ。ご安心くださいな、パトリック様。例の晩餐会にはお父様は欠席なさるそうです。回復したとはいえ病み上がり、まだすこし本調子ではないご様子ですしね」


「そうか」


「ねえ、晩餐会が終わったら、わたくしと結婚してくださるのでしょう?」


「お姉様が居なくなってもうすぐひと月。これだけ探しても見つからなかったのですもの。もう諦めてもいい頃合いですわ。もしかしたらもうお亡くなりになっているやもしれませんし。お姉様の残した離婚届を出すもよし、死別したことにしてもよし、ええ、お父様だってわかってくださるわ。わがままに家出をしたお姉様なんて許されるわけないもの」


しばらく腕を組み考え込んでいたパトリックだったが、何か決意を固めたかのように顔をあげ。


「マリアンネ。晩餐会に一緒に出て貰えないか」


と、マリアンネを見つめそう言った。


「ええ、嬉しいわ」


パトリックに抱きつき喜ぶマリアンネ。

しかし。

パトリックの瞳は狂気に染まっていた。


「ああ、そうだ。君の髪を白銀に変え、化粧でセリーヌに似せよう。姉妹なのだからなんとか誤魔化せるかもしれない、そうだ、その手があったじゃないか……」


「パトリック、さま?」


「なあに、妻同伴のパーティーであっても急病などで代理を立てることはよくあること、嘘をつくわけじゃない、バレたらその時に言えば良い、『妻が急病で代理に妹のマリアンネに同伴を頼みました』と」


「そんな、わたくしとお姉様とでは顔立ちが違いますわ。わたくしはお父様似ですし、お姉様は亡くなったお姉様のお母様に似ていらっしゃるし。最初から代理と仰ってはいただけませんの?」


「なに、ベルクマール大公はセリーヌの顔なんて知らないかもしれないじゃないか。黙っていて気が付かれなければそれでいい。そうだ。何事も無く晩餐会が終わってしまえばそれで」


「そんな、無理です。ええ、そもそもどうやって髪を白銀にするというのですか!?」


「それは問題ない。君に身代わりを頼むこともあるかもしれないと考え特注で作らせたかつらがある」


「だって、そんなの……」


「えーい、うるさい! 君は黙って私に付き従っていればいい。この場だけ、この晩餐会の場だけ乗り切ればそれでいいんだ!」


(ああ、私は諦めない。セリーヌと離婚する!? そんなこと、絶対にありえない! そう、しばらくこの娘をセリーヌの身代わりにしておけばいい。黙って俯いていればそうそうバレやしない。その間になんとしてもセリーヌを見つけるのだ。絶対に……)

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