表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/84

子供の頃の思い出。

 ギディオン様が声をかけるとわらわらと現れた侍女さんたち。

「姉さんの服、彼女に何か貸してあげて。結婚する前のがまだ残ってるよね?」

「ええ、ちなみにどのような場所に行かれるのでしょう?」

「南の商業区だけど、その最奥の回廊のある場所だから。ちょっと品のあるそれでいてカジュアルな、そんな装いに仕上げて欲しい」

「了解いたしましたぼっちゃま。それではこちらへ」

 侍女頭さん? 一番古株っぽいそんな彼女に先導され、あたしは数名の侍女さんに囲まれたまま屋敷の奥まで進んで行った。


 っていうか頭が完全にパニックになっていて、放心状態になっているところを彼女らのいうがまま歩いてきたっていうのが正解。


「さあお嬢様こちらに。あら、お肌が少し荒れていますね。お着替え前に軽く入浴をしましょうか」


 はわわ。

 あーん、でも、もう、しょうがない。

 あたしは腹を括り。


「ありがとうございます。それではよろしくお願いします」


 と答え、後のことは全て彼女らのなすがまま、任せることにした。



 っていうか……。

 ギディオン様って、ギィくんだったの? アデライア姉様にはよく遊んでもらった覚えがある。まだお母様が生きていらっしゃった頃。あたしがまだ幼い頃だから、姉様の弟さんにギィくんって子がいたなぁくらいな記憶しかない。


 一度だけ。

 あれは薔薇が咲き誇る生垣で。

 あたしがその薔薇の木の枝に髪が絡まって泣いている時。

 優しく解くのを手伝ってくれた男の子がいたっけ。


 涙が溢れて前もよく見えなくて、助けてくれた子のお顔もよく見えなかったけど。

 明るい金色の巻毛のかわいらしい男の子。あたしよりちょっとだけ年上くらい。

 そんな印象を覚えている。


 あれが多分ギィくん。


 お礼を言いたかったけど言いそびれて、それでまた泣いたっけ。

 お母様の容態が悪くなって、このお屋敷にもくる機会がなくなって。


 そうか。それでずっと忘れちゃってた。

 彼にお礼を言わなくっちゃ。

 と思ったところではっと気がついた。


(あたし、今セリーヌじゃないもの。お礼なんかおかしいよね……)


 長年の心残りにやっとけりがつけられる。一瞬そう思ったけれどそれを叶えることはできないって思い返す。


「お湯加減、いかがですか?」


 ちゃぷんと湯船に浸かりながら、侍女さん(マリサさんっていうらしい)のなすがまま、頭を洗われているあたし。


「ええ。マリサさん。ありがとうございます」


「お嬢様、洗われ慣れていらっしゃいますね。こちらもとても助かりますわ」


「そう?」


「普段からお世話をされ慣れていらっしゃるお方とそうでないお方というものは、私達にはすぐにわかるものなのですよ」


 そうか。ちょっとしまったかな。

 でもこうやって完全に身体を任せてしまうほうが自分も気持ちよくなれるからしょうがないなぁと、そんなことを思いつつ。


「おぐしは染めていらっしゃるのですね。根本の白銀の髪が見えておりますわよセリーヌ様?」


 え?


「貴女様が姿を消したと、今王都の貴族街の侍従侍女の間では大騒ぎになっておりますの。アルシェード公爵邸には私の従兄弟が勤めておりますのよ。公爵様がもう鬼の形相で貴女様をお探しになっていらっしゃるのだとか」


「あたし、そんなんじゃ……」


「私は幼い頃の貴女様をこうしてお風呂にお入れしたこともあるんですよ。それくらいわかりますわ」


 ああ。詰んだ。

 どうしようどうしようどうしよう。

 逃げ出さなきゃ。

 でも、どうやって……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました!
『お飾り王妃』のお役目は、もうこれで終わりにします。

電子書籍出版しました!
書報です!!
こちらで連載していた四万字程度の中編(番外追加して現在は五万字くらいになってますが)をプロットに、大幅改稿加筆して10万字ほどの本になりました。 電子書籍レーベルの「ミーティアノベルス」様より、10月9日各種サイトからの配信開始となります。 タイトルは 『お飾り』なんてまっぴらごめんです!! です♪ よろしくお願いします。 新作短編投稿しました! お手にとっていただたら幸いです。 よろしくお願いします。 友坂悠
― 新着の感想 ―
[一言] 詰んでないやろ 母方なら全部暴露したら味方な気がするけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ