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8.仮想の夫婦

 カリーナお姉ちゃんの言ってる意味が分からない。


 三歳児の特権を使いおままごとの設定は、優しい両親としっかり者の姉にやんちゃな弟と言うありがちなものになった。

 それでもカリーナは楽しそうで私も楽しんでやっていると、お兄ちゃんとマイケルがやって来て加わることになった。


「娘さんを僕に下さい」

「娘は私達の物ではないのであげられません」

「カリーナ、お前最高だよ」

「お嬢様意味が違いますよ。ご両親に大切に育てられた娘と結婚させて下さい。自分がこれからは守りますと言う意味です」


 お兄ちゃんは私の婚約者役となり両親の挨拶の場面でありがちな台詞を言うと、カリーナは真顔でナイスボケをしフレディはすかさずそれを分かりやすくフォロー。

 マイケルなんてお腹を抱え大笑い。

 私も可愛らしくて笑いそうになるけれど悪いので堪えながらカリーナを見ると、案の定ほほをぷっくり膨らませマイケルを睨む。


「お兄様、酷いですわ」

「ごめんごめん。まさかそんな可愛らしい反応するとは思わなかったからね? フレディもそう思うだろう?」

「はい。ボクは心優しいお嬢様らしい反応だと思います」

「え、……」


 絶対にそれを言われたら女性はイチコロであろう口説き文句を息を吐くかのようにマイケルは言い。素で援護射撃するフレディのコンボとくれば、カリーナの怒りはあっと言う間に収まり顔を真っ赤に染まらせ恥ずかしそうに下を向いてしまう。

 表情がコロコロ変わるカリーナはどれも愛らしくて見とれていたら、ある異変に気づき微笑ましくなる。


 ひょっとしなくてもうカリーナはフレディに小さな恋心を抱いていて、それをマイケルはもう気付いているのかも知れない。


「と言う訳なので娘さんを僕に下さい。僕が娘さんを守り大切にします」

「え、はい。よろしくおねがいします」

「アカツキ僕達はハネムーンに行こうか? どこがいい?」

「ハネムーン?」


 いきなりおままごとを再開されたと思えば、話はぶっ飛び過ぎる展開へ。目が点になり首をかしげ、お兄ちゃんの言葉を復唱してしまう。

 なのにお兄ちゃんの目はマジだから、きっと二人で遊びたいに違いない。


 それにしたって両親の挨拶の次がハネムーンって、普通は結婚式が先じゃないでしょうか?

 どうせなら結婚式からやりたいです。


「タスク、お前な……。だったら夕食の材料を買って来てくないかい? 今夜のメニューはカレーにするから食材を買ってきてよ」

「え、もうそんな時間? うん、わかった」

「ならハネムーンはお買い物だね? ねぇマイケルお兄ちゃんお菓子とジュースも買ってきていい?」

「アカツキちゃんはちゃっかりしてるな。もちろんいいよたくさん買ってきて」


 マイケルは呆れつつもそれをうまく利用し単純なお兄ちゃんをうまく誘導。私もその提案に乗り、買い物へ行くことになった。






「アカツキは何カレーが食べたい?」

「チーズチキンカレー」

「ならそれにしよう」


 島最大のスーパーマーケットに訪れた。私はお決まりのショッピングカートに乗せられ、お兄ちゃんの問いに好きなカレーをリクエストすればすんなりと決まる。


 この世界は基本地球と同じ名前だけれど、いろんな国の呼び名が混じりあっていた。

 ファンタジーワールドなので違った食材もある。


「買い物探検隊出発。隊長、まずは何を買えば良いでしようか?」

「野菜売り場だから、ニンジン、オニオン、じゃが芋、パプリカ。後モロコシ(トウモロコシ)」

「大正解。アカツキは天才だな」


 ママがいつもやってくれる遊びをお兄ちゃんもやってくれるから、私はいつもより張り切り回答。ただ大袈裟すぎる程誉められ恥ずかしい思いをする。

 しかし三歳児だから問題はなく、周囲からは微笑まれるだけ。


 我が家の教育方針は、楽しく遊んで学ぼう。赤ちゃん時から買い物に行けば、なんでも名前を教えてくれた。

 今現在も数えきれないほどの絵本を読んでくれている。

 愛情も惜しみなく注いでくれるから、お兄ちゃんのような秀才が育つんだと思う。


「お兄ちゃん、カレー粉は買うの?」

「それはあるらしいよ。アカツキとカリーナちゃん用の甘口に僕達の激辛を作るんだって。僕は普通で良いのに」


 マイケルは貴族の息子なのに料理が得意。

 辛い物マニア設定は、この時既に確定していたことを知る。

 そしてため息混じりで嫌がるお兄ちゃんは、この時から悩まされていたようだ。

 今のお兄ちゃんは見た目通りの甘党で、ゲームのクールなタスクも辛い物が苦手だった。

 私の前世では意外にいける口ではあったけれど、子供の体には無理なようで甘口しか受け付けない。

 さすがのマイケルも幼児に激辛を与えるほど、鬼ではなかったことにホッとする。


「甘口と激辛を混ぜたらいいよ」

「あ、それもそうだね? マイケルにバレないようにしないとね」


 取り敢えず簡単な解決策を伝授したものの、マイケルを出し抜くにはあまりにも幼稚な考えだったりする。

 でもお兄ちゃんは名案を思い付いた表情を浮かべているため、この場合は言わぬが花だろう。

 それにもし何かあったとしても私がなんとかして回避する。


「ならお菓子?」

「うん。お肉は最後だからね?」

「やった。私はポテトチップとビスケット」

「どうせなら全種類買っていこう」

「お菓子パーティーだね 」


 良い子に買い物に付き合えたらお菓子は一つと言うママとは違いマイケルからもいっぱい良いと言われているから、転生して初めてのお菓子大人買い宣言に目を輝かせる私。

 お兄ちゃんもどことなく嬉しそうに見えるのは、やっぱりお菓子が大好きだからなんだろうね。

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