4.秘めたる決意
「アカツキちゃん、これは君が悪いんだからね? なんて言っても、生後半年の子が分かるわけないか」
赤ちゃんの体と言うものは感情コントロールが不可能で一度泣きだせはすぐに泣き止むことができず。
マイケルは途方にくれながらも、私を懸命にあやす。
マイケルの言い分は正しいです。
最初から私が全部悪いって分かってる。
もうこうなったら恋人になるのは諦めて、タスクをお兄ちゃんって思うしかない。
大好きなお兄ちゃん。
……もう手遅れかもしれないけど。
─アカ、泣かないで。
─無理だよ。お兄ちゃん!!
─分かった。ぼくがお兄ちゃんを連れてくるから。
私の力になろうと東雲はお兄ちゃんを連れ戻そうと後を追おうとするが、マイケルの精霊ミンクに止められてしまう。
─離せってば。アカがお兄ちゃんを呼んでるから、呼びに行くんだよ。
私にはミンクの言葉は分からないけれど、東雲の怒りように大体の察しがつき涙が止まる。
また東雲の優しさに救われた。
─東雲、私はもう大丈夫だよ。ありがとう。
─どういたちまちて。ミンクがマイケルお兄ちゃんに頼んで、お兄ちゃんを捜してくれるって。
─本当に? 良かった。
東雲にお礼を言うと、ミンクにちゃんと話もをつけてくれている。
精霊は人間と違い赤ちゃんの時から、精霊同士や動物達と会話が出来る見たい。
弟とばかり思っていた東雲は、いつの間にか頼れるパートナーになりつつある。
「アカツキちゃん、もうお兄ちゃんを悲しませたりしたらダメだよ」
「あう」
ミンクから事情聞いたのかマイケルの問いかけに、私は肝に免じて大きく頷いて見せる。
私はもうお兄ちゃんを悲しませたりしません。
大好きなお兄ちゃんの幸せは私が守ります。
私の幸せなんてどうでもいいです。
「え、何? その私の使命が決まりましたと言うような強い決意の瞳は?」
「だっだっ」
私の強い決意をマイケルに見抜かされそうになる、話題を反らすため、視界に入ったコスモスのような可愛い花を指差し欲しいと求めた。
そう言えばマイケルは勘が鋭く主人公の隠し事を見抜いて、隠したことを怒ることなく解決策を一緒に考えてくれてたっけぇ?
さすがに主人公が組織の元に一人で行こうとした時は激怒したけど。
そのシーンに当時はツボにハマった記憶がある。
「あの花が欲しいの?」
「あー」
「ちょっと待っててね。この花はイグリスと言って、あなたに私の人生捧げますと言う花言葉。可愛らしい花なのに、ずいぶん情熱的だよね?」
花の名前と花言葉を教えてくれ、三輪取り二輪持たせてくれる。
お兄ちゃんにプレゼントするにはちょうどいいけれど、そしたらまたマイケルに勘ぐられるだろうか?
「こうやって髪に飾れば、可愛いお姫様の出来上がり」
と残った一輪を私の髪に飾ってくれて、王子様スマイルを見せられる。
ラブメッセージを聞いている気分だった。
「タスク。アカツキちゃんが仲直りしようだって」
「え、うそ?」
「あーあー」
人探しが得意と言うミンクのおかげでお兄ちゃんはすぐに見つかった。
マイケルはまるで私の代弁をしてくれるかのように声をかけてくれる。
すると目を真っ赤に染めたお兄ちゃんは信じられない様子で私達を見つめるから、私は必死にお兄ちゃんを求めた。
「抱いて良いの?」
恐る恐る再度私に確認しマイケルから私をもらい受け、私がにっこり笑えば再び泣き出しギュッと抱き締められる。
幸せすぎて気絶しそうになるけれど、そんなことしたら仲直りは失敗に終わってしまう。
「アカツキ、ごめんなさい。僕お兄ちゃんなのに、お兄ちゃんらしくなかったよね?」
「ああ」
お兄ちゃんは悪くないのにすごく反省しているのが分かって、私はまた感情のコントロールが聞かなくなりお兄ちゃんにしがみつき泣きつく。
私のお兄ちゃんは優しい人。一生懸命良いお兄ちゃんになろうとしていたのに、私はなんてワガママだったんだろう?
それなのに勘違いして反省して、ワガママな私を許してくれる。
本当に私はお兄ちゃんが大好きになりました。
幸いここには私達しかいないから、周囲の的にはならずにすむ。
「タスク、アカツキちゃんに受け入れられてよかったな」
「うん、僕アカツキにとって世界一のお兄ちゃんになれるよう頑張るよ」
「世界一とは大きく出たな。それじゃぁ後は兄妹水入らずで楽しんで。オレも帰って妹と遊ぶから」
「本当にありがとう。マイケル」
マイケルはゲーム通りどこまでも良い人である。お兄ちゃんを親友と言うより弟のように暖かく見守っている感じだった。
この頃の二人の関係は友達と言うか仲良し兄弟なんだろう。
それがいつ親友になるのかな?
「あう?」
「アカツキ、起きたんだね」
いつの間にか寝てしまったのか目が覚めると、眺めの良い場所に変わっていた。
不思議に思いながらお兄ちゃんの顔を覗き込むと、なんとなく男らしい表情に見える。
未来のタスクの面影があって、鼓動が高鳴り目が離せない。
本気になってしまいそうで怖いけれど、私はもう心に決めてる。
私がお兄ちゃんの幸せを守ってみせる。
例えそれが変えられない運命だとしても、無理矢理でもねじ曲げても変えてやる。
「僕はお兄ちゃんだからアカツキを何があったとしても守るからね? 約束」
私と同じ決意をお兄ちゃんは迷いなく言ってくれ、小指を私の小指に絡めゆびきりを交わす。
「ああ」
「え、これ僕にくれるの?」
「あう」
これはチャンスだと思い、いつの間にか一輪だけになったイグリスをお兄ちゃんの前に付きだす。
驚くお兄ちゃんに私は力いっぱい頷き微笑みを浮かべると、嬉しそうに受け取りイグリスの匂いをかぐ。
「良い匂いがする。しおりにして一生大切にするね。ありがとう大好きなアカツキ」
ってお兄ちゃんは言って、躊躇なく口にキスをする。
お兄ちゃんの唇は柔らかくて、とろけてしまう。
死ぬほど嬉しくて、気絶したのは言うまでもない。