船での出会い1
「えっ!?」
アレスは、ベッドの布団を跳ね除けるように飛び起きる。そこは、船の中の一室で、アレスが起きたことに気が付いたパパスが声を掛け、ベッドに歩み寄る。
「むっ?どうした、アレス?」
起き上がったアレスのベッドに、ゆっくりと腰を下ろす。
「えっ!?あれ?父さん?」
母に似た、青く澄んだ瞳を見開き、髪は艶のある太い黒髪の寝癖を触りながら、パパスの問いに答える。
「えっと、多分、ぼくが生まれた時の夢だと思うんだけど、どこかのお城で、父さんがぼくを高く上げて、ぼくの名前を呼んだんだ。」
困惑気味に応えるアレスをパパスは、その言葉に豪快にわらいながら応える。
「はっはっはっは!この儂がどこかの城の王か!それでは、アレスはその国の王子か?」
アレスが気にしてた寝癖をいじるように、わしわしと頭を撫でるパパス。
その手を少し煩わしく思いつつも、その大きな手の温もりに優しさを感じながら、アレスは、パパスに向き直り口をとがらせて抗議する。
「むーっ。父さん、ぼくのことバカにしてるでしょ!」
そんな息子の青く澄んだ瞳に見つめられたパパスは、息子の言葉に向き直り、
「別に、アレスのことを馬鹿にしたわけではない。夢があって、実にいい事だ!」
馬鹿にしてないと言われたアレスは、自分の言い分が認められたことで、安堵の表情を浮かべる。
そんなアレスの心境を可愛く思いつつも、真実を語ることが出来ないパパスは、話をはぐらかして、話題を変える。
「そんなことよりアレス。先程、目的地に近い灯台が見えた。もうすぐこの船旅も終わるから、船員の皆さんにご挨拶してきなさい。」言葉を区切り、思い出したと、付け加える。
「そうそう、アレスが寝てる間に、タンスや、ツボ、樽の中に、父さんがさっきアイテムを隠しておいたから、ついでに探しておいで!」
宝探しと言う言葉に、アレスは目を輝かせる。
「わかった!行ってくる!」
勢いよくベッドから飛び出すと、船室のドアを開けて、アレスは走っていった。
パパスは、その後ろ姿を見送り、小さな声で首から下げたロケットの中の肖像画に向かって呟く。
「マーサ。儂らのアレスは、元気に育っておるよ…」
その瞳は、走り去っていくアレスを見つめるその瞳は、息子に不憫な思いをさせてることを悔いていた。