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8.ペットだって飼い主に反抗しますから

「へぇー、ペットが飼い主様に逆らうんだ。」


「ペットは、飼い主の言葉なんて分かんねーから逆らう、逆らわないの話じゃねーんだよ。」


ダイヤース家にきてからはや1ヶ月。俺はペットとして、フィナと遊んだり、フィルと共に勉学に励みながら、まぁそれなりに満喫した生活を送っている。フィルはたまにこちらが「は?!」と声を荒らげてしまう程のことを要求してくるのだが、なんだかんや俺が折れて、フィルの我儘に付き合ってきた。


そんな俺だが今回は負けんばかりの気迫で、フィルに楯突いている。


事の発端は今から30分ほど前。


「ん?もう1回言ってくれ。」


「だーかーら、招待された誕生パーティーに一緒に参加して欲しいんだ。」


「断る。」


「なんで?」


「俺は貴族なんか嫌いだ!フィルならまだしも他のガキがいる所になんざ行きたくねー。てか俺、マナーもなってねーし。」


「一緒に勉強してるから大丈夫だよ。それにペットにマナーとか皆求めてないと思うよ?」


「…もしかしてペットとして俺を紹介するつもりか?」


「勿論。」


「いや、本当やめとけって。悪趣味だから。人の誕生パーティーにペット連れてく飼い主なんぞ見た事ねーよ。」


「僕より偉い奴なんかいないし、ちょっとくらいやらかしても大丈夫だよ!」


と俺が何度いってもフィルは諦めようとしないのだ。

最終的には「お前なんかに付き合いきれるか!」と怒鳴ってしまい、フィナは涙目になって、フィルは俺の怒り様に驚いたのか固まってしまい、居心地の悪さから部屋を飛び出して、現在庭園にいる。


普通の貴族なら、今頃酷い罰を喰らってるだろう。


「いい、すぎたかな。」


「いいんじゃないか。子供らしくて。」


「旦那様!」


旦那様は変わられた。初めて挨拶した時は、クマも酷く、痩せやつれていたが、その面影は0だ。王都で行っていた仕事も持ち帰れるものは持ち帰り、屋敷にいる時間を増やした。朝食は必ずフィル達と共に取っているし、できる限りフィル達と話す時間を作っている。この1年の旦那様しか知らない人達が見たならば、驚きのあまり手元が狂ってもおかしくない、というほどに変わられた。

変わられたというより、本来の旦那様に戻ったっていうのが正しいかもしれないけれど。


「フィルは、同世代の子と、いや喧嘩自体したことないんだ。皆、フィルの顔色伺って、ご機嫌とりするから。」


「は、はぁ。」


「だからフィルにとってこれも貴重な経験だ。」


「旦那様は私を、その罰さないのですか?私は、使用人の身でありながらフィル様に口答えをしたのですよ?罵声の1つくらいあってもよろしいかと。」


「クロは虐げられたいのかい?」


「な、そんなこと、望む人なんていませんよ!」


「はは、済まない、冗談がすぎたな。俺は、本当は当主なんて向いてないんだ。貴族のプライドなんてもの、今も昔も持ち合わせていないしな。」


「は、はぁ。」


「君は知らないかもしれないが、フェリーナは、妻は男爵家の生まれなんだ。」


男爵家と言えば、貴族の中で1番身分が低い位だ。まぁ身分と、貯蓄金の多さは比例しないが。中には、困窮した伯爵家が金を目当てに政略的結婚を男爵家とする場合もある。だが、大公家ともあろうものが金目当てに男爵家を選ぶはずはないだろうし。となると…恋愛結婚か。旦那様の奥様に対する溺愛ぶりは結婚する前からなんだな。


「勿論、多くの人が反対した。大公家の次期当主ともあろうものが男爵令嬢を選ぶなんて、有り得ないと。まぁ聞く耳なんざ持たなかったがな。」


「それもあってフィルは身分の差による格差を嫌っているのだろうな。」


「そう、なのですね。」


「そんなに誕生パーティーに参加するのは嫌かい?」


「…旦那様こそ何とも思わないのですか?私は、孤児です。フィル様の計らいで勉強をさせてもらっていますが、それも付け焼き刃で、きっとフィル様に、ダイヤース家に恥をかかせてしまいます。そんなことが分かりきっている私を連れていく等本当に承知していますか?旦那様が止めていただければフィル様もなにも言わないことでしょう。ですので、それらを含めてよくお考えください。」


「だが、いい練習になると思うのだ。」


「練習、ですか?何の。」


「クロも学園に行くのなら、ある程度同級生に慣れておかないといけないだろ?今回の誕生パーティーは、フィルの同級生も集まるし、何かやらかしてももみ消せるし、いい機会になると思うが?」


「…旦那様、その話はまた後でさせてもらってもよろしいでしょうか。確認すべきことができましたので。」


「あぁ、俺もそろそろ執務に戻るとするさ。」


「私なんかのためにお時間使わせて申し訳ございませんでした。では失礼させていただきます。」


俺はゆっくりとだが、しっかりした足取りで、フィルがいる方目指して歩いた。

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