7.ストレスで髪は抜けます
「まだミロクは見つからないのか。」
「すいやせん、頭まだ。」
「全く…あいつはどこにいったのやら。」
1人の部下が消息不明だった。そいつは、対象を逃がそうとしていて、それに気づいた別の部下に、対象ごと殺されそうになったのだ。
勿論、任務は成功し、対象は死んだ。ただミロクは、傷を負いながらも上手く追撃を躱し、今では生きているかさえ分からない。
「全く面倒くさいことになったな。あいつには、手を出すなと言っておいたのに。」
ミロクが何かしでかす可能性がある、とミヤから報告は受けていた。だからこそ、ムトウにはミロクの裏切り行為が発覚しても追求せず、適当に宥めて無傷で連れてこいと言っておいたのに。それを破って、殺そうとするなんて。
「頭、ムトウへの罰はもう十分ではありやせんか?このままだと、あいつ、死んぢゃいますぜ。」
「…ムトウを出して、手厚く介抱してやれ。」
「はっ!」
アメとムチとはよく言ったものだ。ムチが強ければ強いほどアメの効力が高まる。ムトウには死んだ方がマシだという程の拷問を与えてきた。そんな精神状態の中、甘い言葉と手厚い介抱をすることで依存状態に持ち込む。これが定石だ。まぁ、性格も出るから、よく見極めないと使い物にならなくなるがな。
「頭、ミヤからの連絡は?」
「帰ってきていたのか。残念だがミヤからの連絡もない。ムトウの話では致命傷を負わせたといっていたが、どう思う。ヤツがムトウに遅れをとるとは思えないのだが。」
「…なにか進展あったら教えて。」
「あ、おい!」
最近の悩み事は、部下の態度だ。命令を聞かない奴がいれば、自分の用事が終わればこちらのことは顧みずさっさと撤収する奴。全く、俺が禿げるようなことがあれば確実にそいつらのせいだ。その時は奴らの髪も抜いてやろうか。
「まぁミロクのことは死んでいたら仕方がないが諦めるとして、生きていたら、生きていたらで…この蜥蜴から生涯逃げおおせるなぞ無理な話だ。その時はせいぜい束の間の休息楽しむがよい。」