15.ネコは自然に癒される
日が上り始める頃、俺はそっとベッドを抜け出した。何故そっとかというと…気持ちよさそうにこの兄妹が寝ているからだ。俺に与えられた部屋は1人で過ごすには十分すぎるほど広く、ベッドも大きい。最初は1人部屋を楽しんでいたのだが、ある朝起きたらこの2人が同じベッドに寝ていた。フィルが目を覚ましてから問い詰めると
『だって、こんな大きいベッドに1人だと寂しいでしょ?』
と笑って言いやがった。それからはどんなにはいらせないようにしても、スペアキーを借りて割り込んで来るから諦めて、今じゃ3人一緒に寝ることが通常となっている。
いや、絶対おかしいだろ。兄妹ならまだしも俺は赤の他人だぞ。もし俺に幼女趣味があったら気持ちよさそうに寝ているフィナに、イタズラをしかけてもおかしくないんだぞ。そう訴える俺の言葉はフィルには届くことはなかった。いや、まぁ何もしないけどさ。それにしても、貴族ってのはどこもこんな感じなんだろうか。フィルも旦那様も緩すぎだろ。あんなのが大公と次期大公とか紹介されなちゃ気づかない気がする。
「あ、そろそろ行かないと。」
俺は、寝巻きからサッと着替えて庭に出た。広大な庭には農作物などを育てている畑やら、色とりどりの花が咲き誇っている庭園があるのだが、まずは庭園の方に向かった。
「トムさん、おはようございます。」
「おおぅ、クロ。今日も来たか。」
「はい、私は向こうの方から始めますね。」
庭師のトムさん。先代大公の時から、ダイヤース家の庭師を任されているベテランおじいちゃんだ。そのトムさんにお願いをし、俺も庭の管理に携わらせてもらってる。最初はよそ者の俺に庭師達はいい顔をしなかったが、
『いいじゃねーか。やらせてやりゃ。ただし、お前の腕をみてからだ。中途半端だったり、やる気がなけりゃすぐ出禁にすんからな。』
と古株のトムさんが認めてくれたお陰で、朝だけ参加させてもらえることになったのだ。
「よーしよし、今日も綺麗に咲いてくれな。」
「本当、飽きねーな。他の若造よりガッツがあるぜ。」
「ありがとうございます。好きなんですよ。植物の世話をするのが。」
「かー。俺の弟子にしてーくらいだ。庭師に向いてるぞ、お前。」
「あはは。」
そうこうしているうちに、日は完全に上り、フィル達の起床時間となった。切りがいいタイミングで、抜けさして貰って自室に戻ると、まだあの2人は気持ちよさそうに寝ていた。
「フィル、フィナ様、お時間ですよ。起きてくださいませ。」
俺の仕事は、飼い主とその妹を起こすことから始まるのだった。




