14.閑話ー運命の分かれ道ー
「ミロク、頭が呼んでるよ。」
「…分かった。」
俺は暗殺グループ《蜥蜴》に拾われた。
ここはそんな奴らの集まりだった。親に捨てられた子供や元奴隷、行き場の無い奴を拾い、技術を仕込ませ、一員として働かせる。食事は毎食、おやつだってついてるし、寝床もお風呂もこと困ることはない。それだけじゃなくて、密偵として使えそうな政治・経済や経理といった知識から人に興味を抱かせる手品や楽器といった所まで、なんでも学ばせてくれる。これほどいい環境はない。
ただやっぱり才能というものはあるもので、人殺しに向いてないやつはアジトで掃除・料理を担当している。ちなみに俺は、密偵や監視、誰かのヘルプ専門だった。そりゃあ普通ならそういう奴らは立ち位置が低く、見下ろされる立場なんだろうけど、頭の意向もあってか、和気あいあいとしている。お互いが家族のように。
「頭、ミロクです。」
「入れ。」
「失礼します。」
「ミロク、お前にはムトウの補佐に着いてほしい。」
俺たちの名前は、数字に因んだものをここに来る時頭が決めてくれた。ムトウといえば、最近きた新入りだったが、思ったより早く粗方の仕込みが終わったみたいだ。
子供だらけの中の数少ない中年男性のムトウは、元々傭兵をしており、筋肉ムキムキボディはある意味子供に好かれていた。今回は初任務の際のヘルプといった形だろう。
「了解しました。」
「気をつけて帰ってくるんだぞ?」
「任せてください。」
任せてください、そう言ったのに。
『パパー!』
黒に似た暗い茶色の髪の女の子が泣きながら、泣きながら叫んでいるのを見て、堪らなくなって、
「ぐはっ。」
「…すまない、ムトウ。おい、早く行け!逃げるぞ!」
ムトウに一撃を加えあと、その親子を逃がしてしまった。その子が妹と重なってしまい、居た堪れなくなったからだ。俺は妹を守れなかった。だから、妹にどこか似ているその子に罪滅ぼしでもしたかったのかもしれない。
…まぁ結局その父親だけでなく、その女の子も死に導いてしまったけれど。
俺はバカだ。自分の居場所を壊してまで、守ろうとした者も結局は守れず、逃げてしまった。
本当はあの時死んだ方が良かったんじゃないかって思う。けれど俺はまた拾われて、生き延びてしまった。
「クロー。ほら早く。」
「今行きますよ。」
なら、その時が来るまで守りたい。俺の居場所も、生意気で、時にウザったいフィルも、愛らしいフィナも今度こそは。そう心の中で誓った。
ダイヤース家のペットとしては最大の忠誠心だろ?




