プロローグ
雪が積もる冬の季節。辺りの家の窓からは明るい光が漏れており、陽は落ちても多少明るい。
けれどもう一歩も動くことは出来そうにない。お腹の血は止まることを知らず、下にある雪を赤く染めていく。ここ何日かまともに食べていないし、いい加減体が限界を迎えていた。
(俺、ここで死ぬのかな。まぁ、でも頑張ったよな。)
ようやく死ねるのかと思ったらなんだか気が楽になった。いや、気になることはいくつかあったけど、それでももういいやとさえ思えてしまった。
(あ、これが走馬灯ってやつか。)
目に浮かぶのは母と父と姉、兄、妹の楽しそうな顔。俺は少し離れた所でその様子を見ていて、気づいた妹が、皆が俺を呼ぶのだ。
(あぁ、今すぐ行…)
「ねぇ!君、死んでるの?」
「ぼ、坊ちゃん!何を!」
ふと耳に入った場違いな奴の声。折角家族と再会していたのに、その言葉で現実に引き戻されてしまった。一体どういう神経していればそんな事が聞けるのか、顔が見たくなって、うっすら目を開ける。視界は狭く、ぼやけて相手の顔なんか見えやしないが、それでも、
「き、れいな色だ。たい、ようみたい。」
目に入る黄金の光。それは、まるで天から迎えがきたかのような暖かい光に感じた。