未だ
初めて会った日 ゼリーのように派手な赤いドレスを纏っていた君は
ここではないどこかに行きたいと零していた
きっと誰にも聞こえていないと思っていたのだろう
だから僕は君に夢を見せ続けた
君の中に夢を見ていたくて
逃避のためだけの同伴者
空に雲が影を落としながら暗い眼差しを攫い
君は薄い銀の旗を振る
お互いの積み上げてきたものを黙殺し
海辺のスコールの轟の彼方へ葬り去った
僕等は同じだ と言い聞かせてやっと
束の間君は安堵する
西風で乱雑に梳かれた細い髪
どこに行こうなんて考えていないと
君は言った
夢の彼方
そのまた果てまで行くことは
未来を待つことなのだと
幾らそれが子供っぽい幻想に思えたとしても
奪ってはいけない淡い希望がある
君という人はそんな風に話さない
容易く頭を垂れたりしない
過去に向ける目をして僕を見ないでくれ
君の涙を我儘だと断罪したことを
もう謝らせてはくれないのか
それでも言おう
夢を見ていよう
あの時のように