夜の訪問者ー②
眠ろうとしてもあの4人が気になって眠れない。
半数がかなりの重症でいて、更に突然家に押しかけてこられて今も隣の部屋にいるのだから気になってしょうがない。
あの後、怪我人2人を私の左隣の部屋に移動させてまだあまり怪我をしていない2人のうち1人が廊下にいる気配がする。
一応は私が襲ってくる可能性も考慮しているだろう。
勿論そんな心配する必要なんてないのだが、むしろ警戒するなら焦って出しっ放しにして家の中を徘徊しているぬいぐるみ達の方がよっぽど強い。
音はしないのだが気配を感じる。
「う〜ん どうしよう……」
気になって気になってしょうがないので、ちょっとだけ廊下をドアの隙間から覗いてみた。
すると、それを察知したのか弓を持っていた女性……耳が長いからエルフなのかな?が短剣を構えた。
「ち…違いますよ ただちょっと気になって…」
「私達がボロボロになってる理由かい?」
少し怒気のこもった声に少し怯える。
「いっいえ! あの休まなくてもいいんですか?」
結果ちょっと声を張り上げる結果になってしまった。
「ちょっと…他の3人は寝てるんだから声なるべく抑えて……1階のリビングで話そうか」
少し落ち着きを取り戻した女性がそう提案してきたので、1階に降りる。
1階に降りてに降りてテーブルとセットになっている椅子に向かい合う形で座る。
「私の名前はリン まあ、タダで泊めてもらうのもあれだしちょっと話してあげるよ」
私はただそれを黙って聞いていた。
まず、この4人は冒険者という職業で今回は森にオークの討伐に来ていたらしい。
冒険者は基本的に犯罪になるようなこと以外は基本的になんでも請け負う、何でも屋さんだ。
本来この4人なら取るにも足りない魔物だが今回は不運が重なった。
オークを予定通り討伐しているとオーガに遭遇してしまったのだ。
オーガは日本でいう鬼で非常に凶暴で危険な魔物だそうだ。
そのオーガに前衛の仲間2人を瀕死にまで追いやられながらも何とか片目だけ射て怯んでいるすきに逃げてきたという訳だ。
特に瀕死の2人はもう1人の男の魔法によって無理矢理傷口を塞いでいる状態なので、血が流れ出る事はないが、塞ぐまでに大量の血を流しすぎたそうだ。
正直、ちゃんとした回復魔法を使える人のいる街まで生きているかは半々ぐらいの確率だそうだ。
物語なら良くあるような話だが、現実であったらたまったもんじゃ無い。
実際何かできなる事はないか聞いてみると、
「嫌いいよ 夜を屋根のある場所で過ごせただけましだし、これ以上何かしてもらうのは流石に悪いわ」
と、答えられたので何も言えなくなってしまった。
恐らくは冒険者として……他の冒険者達もたが全員が全員自分の仕事にプライドを持っているのだろう。
日々、お金を貰って以来を解決する彼らにとって無償で何かしてもらうという行為は自分たちのプライドをを傷つける行為なのだろう。
ん〜……確か……あの子のスキルに……良し!
「あの、もうちょっとだけいいですか?」
「ん?何?」
2階に上がろうとしているリンさんを引き留めた。
ある提案をしようと思ったからだ。
「リンさんたちは冒険者なんですよね?」
「ええそうよ まぁまだ中堅といったところなんだけどね」
「じゃあ、護衛の仕事をお願いします」
「護衛?」
「はい 私を1番近い街まで安全に連れて行って下さい」
「いやいやいや 私達も急いで行かないといけないしそもそも2人じゃ3人も守れないよ」
「いえ 4人で私1人だけ守ってくれれば良いんですよ」
「悪いがそれは無理だよ あの2人は自分で動くのもかなり厳しい状態だ あんたを守ることなんて無理だよ」
「まあ、それはそうですね とりあえず最後まで聞いて下さいよこれで最後ですから 私が払う報酬は2人の手と足です」
リンさんは少し私の目をしっかりと見つめて、
「本当にできるの?」
「できる可能性は7割ぐらいはありますよ」
「……少し待ってくれ 仲間と検討して答えを出す」
そう言って2階の寝室まで駆け上がって行った。