平凡な学生は女神の頼みを聞くようで
はぁっはぁっはぁっ 僕はなんで走っているのだろう
はぁっはぁっ ただ、止まってはいけないと、それだけを思い一歩、また一歩と足を出す。
思わず足がもつれた。前に倒れて、慌てて起き上がろうとして、止めた。
必死に走ったからって何になる。走って、走って、走って、その先に希望もなにも無く、それが僕の気力を刈り取っていく。
目の前に影が差し、助かったと思い顔を上げるとそこには…
何も無かった。否、あるにはあった。ひたすらに暗い、顔も何も分からない、かろうじて人の形をなしている、暗い人影が。
うわぁっ 思わず叫び、僕は這いつくばりながらも慌てて逃げ出した。
また走るのか、そんな事を考えながらひたすらに前に進む。
どの位走ったか分からなくなってきた時、一筋の灯りが見えた。
最後の気力を振り絞って灯りに駆け寄っていく。灯りの正体はお巡りさんが持っている懐中電灯だった。
これで助かった。お巡りさんに駆け寄って、影が、影に追いかけられてっ と取り乱しながらも説明すると、一旦僕が来た方を照らし、「誰も居ないじゃないか」と僕に言った。
そんな筈は、と振り返り、何も無い事を確認し、でもっ、本当に追いかけられて、とお巡りさんの方に向き直りながら言うと、そこには、警察の制服を来た、あの影が…
肩を掴まれ、僕は悲鳴を上げる。
そこで目が覚めた。 またこの夢か、最近よく見るんだが目覚め悪いし嫌なんだよな。と思いながら時計を見るとまだ深夜の3時過ぎだった。
もう一度は寝れそうに無いし、シャワーでも浴びてすっきりするか、と思いシャワーを浴びて、久しぶりに余裕を持って、ゆっくりしてると学校に行く時間になった。
「どーした?」「やけに眠そうじゃない~」横でうるさいのは俺の幼なじみの詩乃だ。
今朝もまたあの変な夢みてさぁ と言うと「またぁ?黒に思い当たる事無いの?」と呆れたように聞いてくる。
黒ってなんだよ と聞くと、詩乃は「夢に出てくる黒い影の事よ。黒い影って長いし黒の方が可愛く無い?」と聞いてくる。
俺にとっては結構深刻な問題なんだがお構い無しだ。
「だから、一回家に来たら?んでお父さんにちゃんと祓ってもらったら?」
詩乃の親父さんは地元の神社の神主だ。
お前ん家の親父さん怖いし嫌なんだよな~ と言うと「まだあの時の事引きずってるの?」と聞いてくる。
いや~そうゆう訳でも無いんだけどなんとなく嫌なんだよなぁ。
小さい頃、こいつ連れ回して近所の山をふらついてたら帰るの遅くなってめっちゃ怒られたんだよなぁ と思い出していたら、いきなり教室が騒がしくなった。
何事かと皆が見ている外を向くと…黒がいた。
俺は詩乃に黒が来た!早く逃げろ、と言うと、「あそこに黒が居るの?何も見えないけど…」とかえってきた。
どうやら皆には物がいきなり壊れて、人がいきなり消えているように見えているらしい。
もう一度窓の外を見ると、何体か増えていた。どうやら1体どうにかしたってどうにもならないらしい。それを悟ると詩乃にもとにかく走り続けるように行って教室から飛び出した。
後ろから詩乃が「ちょっと~どこ行くのよ」と聞こえて来るが振り向かない。
あいつらは俺の夢から出てきたんだからとにかく皆から離れて逃げなければ、と走り続ける。
どこをどれだけ走ったか分からない。どこに行っても黒は付いてくるし日も暮れてきた。少しだけ、少しだから、と膝に手を着け
顔を上げると前には黒が…後ろを振り返っても、横を見ても黒が…
ああ、俺はここで死ぬんだな。詩乃は、皆は逃げれたかな、最後に顔を見たかったなぁと、そこまで思った時、意識が途切れた。
目が覚める。こ、ここは?えと、俺は…
「やっと目が覚めましたか」
前を見ると、そこには、見たことのない人が~いや、人というには神々しすぎる~ がいた。
周りを見渡すと…思わず悲鳴を上げた。 何故なら、黒がたくさんいたからだ。
「おや、あなたには彼らが見えるのですね。」
「まずは、覚えているかもしれませんがあなたがここにいる理由を説明しましょう。」
そう言って彼女は話始める。
「私の名はヘカテー。月と闇・幽霊・罪 を司る 女神です。
ここは、私の使い魔達によって殺された者が来るために作った空間です。私の持っていた数珠が切れ、様々な世界に飛び散った珠によって冥界とあなた方のいた世界が繋がってしまいました。そちらに渡ってしまった死者達により、殺された者は、ここに来て、記憶を失くし転生するか、従来の通り天国か地獄かの審判を受けるかを選んで行きます。」
え~と、ようは、俺は冥界の死者によって殺されてこの空間に飛ばされてきたって事か?
「ええ、その通りです。いつもなら説明をしたあとどちらを選ぶか決めていただくのですが、あなたには頼みがあります。
死者達は、見えている人にしか倒せません。そこで、それぞれの世界に渡って、珠を取り込んだ死者を倒すことによって珠を集めて欲しいのです。」
「もちろんただでとは言いません。すべての珠が揃った時、何でも一つ、願いを叶えられるので、好きな願いを叶えて下さい。」
…決める前に一つ確認させて欲しい。詩乃は、みんなは、どうなった?
「それが、良く分からないのです。」
どういう事だ?
「いえ、本来ならばあの周辺にいた人は全員死に、ここに来るはずだったのですが、何故か誰一人としてあなたのそばでは殺されていないのです」
つまり、皆は無事だってことだよな? 分かった。それなら皆の為にも手伝おう。
「助かります。では、あなたに残った最後の珠である「陽」を渡しましょう。」
「珠は全部で12種あります。今渡した「陽」の他に、陽と対をなす「陰」、「火」「地」「風」「水」「木」「金」「寄」「冥」「真」「吸」の珠があり、あなたのいた世界に飛んだのは「寄」だと推測出来ます」
「気をつけて下さい。この珠を受け取るからには後には引けませんよ。 手を出して下さい。」
な、なんなんだこれは。昔の記憶? ~そこには小さい子が、親と手を繋いで歩く仲の良い風景が~
「…ぶですか 大丈夫ですか?」
あ、ああ。この珠を持って見えた映像はなんだ?
「映像?そんな機能はないはずですが… まあ、あなたの周りでは、誰も死ななかったりと色々と不思議な事があるので気にしないで下さい」
「では、あなたが元いた世界に戻します。 くれぐれも気をつけて下さい」
痛っ。どうやら本当に戻れたようだな。協力するとは言ったが何をすれば良いんだ?
とりあえず家に帰るか…
初投稿です。
投稿頻度は低いと思いますがよろしくお願いします。