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第二十三話 真相開示

 ネックレス型通信機を口元から話して、魔鉱石の灯りが消えるのを待ってからポケットに仕舞った。それを興味津々で見ている空王に視線を合わせる。


「……っと、待たせちまったかな?まぁ後は待ってりゃ結果が出るだろ」


「まさかここで小型通信機が出てくるとは思いもよらなかったわ。もしかしてイルレアン……いえ、マクマインと関わりがあるのかしら?」


 ラルフは不敵に笑いながら椅子にもたれ掛かった。


「いやどうだろうな〜。あんたはどう思う?」


 この態度、おちょくるだけおちょくって真相を話すことはないだろう。段々とこの男の性格を掴んできた空王は鼻で笑いながらラルフを見据える。


「正直どうでも良いと言うのが私の気持ちよ。私の計画は順調に進行しているし……」


「……計画?」


 ラルフは首を傾げた。空王はラルフから視線を外してどこか別の場所を見ている。何かを誤魔化そうとしているような不自然な動きに、ラルフも視線を落として考えてみる。

 この部屋に入った当初言っていた「用の半分は完了している」というセリフ。そして「計画の進行」。水竜の一件は空王としても寝耳に水だったようだが、それに関する沙汰が寛大だったことが引っかかっていた。ふとある仮説が浮上する。


(……俺たちをこの国に入国させるのが狙いだった?でも、どうして……)


 いや、考えてみれば分かりきっていることだった。


「おいおい……最初から俺たちと魔族を戦わせることが狙いだったてのか?」


 図星だったのか空王は目だけでラルフを見た。侍女達の目もチラッと開く。


「だけどこの地で戦えば自分たちも危ないはず……ってことは魔族の襲撃は予定されていた。違うか?」


「ふふ、見くびられたものね。私には最高の兵隊がいるのよ?なんであなた達を頼る必要があるの?」


「さぁな。敵が相当面倒な相手か、兵隊を減らしたくなかったか……違うな。殲滅を提案したってことは確実に滅ぼすのが目的か。こっちにはミーシャがいるし、やろうと思えば出来なくはないしな」


 ラルフは思いついたことをペラペラと喋る。当てずっぽうで言ってはいるが、点と点が線で結ばれていくような感じがして気分良く舌が回る。それとは逆に空王は押し黙り、スッと無表情になる。


「最初は俺だけが呼ばれたから警戒はしてたけど、みんなで行けるってんで安心してたぜ。……ったく、こう来るとあれだな。俺たちもまとめて片付けようって魂胆だろ?ひっでぇよなぁ……」


 苦笑いで腕を組みながら見透かしたように一方的に喋る。その瞬間、不動の姿勢で身じろぎ一つしなかった侍女が目にも留まらぬ速さでラルフの喉に短刀を突き付けた。二人に刃を突き付けられたラルフはそれこそ身じろぎ一つ出来ずに固まった。


「うおぅっ!!なんだなんだ!?そんなのどこに隠し持ってたんだよ!?」


「ふふふ、訓練すれば誰でも危険物を隠し通すことくらいワケないわ。それから決してここから無事に逃げられると思わないでね。その二人は暗殺術に特化しているから、ちょっと動けば……」


 空王はジェスチャーで首が切れるのを示す。ラルフは目だけで侍女を交互に見た後、鼻で笑う。


「……人は見かけによらない、か?」


 空王は含み笑いで侍女の一人を見ると、顎でクイっと何らかの指示を出す。侍女はすぐさま頷いてラルフのポケットから通信機を取り出した。空王に跪いてネックレスを渡す。


「さて、これであなたの武器は腰に下げた短剣だけになったわけだけど、良ければそれも渡してくれる?」


「ふっ……俺に選択肢はないだろ」


 ラルフは腰に下げたダガーを侍女に渡した。


「それで?この後は何か考えてんのか?」


「そうねぇ、あなたのやるべきことは先の通信で終わりを迎えた。ならばもう居る意味もないし、ここで死んでもらうのが楽ではあるのだけれども、あの怪物に信頼されているのをみればここで殺すのは惜しいのよね。万が一の際はそれこそ人質として使えるわけだし」


「なるほど、俺はまたミーシャに助けられたわけだな。たった一度命を救っただけだってのに、お返しに何度あいつに助けられるんだろうな……」


 乾いた笑いで自嘲する。と同時に何かに気づいたようにハッとした顔を見せた。


「……あっ」


「動くな」


 ラルフが顔を傾けたのに敏感に反応して刃をチラつかせる。ラルフは手を上げて武器を持っていないことをアピールしつつ「はいはい」と面倒臭そうに返答した。空王はその態度に違和感を感じ、怪訝な顔で口を開く。


「なぁに?命乞いでも言っとく?」


「はは、いや何。大事なことってのはポンっと忘れちまうもんだなってさ。まだ武器があったなーって思い出したんだよ」


 それを聞くなり侍女がラルフの体を(まさぐ)ろうと動き始める。


「あー、待った待った。俺は身につけてない……いや、せっかくだからそのまま下腹部の方を……」


 それを聞くなり侍女の短刀が下腹部に突き付けられた。


「嘘嘘嘘っ!悪かったって!言うからそこは真面目に勘弁してくれ!!」


「それじゃ早い所武器を見せてもらえる?ああ、冗句や下品なことだったら、去勢は免れないからね?」


 ラルフは諸手を挙げて”お手上げ”といった姿勢を見せる。「冗句も通じないとは呆れる」とでも言いたげだが、ラルフは気持ちを入れ替えて不敵に笑った。


「その通信機」


「これ?これがどうしたの?」


「そいつが俺の切り札だよ」


「あはっ!ということはもう切り札が無いということになっちゃうけど?それってやっぱり……」


 侍女に目配せするとラルフの股間を狙って短刀が怪しく光る。


「ちょっと待てって……話は最後まで聞くもんだぜ。そうだろ?アスロンさん」


 居もしない通信機越しに話していた男に突如話しかける。通信機は起動していない。ミーシャとの話の後に通信を切ったのはこの目で見ていた。ブラフ。そうとしか思えない。しかし、その予想は次の瞬間裏切られる。


『話は全て聞かせてもらったぞぃ』


 通信機から音声が漏れ出す。突然のことに空王もネックレスに目が行く。だがやはり通信機は起動していない。


『ラルフさん、これを要塞の儂に共有すれば良いのか?』


「ああ、頼むよ。出来ればみんなに共有しといてくれ」


 そのセリフの後すぐに何もしていないのに通信機が起動する。


「これは一体……!?」


「分からないのも無理ないさ。そいつは生きた魔道具、大賢者アスロンの意識を持ったこの世で一つの通信機だ」


 空王は小さな悲鳴をあげて通信機を取りこぼす。床に落ちた通信機はそれがスイッチとなったかのように光り輝いた。侍女が急いで拾おうとするが、続けて漏れ出た通信機の言葉に一同凍りついた。


『こっちが片付いたらお前の元へ行く。それまで待ってろ空王(アバズレ)

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