プロローグ
ペンネーム通り大好きを形にしていきますので、良ければお付き合いください。
楽しんでいただければこの上ない幸いです。
魔法と科学が奇跡的に融合を果たした世界、天上魔界「イイルクオン」
世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。”人類”と”魔族”どちらかが最初というわけではない。まるで示し合わせたかのように戦いが始まった。
何のことはない生存圏をかければ自然と争いは起こるものだ。
決着の見えぬ、長きにわたる戦争が始まった――
世界の最果て「ヲルト大陸」暗闇を絵に描いたような風景。影の集合体。日光が当たらないほど黒雲が大陸を覆い、闇が蠢く。
日が当たらないにも拘らず木々の葉は鬱蒼と生い茂る。かと思えば枯れ木も混ざり葉の生い茂る木と交互に立ち並ぶ。このちぐはぐな森に違和感を覚えない生き物はいないだろう。俯瞰から見れば湖と思われる場所がある。そこが源泉となりコンコンと水が溢れ、川をそこらかしこに作って止めどなく流れている。
明かりから切り離された闇の世界。人が立ち入ることの出来ぬ領域。魔族が人類との戦いを忘れ暮らせる安息の大地。そんな大陸の中心部に一際大きな建造物がそそり立つ。天を衝く高い塔は、ただならぬものが住まうことを連想させる。
「暗くてよく見えん」
塔の上から下を眺める超越者が開口一番言い放つ。
「仕方ないですよ魔王様。これこそヲルト大陸の風景なのですから……”暗視”を使用されたらどうでしょう?」
煌びやかで優雅に真っ赤なドレスを身にまとい、まるで貴族のように着飾った美しい女性。光を反射する鮮やかな金髪を夜会巻きにしてこれからパーティーで一曲踊ろうといった雰囲気だ。
たれ目で、静かな微笑をたたえている。白く美しい肌に紅をうっすらさした唇を動かし、魔王様と呼ぶ自分より少しばかり背の低い女性に話しかける。
魔王様はドレスの女性に対し、白一色の長袖のワンピースで装飾の類は身に着けず家臣同様金髪だがこちらはお尻にかかる長い髪をそのままにしている。
まるで寝巻のままうろついているかのように無防備な姿だ。肌は浅黒い、顔立ちは整っているが目がつり上がり、常に怒っているようにも見える。
二人どちらも耳が長い。エルフ族に類似している。家臣と比べると耳が長い以外は性格も服装も正反対に見える。
「ミーシャだ。昔のように呼べと何度も言っているだろイミーナ」
イミーナと呼ばれた家臣は慈愛に満ちたやさしい笑みを浮かべ、
「そういうわけにはまいりませんよ魔王様。いまだ会議は始まっていないとはいえここは厳粛な場なので……」
ミーシャはフンッと鼻で笑う。
「”黒いの”が何といっても構わない。お前は誰の家臣だ?」
「……ミーシャ様です。失礼しました」
ミーシャはイミーナを一瞥し、暗闇に目を落とす。
彼女はこのヲルト大陸が嫌いだった。暗くジメジメして陰気な雰囲気ばかりが目に付き、陰鬱な気分になる。
円卓の召集には必ず答えてきた。
召集される地は毎回違うので仕事であることを理由にいろいろな土地に旅行気分で足を運んだ。
一番好きな召集場所は”蒼玉”が統治する「ぺルタルク丘陵」美しい地だ。ここは暗すぎるし景色もちぐはぐで、久しぶりに来たミーシャは乗り物酔いを起こしたような気分の悪さを感じる。
現第一魔王”黒雲”の根城であるヲルト大陸。
円卓の創立メンバーの一人で、自分以外の創立メンバー没落後この地を離れようとしない。大概は執事が”黒雲”の代わりに会議に参加する。
「お待たせしました”第二魔王”様。”銀爪”様が到着されたので、円卓室にお戻りください」
いつからそこに立っていたのか”黒雲”が誇る敏腕執事の登場だ。
「ご苦労」
一言告げると返礼の後、闇に消えていく。ミーシャは自分につけられた二つ名を嫌っていた。それを知るからこそ彼の敏腕執事ですら”黒雲”がつけた二つ名を使うことはない。
「この会議……荒れますね……」
イミーナの言う通りだ。大概は執事が”黒雲”の代わりに会議に参加する。魔王の権限を一時的に持っているとはいえ現場では一番力がない。”黒雲”もそれは承知で、法外な割を食うことがなければ好きにやらせている。
今回の会議はホームで久々の本人参加となれば、荒れることは誰の目にも明らかだ。イミーナがあえてここで口にしたのはミーシャに教えるためだった。もちろんミーシャに教養がないわけではない。学はあるが単純に面倒くさいので、イミーナに丸投げしていた。政治ごとに関してイミーナの右に出る者はいないと誇らしく思っている。
「黒いのが何を言おうと関係がない。どうせいつもの会議だ」
ミーシャは踵を返し円卓会議上に向かう。さっさとこの島から出るためにも仕事を片付ける必要があるからだ。イミーナも後から続く。二人のハイヒールの音だけが静かな廊下に木霊していた。
頑張ってそれなりに投稿しますんで
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