ゴブリンだったゴブちゃん
木造の小さな建物が見えてきた。本当に信じていいのかな? 人間とゴブリンは本来なら敵同士。なのに武器も持たずに女の子についてきてしまった。おばあさんの他にボクより強い人が出てきて襲われたらどうしよう。そんな不安がボクにはあった。
「おばあさん、おともだち連れてきたの。開けて」
女の子はボクのことを「おともだち」って言った。人間の女の子は警戒心って物が無いのか? ボク、モンスターなんだぞ……おっと、扉が開いた。そこには杖を持った小柄な背の曲がったおばあさんがいた。目が見えていないみたい。おばあさんは手探りでボクの頭を撫でて
「ネムにお友達が出来たなんて、嬉しいわ」
どうやら女の子の名前はネムっていうらしい。ボクがモンスターだって説明しても何も驚かない。どうして? 何か裏があるんじゃないのか。モンスター界では有名なんだぞ。ゴブリンは臆病者で卑怯者。勝てる相手にしか勝負を挑まない。ネムなんて簡単に殺められるんだぞ。
「ネムもねぇ。モンスターみたいなモンなんだよ」
おばあさんが目を覆いながら杖でネムの頭をコツンと叩いた。
「てへへ~」
ボクに握手をしてくれてるけれど……凄く寒い。人間ってこんなに冷たいの?
「良かった。ゴブちゃんは誰も襲わなかったから天国だね♪」
ネムはそう言うと、青白い顔でボクに微笑んだ。そっか、この子もおばあさんも死神だったんだ。
ボク、ゴブちゃん。
初めて「おともだち」が出来たよ。