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7.Fランク冒険者 VS 炎の精霊王

いつもより早い投稿!

理由? くっそ短いからです!



あ、今回は炎の精霊王編の解決編というか、解答編になります


「ただいまー」


 無事にナナルさんに魔透石を渡して依頼を達成した俺は、満面の笑顔で自宅のドアを開けた。

 と、そこへ、


「ヒューガさん!! 大丈夫ですかっ!」

「イ、イレス?」


 血相を変えたイレスが、飛び込んできた。


「あ、あの! 窓から外を見てたら火山がバーンって! そ、それでわたし、ヒューガさんが心配で……」


 どこかで聞いたようなことをまくしたて、不安そうな顔を浮かべるイレス。

 どうやら、ずいぶんと心配させてしまったようだ。


「大丈夫! この通り俺はピンピンしてるよ!」


 俺は彼女を安心させるように、ポン、と胸を叩いてみせた。

 が、イレスは突然全く関係ないことを言われたように、きょとんとした顔をした。


「え、あ、いえ……。ヒューガさんが無事なのは、分かって、ましたけど。だって……」


 それから、イレスは山の方を指さして、




「――あの山を吹き飛ばしたの、ヒューガさんですよね?」




 確信のこもった声で、そう言ったのだ。


 今度呆けた顔をするのは、俺の番だった。


「よ、よく分かったな」


 事情を全く分からないはずのイレスなのに、流石と言うべきか。


 あれ?

 でも、だったら……。


「さっき、心配してたって言うのは……」

「あ、あの……。目立ってしまって、ヒューガさんが落ち込んでないかな、って」


 ああ、そっちか。

 今度こそ、イレスを安心させられるように、にっこりと笑った。


「それなら大丈夫! 今回に限っては、俺がどんだけ派手なことをしても、代わりに目立ってくれる奴がいるからな!!」




 ※ ※ ※




 そもそも、俺がなぜ火山に炎の魔法をぶちかます羽目になったのか。

 それは、「採取依頼を達成するため」だ。


 俺が採取依頼で集めなければいけない品、「魔透石」は、「魔法の影響を一切受けない」。

 だから魔法の力で物を探す探知魔法では発見することは出来なかった。


 探知魔法に頼らなければ、俺に石の種類を見分けるような能力はない。

 もはや万事休す、俺は依頼に失敗し、晒し物のようにクエストボードに名前が貼られ、俺の目立たないライフも終焉を迎える……かと思われた。


 しかし、そこで俺は逆転の秘策を思いついたのだ。

 それは、発想の転換。



 ――もし魔透石に魔法が一切効かないのなら、ほかの石が壊れるような攻撃魔法を使えば、魔透石だけが残るのではないか、と。



 ただし、それでもまだ問題は残る。

 あの火山の石はそれなりに魔法の耐性が高いらしいし、ちまちまとやっていたのでは、今日中に依頼を達成することなんて出来ない。


 本来であれば、目立つ魔法を使わざるを得ないところ。

 それでは本末転倒だ。


 しかし、その問題も、今回に限っては解決するための条件が整っていた。


 そこで出てくるもう一つのピースが、「炎の精霊王」の伝承。

 かつて、レグナ火山には「炎の精霊王」というのがいて、そいつは混沌の魔力で狂った末、「火山を噴火させる魔法」を使ったらしい。


 しかもその話は、この土地に住んでいる人間にとっては、それなりに有名な話だ、というのも受付嬢のナナルさんから聞いていた。


 そこで俺は、閃いたのだ。




 ――「今なら派手な魔法を使って火山を噴火させても、全部炎の精霊王のせいになるんじゃね?」……と。




 幸いにも、このレグナ火山は不人気スポット。

 探索中にほかの冒険者を見かけたことはないし、人的被害が及ぶ可能性はない。


「そこで俺は炎の魔法を火山の山頂で発動。まるで噴火したみたいに山を吹き飛ばし、狙い通りに綺麗に残った魔透石を必要な数だけかき集め、慌ててギルドまで戻った、って訳さ」

「す、すごい! すごい頭脳プレイです、ヒューガさん!」


 俺の話を聞いて、きゃっきゃと喜んでくれるイレスに、俺もつい照れてしまう。


「あ、でも、炎の精霊王は大丈夫、だったんですか? もし、本当に復活なんてしたら……」


 心配性のイレスはそう言うが、


「ああ、大丈夫大丈夫。魔法を撃ってからちょっとだけ待ったけど、火山の中に動くものとかなかったからさ。やっぱり、ガセだったんじゃないかな」

「そ、そうですか。よかったぁ」


 ようやく笑顔を見せるイレスに、俺も嬉しくなる。

 と、もう一つ、イレスに報告出来ることがあるのを思い出した。


「あ、そうだ。そういえば、ナナルさんが知らない魔法を使ってたんだ。《トゥーチ》って言うんだけどさ。たぶん生活用の魔法で、『ゲーム』にもなかったと思うんだけど、家事に役立つかもしれないから、よければ……」


 俺はそう言って勢い込んでまくしたてるが、イレスは顔を曇らせてしまった。


「ご、ごめん……なさい。わ、わたし、魔法は使えない、と思います」

「そう、なんだ。ごめん。気付かなくて……」

「い、いえ……」


 そういえば、長い間一緒に暮らしているのに、イレスが魔法を使ったところをまだ一度も見たことがない。

 親切で言ったつもりだったのだが、もしかすると地雷を踏んでしまったかもしれない。


「だ、大丈夫です! わ、わたし、魔法が使えなくたって、ここにいられるだけで、幸せ、ですから」

「あ、ああ! 俺もイレスが楽しく過ごせるように、もっともっと頑張るよ!」

「ヒューガさん……」


 うるうるとした瞳でこっちを見るイレスに、ほんとにいい子だなぁ、と思いながらも、俺は考えていた。


(……この世界には、まだまだたくさん、俺の知らない「スペル」があるんだよな)


 どんなに魔力があっても、スペル……「力ある言葉」を知らなければ、その魔法は使えない。


(魔法についても、出来ればちゃんと、この世界の人に教わらないとなぁ……)


 今日、痛感した。

 魔法のこともそうだが、やっぱり俺にはまだ、足りないところがたくさんある。


 ……正直に言えば、今日は反省点の多い一日だった。


 この前の決闘騒ぎが理想的に片付いたからと言って、確認もせずに無茶な依頼を受け、危うく悪目立ちしてしまうところだった。

 それに、受付嬢のナナルさんにも心配をかけてしまったし、ここの冒険者たちも「もしかして炎の精霊王が復活したんじゃないか」と思ってしばらくの間警戒したり、もしかすると探索をしてしまうかもしれない。

 それについては申し訳ないな、と言うしかない。


 今後はこういうことにならないよう、色んなことについてもっと知識を深めて、同時に依頼はしっかりと内容を吟味して、確実に目立たずに済ませられるのだけを受けるように、注意しようと思う。


 ただ、まあ、なんにせよ、とりあえず……。





「――今日も何とか、目立たずに乗り切ったぜ!!」





 首の皮一枚で事態を収められたことに感謝して、イレスたちとささやかな祝杯をあげたのだった。

今回の主人公はちょっとだけおバカかもしれないです(二回目)




うむむ、ラストルーキーをさしはさむ余裕がない

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軽い出来心で作り始めたものの製作に二年半もかかり、おかげで小説書くのが遅れに遅れたといういわくつきのPC用フリーゲーム
NAROUファンタジー」(別サイトに飛びます)
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