人形
ねぇ、私を見て。私だけを見てよ。
他の子なんて見ないで、私だけを見ていてよ。
どうして見てくれないの?何で見てくれないの?
私が一番可愛いと言ってくれたじゃない…私しか見えないと言っていたじゃない!他の子よりも私が一番だと!他の子なんて見られないと!どうして?どうして私を捨てるの!? 嫌だ!イヤダイヤダ!!もっと、もっと遊んで!私と遊んで!私を見て!可愛いくしてよ!
もう我儘言わないから!私だけ何て言わないから!
だから…だからお願い……。一緒に遊んでよ、また可愛くしてよ…捨てないで…。
どんなに叫んでも、この声は届かなかった。
あの子は、私を忘れてしまった。あんなにも可愛いと言って遊んでくれていたのに、私は捨てられた。
私は、このまま朽ちてしまうのかな。
遊びたかったな。また、あの子と遊びたかったな。
私も喋ることが出来たら
この想いを伝えられたのなら…。
どれほど良かったか……。
さよなら、したくなかったよ。
また、愛されたいよ。
でももう、叶わない願いなんだね。
あぁ、身体が熱い。溶けていく、燃えていく。
さよなら、大好きだったご主人。
もっともっと遊んで欲しかった。
さよなら、さよなら。
私は、灰となって散ってしまった。




