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第8章

この章では護送船団に先行して警戒するレーダーピケット艦について述べる。

戦時建造輸送船で消耗の激しかったのは、レーダー ピケット艦である。


この艦は、先行するドローンと護衛船団の前衛との間に位置してドローンの情報を受信、分析し前衛隊に転送、または通報するのが役目である。

これにより事前に脅威を探知し、護送船団や直接護衛にあたる艦隊に情報を提供する。

なお、この艦は本来は無人であった。機能もドローンからの情報を受けて中継するだけであった。

しかし、いくら高度なAIを組み込んだ無人艦艇とは言え、微妙な戦術判断が必要なケースもあること(なんせ宇宙での本格的な戦いは史上初なんである)や、そういう艦艇は非常に高価なために、十分な数が揃えられないという問題から、後期建造型からは、有人艦艇として建造されるようになったのである。


そのため操縦席周りの追加装甲や居住区の強化がされたりなど生存性向上がなされた次第である。

またこのときの様々な改良の試みは、他の艦艇建造にも順次適用されたりしたため、戦時建造輸送船など全体の生存性向上にもつながったのである。


以下はレーダーピケット艦の運用の実態である。

レーダーピケット艦 PFー52「さつき」は軌道ステーション「まいづる2」で建造された初期型の1艦である。

その後、戦闘中に大破した自律戦闘哨戒システムを下ろし、有人型に変更したものである。

今回は、第171護衛隊に派遣され、第20次の輸送船団の護衛である。

ピケット艦はドローンを射出した後、船団に先行し警戒する。

「こちら艦長、1600戦闘配置とする。敵の推定位置からは遠いが、改装前の本艦が現空域にて被弾損傷していることもある。十分警戒するように。ただし気密服は着用するがヘルメットは別命あるまで着用せずともよい。以上だ」

狭い操舵室内と隣接して置かれているセンサーステーション、CICは総員配置前に早くもいっぱいである。


無重力状態を利用してセンサー員は自分の席の横にコーヒーのパッケージを浮かせて「係留」している。

「各偵察機より、定時報告あり。

さつき1番から4番、現在本艦前方左右それぞれ90度カバー、異常を認めず。さつき5番から9番は後方左右90度カバー、こちらも異常なし。」

各種周波数帯に耳を澄まし、赤外線センサーや高性能光学望遠鏡を備えた無人の偵察機はかっての地球上での海戦で活躍した偵察機のように、自身は電波も発せず、黙々と任務を果たしている。

「艦長、どうやら敵はこのあたりでの迎撃は諦めたようですね?」

「いや、まだわからんぞ。第17次の船団を迎撃した際には、この空域で待ち伏せしていた。

幸い敵の待ち伏せしていた艦隊は、わが支援部隊に基地まで送り狼され、基地に帰還直後に攻撃、多数の残存艦艇と基地施設に損害を受けたとは聞いている。

おかげで前回もほぼ攻撃なく船団は到着できたからな。


ただ、出港まえに入った情報では敵の軌道ステーションが急速に拡大されているらしい。

その規模は従来型よりも約二倍近い戦闘艦艇の建造、補修ができるそうだ。

また、以前よりも多数の造船機材が本土から打ち上げられつつありとも言われている。


月面での戦闘が膠着している今、強力な通商破壊艦艇を投入してわが方の補給を絶てば優勢になるからな。

彼らが一気に大型艦艇を投入、少なくとも局地的な優勢を確保したくなるような状況はわからんでもない。

幸い大型艦艇は赤外線センサーで捕捉しやすいから、我々を狙ってきたらまずはパッシブな赤外線センサーで捕捉、後は偵察機を哨戒爆撃仕様で発進、先制攻撃できるだろう。


でもまずは、自分たちの安全を確保しつつ、敵の早期警戒が任務だからな。


「艦長、1600です。総員戦闘配置とします」 「了解」


とまあ、こんな感じで、本艦は任務を果たしている訳である。


この艦は操舵室、長距離レーダーユニット、近接防空ユニット、増加燃料タンク、無人長距離偵察機ユニット、戦闘情報ユニット等が他の戦時建造輸送船と異なっており、単艦で独航していても、自力で敵の抵抗を排除しつつ任務遂行できるだけの火力をも持たされている。

とは言え、敵の目には最初に引っ掛かるために、デブリが多数浮遊するような空域では、待ち伏せを受けやすく少なからぬ損害を受けている。


戦後残った艦は、多くが外宇宙探査用の無人探査船に改装され、帰ることのない任務につき、貴重な外宇宙についての情報を人類にもたらす地味だが壮大な活動をしたのである。


地味な苦労の多い任務に就く艦です。

また何らかの形で紹介したいです

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