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第5章

ここからは各種な戦時建造輸送船の戦闘の例を型式ごとに示す。まずは艦隊護衛艦とされた「とよなか」級の例である。


以下は、典型的な護衛船団の直衛任務についた戦時建造輸送船の戦例である。


軌道ステーションのヨコスカ2で建造、戦時建造輸送船のうち、艦隊護衛艦として就役した「とよなか」は第171護衛隊として編成され地球周回軌道上で錬成訓練をしていたが、とうとう本日、出撃命令が下ったのである。


任務は第17次輸送船団の護衛である。

目的地はかってアポロ11号が着陸した「しずかの海」にある月面最大の連合軍拠点、マルベリーである。


ここは、軌道ステーションに運び込まれたユニットをまとめて曳航、降下させいきなり設置した「基地」である。

多数の居住ユニット、発電ユニット、センサー、近距離防御ユニットなどから構成された基地は、そのあとドック設備や各種支援設備を設けて一大拠点となっている。


中華人民帝国宇宙軍も攻撃を意図したが、当時は中国側も根拠地として新北京を造成中で、余裕なく(>_<)攻撃をあきらめざる得なかった。


またまさか連合軍がほぼ完成した形でマルベリーを地球周回軌道から曳航してくるなんて想像だにしてなかったのである。


マルベリーと言うのは、第2次大戦のノルマンディ上陸作戦で使われた人工港湾からとられた名前で実際の発想もこれからとられている。


中国側も迎撃体制構築に最近までかかったから、今回からの輸送船団は激しく迎撃されることに、なりそうであった。


今回の船団は輸送船30隻を三個護衛隊で守ることになっている。

わが第171護衛隊は前衛を受け持ち、第173、176はそれぞれ側面をカバーしていく。船団はその後方、3列の縦隊で続く。


わが隊からは先行してダミーを発進させる。


このダミーは電波や赤外線でも遠距離からのセンシングでは実艦と見分けつかないようにセットされている他、さらに先をいく無人機のデータを集約、して前衛の旗艦である「とよなか」にレーザー通信で送信してくることになっている。


「ダミー1より、入電。前方1時の方向に微弱な赤外線反応あり。敵味方不明」

「副長、どう思う?」

「あの辺りには、前々回に事故で漂流した韓国のフネがあったはずです、それの可能性がありますが、この辺りで待ち受けるには絶好のポイントですな、艦長」

「思い出した、過積載で構造的に余裕がなかったところに、ミサイルの破片受けて真っ二つになった船だったな。貨物ユニットだったから切り離して助かったらしいが、おかげでそこら中にキムチのコンテナが散乱漂流してるらしいな?。」

「センサー長、機雷を仕掛けられるだけの時間はあったし、敵の偽装商船も隠れるチャンスもあったろう。無人機をさらに一つ回して探るのと、早期警戒ステーションの情報も再度当たってくれ。」

「センサー了解です」

「よし、戦闘配置だ」

昔の船ならここで各部署に駆けつけとなるが、今の本艦にはそんなスペースはない。


休憩時間以外は専用シートあたりで過ごせるような構造になっているし、艦隊全体が敵と遭遇する可能性の高いエリアに入りこんでいるから、のんびり寝てもいなかったから戦闘配置完了まであっと言うまである。

「こちら艦長だ、1時の方向の未確認赤外線反応の安全が確認できるまでこの配置だ。砲術、射撃準備」

「砲術長、準備よろし」

各部の自動化が進んでいるから、すでに戦術情報ステーション上で火器管制装置に情報は転送済み、刻々と変わる的針、的速も更新され、搭載されているレーザー砲の照準機も常に目標にロックオンしている。


「未確認目標付近より高エネルギー反応、ダミー1に向かう!」センサー長が報告する。

赤外線センサー上で、急激に広がる輝く点が出たと思うと消える。

「ダミー1消失、大口径レーザー砲の直撃。 射撃艦らしきもの、近隣のデブリに隠れた模様、航跡反応あり。」

「赤外線センサー、航跡反応からみて不明目標は月竜クラスの模様。」

「了解、この距離ならやれるな。目標捕捉次第、レーザー主砲撃ち方はじめ」

「命中、船体損傷の模様、ガスを流出させつつ離脱するようです。追いますか?」

「いや、いいだろう。まだ先は長い。予想逃走経路を司令部に打電すると共に、低視認性高加速度ミサイルを発進させておけば良い。」

「了解しました、1番、及び2番発射管より高加速度ミサイル発射しました。」


発射した艦艇からの運動エネルギーだけで接近して、至近距離から高加速で突っ込むミサイルだ。

先の一撃でもし、センサーが機能低下して発見が遅れたら、終わりであろう。


案の定、10分後、赤外線センサーに急激に激しくランダムな加速で回避を図る月竜クラスの戦闘艦と、急激にブースター吹かし突入するミサイルが現れた。

ミサイルのうち一つは迎撃され消えたがもう一つが、その高い運動エネルギーを維持したまま月竜クラスに命中。

激しく輝く点が一瞬画面に広がり消える。


「諸君、よくやった。戦闘配置を解くが、警戒は怠るな。」

「了解です」


第171護衛隊の任務は続くのである。


「とよなか」級は他国では巡洋艦クラスの装備を持つ、ハイエンドな戦時建造輸送船のバリエーションであるゆえに、低性能に抑えられた月竜クラスでは、正面からは戦えないのを証明したのであった。

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