第4章
この章では中華人民帝国宇宙軍の艦艇についてのドクトリンと艦艇の特徴を述べる
中華人民帝国宇宙軍の艦艇は、長年かけて拡張した海軍の空母機動部隊があっけなく、撃沈されて以来、すっかり変わってしまった。
空母機動部隊は確かに地球上では最強であったが、やはりその脆弱性をカバーするだけの護衛や自身の防御力を必要とするシステムであったのだ。
それがないまたは不十分な場合、空母が失われてしまうが、日米英はとっくにその経験を持ち、具体的な艦隊防御のノウハウを持つていたのだ。
しかし、机上の勉強だけで見よう見まねで陸上機を艦上戦闘機に改造したりしているだけでは、学びきれなかったのである。
中国海軍の最後の空母機動部隊が壊滅した東しな海海戦では、延々と継続する防空戦で、援護戦闘機が燃料不足のため着艦、新たな機体が発進する時に事故あり、一時的に艦隊上空ががら空きになった時に、あらゆる方向からミサイルの飽和攻撃を受けたのがきっかけであった。
この教訓から中国人民帝国宇宙軍は、極端な投資を避けるようになったのである。
つまり持ちきれないような大型艦艇ではなく、ほどほどの規模で攻撃、防御、機動力のバランスのとれた艦艇を中心にするようになったのである。
理想を追い求めた大型艦艇を少数作った挙げ句に壊滅するよりは、個別の艦艇をコンパクトにして多数の艦艇を建造することに傾いていった。
早い話が外洋艦隊をあきらめ、沿岸中心に行動するようなもんである。
まずは、月面基地を守れるような中型から小型戦闘艦艇の整備に重点をおくようになったのである。
その例として「月竜」級中型宇宙戦闘艦がある。
これも「つき」級などと同様に試作多目的輸送船を原型に、兵器類を追加した形の艦艇である。
特徴としては、レーザー砲として長距離攻撃の可能な「死光A」をスケールダウンして艦艇搭載用にしている。
この「死光A」は対衛星長距離攻撃可能なことを謳い文句にしていた固体レーザーシステムだが、射程に見合う十分な射撃統制に無理があり、早々とお蔵入りになったシステムである。
また威力はあるものの消費電力が大きいのも苦労の種であった。
そのため、この砲を積む「月竜」は他のシステムを搭載するゆとりがなく(>_<)、主として投射型兵器を搭載する「火竜」との組み合わせで、月面基地や軌道ステーションに近い空域の防御にあたるようになっている。
性能はパッとしないが、量産しやすい価格で、有効射程内なら十分な火力のある艦艇であるから、連合軍には脅威と見なされた艦艇である。
またかっての魚雷艇またはミサイル艇に相当するような「月鮫」も多数、生産配備されている。
こちらは、汎用艇つまりランチや作業艇の宇宙用。
申し訳け程度の操縦席とむき出しのフレームに兵器搭載ラックをつけて、小型の燃料タンクとエンジンを着けただけの機体である。
基地からの情報や「月竜」からの指揮で敵の予想される侵入空域に向かい、敵を発見したら荷物のミサイルを発進させて逃げ帰るのである。
ミサイルは慣性誘導されたのち、センサーが探知、識別した目標に静かに接近、必中距離まで来たところでブースターに点火、突撃する。
「月鮫」はシンプルなシステムであるため、撃破されて漂流中の宇宙船の残骸や、放棄された増加タンクなどの影に無人で係留され、キャプター機雷のように仕掛けられる場合もあったようである。
また、特務陸戦隊を潜入するためのビークルとして使ったケースもあり、様々に使われていた。
これらの艦艇はさらに様々な無人兵器、機雷などと組み合わせられ連合軍の艦艇の航海を気の抜けない危険な戦闘航海としていたのである。
中華人民帝国宇宙軍は海軍での失敗を糧に、中国伝統の沿岸海軍を選んだ。
これがどう連合軍と戦っていたのか、また連合軍はどう対応したか次章から描いていく