ユータとユーコ
「あ、雨降ってきた」
「うそ! 今日あたし予定あったのにー」
「え、なに?」
「DVDレンタルに行く」
「めっちゃどうでもいいじゃん」
「良くないよ! すごく楽しみにしてたDVDが今日レンタルリリースだったんだもん!」
「ああ、隅田川花火大会のDVDな」
「楽しみにしないから! そんなんリリース待ち望むほど楽しみにする類のやつじゃないから! なんとなく棚から手に取ってちょっとした気まぐれでレンタルして家で観て結局借りなきゃ良かったと思う的なやつだからそれは!」
「え、お前福知山花火大会派?」
「花火大会の種類云々じゃないよ! 花火をDVDで観るということ自体のがっかり感のことを言ってるから! あたし花火大会のDVDなんて金輪際借りないから!」
「やっぱ花火は生で見ないとな」
「うんそう……いやそういう話をしたいわけでもなくて!」
「え?」
「いや、だから観たいDVDがリリースする日だったのに雨が降ってレンタルショップ行けないからショックって話じゃん」
「それくらい、別に傘さして行きゃいいじゃん」
「やだよー、わざわざ雨の中外出するなんて」
「雨は嫌か」
「嫌だよー」
「そうだよな、やっぱり雨の日は花火も中止になっちゃうし……」
「あたしが嫌ってる理由そこじゃないよ! なんでまた花火の話に戻すの!? もう花火いいから!」
「花火いいの?」
「もういいから!」
「んでお前、結局何のDVDが観たいの?」
「映画だよ。去年公開の、すごく話題になった恋愛のやつ」
「ああーあれか」
「憶えてる?」
「憶えてるよ。あの、花火師とその幼馴染の恋愛模様を描いた……」
「そんな映画ない! なんでまた花火出すの!? もうあんたが花火ばっかり言うからあたし花火嫌いになってきたわ!」
「映画の撮影が終わった後、打ち上げに行ったっていう……」
「飲み会的な打ち上げか花火の打ち上げかわかんないそれ! 超ややこしい!」
「花火の打ち上げ」
「花火のなの!? なんで役柄超えて本当に打ち上げやっちゃってんの!?」
「その様子をDVDの映像特典にするとかって話で」
「DVDで花火はだめだから! 百パーがっかりするから! その話もさっきしたから! もういいよ花火は! もうあたし花火嫌い! 花火死ね!」
「嫌いなの? 花火」
「嫌い嫌い大嫌い超憎んでる!」
「そうか……今日、近くで花火大会やるんだけどな……」
「え?」
「俺、友子と行きたかったな……」
「え……」
「でもしょうがないか……嫌いなんだもんな……さっき死ねとまで言ってたもんな……」
「あの……有太」
「え、何?」
「さっきはちょっと言い過ぎたよ……本当はそんなに嫌いじゃないよ、花火」
「そうなの?」
「うん。あたしも……有太と花火見に行きたい」
「ほんと? 良かった」
「えへへ」
「……あ」
「?」
「そういえば今日雨降ってるから中止だわ」
「死ねぇぇ!」