10/10
make me sad
静かな雨に体の熱が奪われ、僕は目を覚ました。
そこは学校の屋上だった。一羽のアルビノのカラスが、銃弾を胸に受けて死んでいる。
僕の右手には空になった注射器が握られていた、無意識の内に抑制剤を首に打っていたようだ。
そっと立ち上がる。
幻覚は一切見えない、日が沈んだため汚染物質が不活性化しているのだろう。
僕は体に付いたゴミを払い、投げ捨てられていた銃を拾い上げる。
そして屋上を後にした。
崩壊した校舎の中も、もう幻覚に惑わされることなく、足早に通り抜けていく。
校舎の様子や、当時の様子の残滓に、僕の感情が刺激されることはもうなかった。
ものの五分で校舎から脱出できた。
雨は先ほどより弱くなり、かすかに僕の体を濡らすだけに収まっている。
足取りが軽い、思考は非常にクリアだ。
僕の心に巣くっていたわだかまりは、この雨の中の涙のように、全て溶けて流されていった。