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本日二話目の投稿です。
時間を見つけては神殿を訪れ、情報収集に勤しみました。そのお陰で道筋が見えてきました。目的地に行くまでは辻馬車に乗ればいい事。そのためには、貨幣を自分で準備しておかなければなりません。購入した服は馭者のロブが払ってくれたのでその方法も学ぶ必要がありますね。
それと、修道女になる以外は、住み込みで働くこともあるそうです。商業区というところに行けば、そういった店員がいるそうなのです。ただし、店員の募集がなければ無理ですけどね。もっと手広く探したければ”ギルド”に登録すればよいとのこと。でも、この場合は手に職がある者を優先するため、ぽっと出の私では可能性が低いようです。ですから、住み込みをまず当たるしかありませんね。
「おねえちゃん! おねえちゃんも一緒に行こう!」
子ども達が輝く笑顔で私を誘ってくれます。何度も行くうちに、講義を受けに来る子ども達と仲良くなりました。時には本を読んであげたり、一緒に遊んだり。
このお誘いは、私にとっては渡りに船。今からシスターが商業区へ買い物に行くそうなのです。子ども達はそれについて行くようですね。
「ええ。一緒に行きましょう」
子ども達が喜んでくれます。私としても初めての事でドキドキなのですよ!
両手に子ども達と手を繋いで商業区に徒歩で向かいました。馬車で行けば近くでしょうが、普段歩きなれていないことが仇になってしまったようです。ですが、そうも言ってはいられません。私の未来の為なのですから。
――初めて訪れた商業区では目を瞠ることばかりでした。沢山並べられた商品。賑わう声。店の商品を声高に伝える店員達。市井では、素朴なお菓子などが流行っているようです。予てより考えていた貨幣を手に入れていた私は、シスターの買い物風景を真似て子ども達に購入してあげました。
これで、貨幣価値がわかりました。最初金貨を出した時、店員から驚かれてしまいました。市井では銀貨や銅貨が流通しているようです。この事を子どもたちに見られずに済んでよかったですよ。金貨はどうやら貴族が使う物の様ですから……。
貨幣は、執事に用意してもらったのです。貨幣の使い方も勉強したいからと、もっともな理由をつけて納得してもらいました。今思えば、一度目の人生では、執事に纏まった金額を用意してもらったから足が付いたのかもしれません。それとも、男達を雇うのに手伝わせた商会に手引きしてもらった男からでしょうか――愚かなことをしたと今でも悔やんでいます……投獄はもう……だから、二度と道を踏み外さないように。
購入したお菓子をもぐもぐさせながら歩く子ども達を気にしながらも、私は店員募集の張り紙というものを探していました。ですが…残念なことになかなか見つかりません。職に就く選択肢もままならないようです。たとえ募集があったとしても、何も経験がない私のような者を受け入れてくれるところはあるのでしょうか。現実は厳しいようですね。
年が変わり16歳を迎え、社交シーズンである夏が到来し、とうとうデヴュタントの日が近づいてきました。
公爵令嬢としての付き合いもちゃんとこなしています。お母様が開かれるお茶会に参加したり、招待されたお茶会にも参加したり。二回の人生と同じように。
殿下との交流も無難にこなしていました。とは言っても、二人だけの交流というものはなく、必ず誰かが同席しています。お兄様がいないときはヴァーン様が。パトリック様が近衛騎士となられると、いつも護衛に張り付いておられます。因みにヴァーン様はお兄様と同じ年で、パトリック様は私より四つ上です。
前の人生と何ら変わりません。そう、無難にこなしていればいいのです。未来はわかっていますから。
後は、冤罪による追放を待つだけですね――――。