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時間は進み、イリアーヌが15歳になったところからのお話です。


 月日が流れ季節が移り変わり、15歳になった私は、王妃教育を終え自由になった時間を使って予てより考えていた手立てを確認するためにある場所に来ていました。

 お母様に外出の許可を求めれば、最初は渋っていましたけど承諾してくれました。行き先が『神殿』だからでしょう。馭者に一番近い神殿へと伝えれば、難なく連れて行ってくれました。護衛兼馭者のロブを神殿の敷地内に入らずに近くに停めた馬車に待たせて、初めての神殿に踏み入ります。


 神の像が祀られた聖堂は厳かな雰囲気が漂っていましたが、ふと、私の耳は別の場所からの音を拾っていました。その声のする方へ行ってみれば、小さな子ども達がわいわいと楽しげにシスターから簡単な文字を教わっているようです。

 私に気づいたシスターが目礼をしてこられました。

 すると、背後から別のシスターが声をかけてくださいました。

「この子達はこの神殿の近くの子ども達なのです。ここではこのように教育を施しているのですよ」

「そうなんですね。私は初めて来ました」

「そうでしたか」

「あの、お尋ねしたいことがあるのですが」

「ええ、構いませんよ」

 年配のシスターは優しい笑みを湛えて応対してくれます。

「シスターとは、誰でもなれるのでしょうか?」

「それは、貴女が、ということでしょうか?」

「あ、いえ、直接的な質問ではないのですが、知りたいと思ったのです」

「そうですか。そうですねぇ、シスターになる女性は大半の者が行き場をなくした者達なのですよ。受け入れが可能であれば、どなたでもシスターとして入所できます。一通りの手続きが済んで、中央神殿に登録すればシスターになれますよ」

「そうなのですね。この王都には、どれくらいの数の神殿がありますか?」

「王都だけで言えば、東西南北の四か所があります。ここは南に位置する神殿ですね。北が中央神殿です」

「わかりました。ありがとうございました」

「はい」

 それからは神殿での作法を教えてもらい、もう一度子どもたちの講義風景を見て神殿を後にしました。


 予てから考えていた手立てというのは、修道女のことです。八年前にミネットから教えてもらっていたこと。身寄りのない女性達は何処へ行くのかと。神殿や修道院の修道女になるのが一番無難だと教わったのです。その方法を聞いてみましたが、彼女は知らなかったので直接神殿を訪れて聞いてみたいと思っていました。


 私の未来の展望が開けてきたように思います。これから、もっと他に何か道はあるのか調べていくつもりです。平民は、何ができれば俗世で生きていけるのでしょうか?家を追い出された時、どうやれば攫われずに目的地まで行けるかも考えないといけませんね。失敗すれば、また娼館行きですから。二度目の人生で売られた娼館でない可能性もありますから気を付けないと。


 ――運命のデヴュタントまで後一年。断罪されるまで二年を切りました。時間は待ってくれませんから、最良の人生を歩めるよう努力します。



 +++

『若様、ご報告がございます』

『何だ』

『はい、お嬢様の事にございます』

『リーナ?』

『本日の午後、神殿へ外出になられました』

『神殿? そこで何をしていた』

『私めは馬車で待っているように言われましたので中の様子はわかりかねますが、途中で服を購入されてから訪れになられました』

『服?』

『はい。平民が着るような服に着替えておられました』

『わかった。今度はあいつに気付かれないように見張っていろ。下がれ』

『はい』


(――あいつは、何をしているのだ?)

 +++




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本日は、あと二話準備中です。

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