その後のお話 「魅力的な勧誘」
完結ですよ〜((>ω<。))
日本に戻って数ヶ月。私は何事もなく順調に過ごしていた。
今日は妹が友達の家に泊まりに行ったので、家に一人という寂しい状況以外には至って普通だ。
「日記……どうしようかな」
今現在部屋に篭っている私は、日記を手に取り考えていた。ゲームの世界に行っていた時間についてだ。
日記を見れば、ゲームの世界に行っていた時のことを思い出すことは出来る。断片的にではあるが。
でも、ゲームの世界に閉じこめられたという情報は日に日に私の頭から失われかけていた。時間のせいではない。何故か霧がかかったように思い出せないのだ。
ただ、覚えているのは元々私一人。ほかの人達は、全員違う記憶が植え付けられている。もちろん、私にもだ。ゲームの世界にいた時間は私ではない誰かが私の体を使って活動していた。それだけは分かる。
なにしろ、私という存在に戻ってから、絶対に出来ないと思っていた学校の勉強が不思議にも出来ているのだから。というよりも、昔より出来ているくらい。しかも、私じゃない誰かが作ったはずの友達もいる。順調に進む日常が私は怖い。
「この指輪……あの世界とやっぱり関係あるよねぇ……」
日記に挟まっていた指輪。この存在に気付いたのは随分と前だが、未だ使い方がわからず日記に挟んだままだ。
「ま、指輪はいつか分かるとして、とにかくゲームでもしますか!」
ゲームに閉じ込められるという事件があっても尚、私はゲームを楽しんでいた。今も、ゲームをしようとは思っている。けど、体が動かない。どうしても指輪のことが頭から離れないのだ。
「ぐぬぬ……とりあえず解決法も分からないし指に嵌めてみるか……はぁ」
独り言のように呟く。何が起きるか分からないから怖いのだ。今は一人だから、なにか起きても助けてくれる人はいない。独り言が出るのは心のどこかで助けを求めているのかもしれない。
「…………」
指輪を嵌め、少しの時間が経つが、特にこれといった変化はなかった。ただ一つ問題がある。この指輪外れないのだ。どうやっても指から抜けない。呪われたるんじゃないかと思ってしまうほどにだ。
「───汝、違う世界を求めるか?」
脳に直接響くように声が聞こえた。私以外に誰もいない家で声が聞こえるのは不自然にも程がある。それに、喋った言葉も少しおかしい。
「あの、どなたですか?」
「───汝、今の世界を捨て、我と共に他の世界を求めるか?」
どうやら私の話は聞いてくれないらしい。
でも、こいつの話は少しだけ気になる。ゲームの世界に行ったきり、何故か普通の日常が退屈なのだ。心が麻痺しているのか、冒険を求めているのか分からないが、少しだけつまらない。
「───他の世界から来た使い魔。天使となりて全てを救いし者を見つけにここまで来た。どうやら、汝は我の目的通りの人物らしい。どうだ? 他の世界に行ってみる気はないか?」
「あなたは、もしかして、この指輪?」
「───そうだ。汝が世界を救い、元の世界へ戻った時、我は共に付いてきた。だが、そろそろ精神が保てない。さぁどうする? 他の世界を望むか?」
「いえ。別に大丈夫です。この世界で満足するんで。それよりも、あなたを見てみたいんですけど、指輪から変化出来ないの?」
「───ふむ。我の誘いを断るか。良いだろう。我が本当の姿を見て、跪くがいい。そして、我と共に来るがいい!」
私が一緒に来てくれないことがどうしても嫌だったのか、普通に姿を見せてくれるらしい。なんか、ちょっとだけ可愛い。
「……ん?」
少しの静寂が流れ、突如として指輪は光りだした。眩しくてよく見えなかったが、どうやら指輪からなにかが出てきたようだ。
「汝。我と契約せよ。さすれば、いついかなる時も他の世界へと旅立つ権利を得ることが出来る」
言葉と共に光が止み、中から見えたのは真っ白でモフモフしている、ちょっと小さめの……
「って狐!? なんで狐!? 偉そうな口叩いてたのにこんなちっちゃいの!?」
「───五月蝿い! 我だって好き好んでこの形で生まれた訳では無い! 運命には逆らえなかったのだ!!」
一人だった家の空間に、新たな動物が増えた。それも、喋れる謎の狐。必死に私をどこかへ連れてこうとする誘拐犯。
ゲームの世界が終わったと思ったら、また楽しそうな事が始まりそうになる。
私の頭はとりあえず話を整理することでいっぱいになっていた。
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話の整理が終わり、私は口を開いた。
「さてと、そろそろ本題に入ろっか。で、私をどうしたいの?」
ゲームの世界は辛かったけどちょっとだけ楽しかった。だから、もう一度あのスリルやドキドキを味わえると思うとちょっとだけ心が弾む。
「そうだな。汝をどうしたいとかではなく、一緒に他の世界へと行かないかと誘っているのだ。どうだ? 前回は多数の人を救うという責任があったが、今回は汝一人だぞ? 仲間を作らなければ救うということもなく、自由に生きれる。さぁ、どうする?」
確かに、こいつの言うとおり、一人で色んな世界へ行けるのはいいのかもしれない。
でも、面白いことするなら、私は花奈と妹としたい。だから、一人で他の世界とやらに行くのは嫌だ。
「それ、他の人も連れてけない? それに、さすがにずっとは嫌だから行きたい時だけ行くみたいな事出来ないの?」
全部私のわがまま。でも、この提案が通るなら普通に行ってもいい。冒険したい時だけ他の世界へと行って遊んで、普段は日本で暮らす。それに花奈と妹も一緒に行ければ最高すぎる。
「そうだな。二人までなら可能だろう。それと、自由に行き来したいというのだな? それならば簡単だ。その指輪が大体その機能を果たしてくれる。汝が願った、ゲームの世界へと旅立ち、戻りたいと思えば戻れる。ただ、注意するのが、他の世界で死んだ場合だ。これは、本当の死となり、こちらの世界でも死ぬ事となるぞ」
「他にデメリットとかないの?」
どう考えても、今の説明だけだとメリットしかない。他の世界で死んだら、こっちでも死ぬのはなんとなく分かるし、危ない所には行かなければいい。
更には、私の行きたい場所に行けるなら、ゲームの世界にも飛べるし、漫画や小説、アニメの世界にだって行けるということだ。それは正直おかしいと思ってしまう。
「そうだな。一つ言えるとすれば、悪夢を永遠と見るはめになるという事だ。その指輪を嵌めている限り、悪夢は離れない。やはり、良いことには悪いことがつきものなのだよ」
「何それ。この指輪クソじゃん。いらない! 返す! 捨てといて!」
「本当に良いのか? 他の世界へと行けるチャンスだぞ? ただのゲームで満足出来るのか?」
「いや、まぁ、実際には行ってないけど、行った気になれるゲームが今どきあるからね。それで満足できそうだしいいや」
私が言っているのは、やはりVRの話だ。正直、VRを使えば、まるで実際にゲームに入ったかのようになるし、冒険だって出来る。永遠と悪夢を見るみたいなデメリットもないし、こっちで満足出来るだろう。
「ふむ。汝がそう言うのなら諦めよう。また我と会いたい時は日記を開き、念じるがいい。今日のことは我が自動的に日記に書いておく。この日記……大切にするのだぞ」
それだけ言い、狐は消えてしまった。でも、言葉通り、日記には今回のことが達筆で書いてある。
あの狐がどういう生物なのか全然分からないけど、今日のことは夢だと思っとけば良いだろう。話も夢みたいな話だったし。
「さてと、そろそろ寝ないとやばい気もするけど、ゲームしよっかな! なんかまたVRゲームやりたくなってきたし!」
私はベッドに寝転び、機会を頭に着け、目を閉じる。
今回の夢のような話はちょっとだけ残念だったけど、永遠と毎日悪夢を見続けるよりはこのVRを選んで正解だっただろう。
だって、VRMMOゲームをすれば、少しの間だけまるで別世界に行ったかのような''夢"を見ることが出来るんだから。
これで終わりです!
なんか微妙な感じになってるかもしれませんが、というか、個人的にまだ続けようかなぁとか、番外編もっと書こうかなとか考えたんですけど、二作を連載するのは難しいかなって思ってやめました!
これからはもう一つの連載している作品をよろしくお願いします(*・ω・)*_ _))ペコリン
二作同時に書ける気がするので、番外編書くかもしれません……(ΦωΦ)フフフ…
番外編書くことにしました!物語自体は完結しましたが、宜しくお願いします!