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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
最終章 『現実の世界』
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最終話 「天使の救い」

一応最終話です。

 過去の改変。

 改変によって人々を救わなければならない。

 果たして私に出来るのだろうか。怖い。ただの高校生に全ての人を救うなんて出来るのかな。今更だけど、凄く不安になってしまう。


「ここは誰の世界?」


 分からない。全てを救うということは、この世界に来た元の世界の人の過去に入り、嫌な記憶から救わなきゃいけないってこと。

 見ず知らずの人の過去に入るのは少しだけ戸惑う。どうすればいいか分からないし、私をどう思うかも分からない。


「あぁ、あなたが天使か……私の悩みをどうか聞いてください……」


 驚きしかなかった。どうやら私はみんなから見たら天使に見えるらしい。これは、あれかな? 天界に行った時に貰った大きな羽根のお陰なのかな。


「それで、私はどうすれば……」


「貴方はどうか私の愚痴を聞いてください……」


 ゲームをやる人は大抵ストレスを抱えていた人だった。仕事のストレスが大半で、たまに恋の話やらもあった。


「本当に聞いてるだけであなたは救われるの?」


「はい! ストレスは聞いてもらうのも良いのですよ!」


 その言葉を聞き、私は素直に話し合った。多少とも聞くのは辛かったけど、最後まで聞き、また私は別れを告げ違う人の元へと旅立つ。笑顔で私にお礼を言ってくる人もを見ると少しだけ何故か嬉しくなってしまった。


 それから、私はあらゆる人の元へと向かった。大体は話を聞き、ストレスを無くすだけで済んだが、時には膝枕をして欲しいや、抱きしめて欲しいなどという事もあった。救われるならと、私は全て応じたが、どうやら私の心もそろそろ限界。


「なんか、もう疲れちゃったな……」


 勝手に口からこぼれる愚痴。色んな人からの言葉を聞きすぎた結果、私の心は既に壊れかけていた。まだまだ沢山救わなきゃいけないってのに、身体が拒否している気がする。それでも、過去への旅は終わらない。身体が拒否しても、無理やり続く。だから、勇者は耐えれなかったんだろう。一人をこの方法で救うのは簡単だけど、大人数だと辛い。身をもって分かってしまった。


「おまえは……そうか。やはり来たか。待ちわびていた。ようやく、あの世界をクリアしようとするものが現れたということだな」


 今回の人はどうやらおかしいらしい。過去に行ったはずなのに、この人は今の話をしている。一体どうゆう事だ?


「お前に俺は大事なことを忠告してやろう。まず、お前の願いは……そうだな。双方の世界を救いたいとかだろうな。それを叶える方法についてだ。どうだ、知りたいか?」


 正直な話、今の私は半ばロボットと化している。世界を救うのもなんかどうでもいい気がするし、ただ話を聞いて救って早く終わりたい。だから、知りたいといえば知りたいがめんどくさいという感情が表立ってしまう。


「ふむ。そうか。では、一応念のため教えといてやろう。まず、ゲームの世界についてだが、これは簡単だ。ここにゲーム自体のデータのバックアップがある。これを使い、今のデータをこっちに移し替えてくれ」


 言われた通りに私は動く。過去の世界というのに、今現在を救おうとしているこの人は一体誰なんだろうか。ゲームのバックアップとか言ってるし、開発者かなにかなんだろう。


「ふむ。やはりパソコンは使えるか。なら大丈夫だな。お前は引き続き、ゲームに入ってしまった人を救ってくれ。あ、先に言っとくが、今君と私がいるのは過去ではない。私の部屋だ。開発者たる私が無理やりながら呼ばせてもらった。どうやってやったなどは聞かないでくれ、企業秘密だ」


 やっぱり開発者だった。そして、今現在の話をしているのも、今ここが過去の世界じゃないからだった。でも、開発者はなぜ自分の世界を壊そうとしてるんだろ。私に協力までして……


「貴方はどうして私に協力を?」


「はははっ。それはまぁ、そうだね。飽きたから。とだけ言っておこう。私は飽き性でね。今なお次のゲームを考えているんだ。次は任意制で登録し、ゲームの世界へ旅立てるという世界の開発中だ。だから、私が今持っているゲームはいらないのだよ。救えるのなら、さすがの私も協力しよう。とは言っても、プログラムには逆らえんがな」


「そう、ですか。本当にこのデータの移し終わりでゲームの世界の人々は救えるんですか?」


「もちろんだとも。これは私が保証しよう。あ、そうだ。君だけ任意的にその世界に言って確認出来るようなシステムを作っておくよ。元の世界へ戻ったら自宅に届いているだろう。君が壊れてなければ、だけどね」


「……そうですか」


 データが移し終わったのを見て、私はUSBを引き抜き、ポケットへとしまった。

 そろそろまた過去の旅が始まるだろう。そしたら本格的に私は壊れる。精神崩壊で死ぬかもしれない。


「引き続き頑張ってくれたまえ」


 最後に開発者から言葉を聞き、私はまた飛ばされた。心が不安定なまま、また救いを求めている人の元に。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 そこからの旅も長かった。心が壊れる寸前でも終わらない。見ず知らずの人から話を聞き、また旅立つ。本当に狂いそうだった。というよりも、半ば狂っていたと思う。

 それでも、次が最後だった。フラフラと歩きながら最後の人の元へと向かう。どうやら飛ばされた場所は家の中らしい。


「はぁ。遠いなぁ。早く会って話して終わりたいのに」


 最後。ということもあってか、ほんの少しだけ心に余裕はあるものの、イライラが治まらない。


「お姉ちゃんって天使だったの?」


 後ろから声が聞こえる。桜の声だ。


「最後は桜……か」


 周りを見渡してなくて気付いていなかったが、この家は私たちが暮らしていた家だった。そして、最後の相手は桜。


「お姉ちゃん。ありがとね。私たちのために頑張ってくれて。お姉ちゃんは充分頑張ったよ。だから、もう休んでいいの。後は私たちだけで頑張れるから」


「でも! それじゃ、みんな戻れない……」


「ちょっとだけ私が膝枕してあげる。ずっと寝てないでしょ? 寝ていいよ」


「桜。ありがと……」


 久しぶりに桜の肌に触れ、少し泣いてしまった。バレないように顔を傾け、下へと向ける。


「おやすみなさい」


 桜の優しい声と、疲れが溜まっていた事もあって、私はすぐ寝てしまった。救う立場の人が、救われてしまった。


「……はっ! ごめん桜。寝すぎた!」


『寝すぎた? あなたの心は丈夫ですね。ここまでの人を救って余裕を保てるなんて』


 私が目覚めた時、桜はいなかった。むしろ、過去の世界ではなく、ゲームの中の世界に戻っている。


「私は終わらせることが出来たの?」


『もちろんですよ。この人たちを見てください』


 男の横、後ろにはたくさんの人の影がある。これが私の救った人の数だと思うとものすごく膨大だった。


「あの、この世界に死んでなくて残った人はどうなるんですか?」


『そうですね。少なからず、残った人はいます。残った人には、きっと今、私の知り合いが話し合いに行ってるでしょう。安心してください』


「良かった。これで終われるんだ……」


『では、あなたに最後に問いますね。貴方は元の世界へ戻りたいですか?』


「はい!!!」


 私は力強く叫んだ。

 その瞬間、男は笑顔でこちらを見つめ、辺りは光に包まれた。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「おねーちゃーん!! 早く起きて!!」


 ゲームの世界から戻った私達は、普通の日常に戻っていた。というよりも、私以外ゲームの世界での記憶を持っていないらしい。みんな、何も覚えていない。


「今行くー!!」


「花奈ちゃんも待ってるからね〜!」


「はいよー」


 世界を救うことが出来た。一人の女子高生にはとてつもなく大きい功績かもしれない。もちろん、その事実を知っているのは私だけ。

 それでもいい気がする。確かに、元の世界へ戻った直後は、心に負担を掛けすぎてほとんど寝てしまっていたけど、今はだいぶ治ったし、花奈達とも楽しく過ごせている。


「あー、窓開けっ放しで寝ちゃってたかぁ……」


 窓へと近付き、狙っていたかのように風が私を襲った。


「ちょ、髪で前が……」


 風の音共に、机の上に置いてあった日記がめくれていく。


「これって……」


 風が止み、日記は一つのページを示していた。それは、私が初めてゲームを始める前に見たページ。花奈と喧嘩したと書いてあったはずのページ。


「やっぱり、過去は変わってるんだね……」


 そこには、以前とは違い、仲のいい親友同士が楽しく遊んだという記録だけが書かれている。喧嘩したなんて言葉ない。私と花奈は一度も離れてないということになっているのだ。


「ちょっとだけ寂しい気もするなぁ」


 あの事件があったからこそ、私と花奈はあの時さらに仲良くなれた気がする。それが無くなった今、少しだけ寂しい。けど、今も仲悪いわけでもなく、むしろもっと仲が良いと言える。これはこれで嬉しいので良しとしよう。


「お姉ちゃんまだー!?」


「あ、ちょ、今行く!」


 私が机から離れ、部屋から出て扉を閉める時、机の上には絶対になかったはずの赤い指輪が太陽に照らされ、輝いていたのだった。

あ、番外編とか普通に書く予定ですよ。


ただ、一応このゲームの世界は終わったということです。


あと、こっからは番外編書くので、不定期になりまーす。今書いてる新作メインにする予定なので〜

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