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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
最終章 『現実の世界』

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八十話 「騎士の末路」

 ディアボロとの戦闘が始まった時、ジークフリートは既にディアボロに先制攻撃を仕掛けるため大剣を引き抜き、眼前へと迫っていた。


「ふむふむ。まぁそんなに急かさなくてもいいじゃないですか」


「あ? お前が居なくなれば俺は帰れるんだよ。ってわけで早く死んでくれ」


「ジークフリート! ちょっと横ずれて!」


「承知!」


 ジークフリートを横にずらし、敵に対し、一直線の状況を作る。これならば、私でも当たるだろう。威力は別として、まずは当てれるかどうかだ。


「一本目!」


 まずはアイスアローを放つ。初めから最大火力で放ってもよかったが、さすがに今の私では負担が大きすぎた。ただ、これだと威力に問題が生じる。


「なんですかこれ。こんなのが私に当たると思ってるんですか?」


「はぁ。やっぱりダメかぁ。私が弱いからだよねぇ……」


「マスター! 下がってください! 敵が来ます!!」


 私はアイスアローが通じなかった事で他の魔法を試そうとするが、果たしてそれも通じるか分からない。

 そして、その隙を突かれ敵の攻撃に気付かずジークフリートに庇ってもらってしまった。


「あ、ありがと……」


「いえ、騎士として当然ですが、もう少し周りを見ていただければ嬉しいです」


「ごめん。もうちょっと周りを見てから魔法考えることにする。だから、前線はやっぱり任せていい?」


「もちろんです! 騎士として、一人の男としてお任せ下さい。絶対に貴方には傷一つつけさせません。前線は全て任せてください!」


「ほらほら、喋ってる暇はないですよ?」


 私らが喋っていると、前からとてつもない物量の魔法弾? が飛んできた。当然、私がくらえば死を覚悟するレベルの威力はあるだろう。


「では、早速守らせていただきます。『セイントウォール!』」


 魔法弾が私に当たる直前、私らの前に薄いシールドのようなものが展開された。明らかに薄く、割れそうな気がするが、それは表面上だけ。中から見えている私にはわかるが、並大抵の攻撃では破ることすら出来ないだろう。


「まぁこれ位は防ぎますか。……むっ、そこですね!」


「くっ……何故ですか。なぜ、私の場所が……」


「貴方程度ならすぐ分かるのですよ」


「隙あり!! 」


「ぐはっ……やりますね……そのコンビネーション。少しだけ賞賛しましょう。まさか、隠れている味方を囮にするとは……」


 私がステータスから魔法を選んでいる時、ジークフリートとキアランは見事にダメージを与えていた。とゆうか、私でも驚きだ。キアランを囮にするなんて……


「さて、そろそろ私の本気を見せると……」


「その前にお前は死ぬ時間だ。『レイジングテンペスト!』」


 ディアボロが何かを喋った瞬間、ジークフリートはスキルを唱えた。その瞬間ディアボロに雷が落ち、ジークフリートはその瞬間を見逃さず、剣戟を加えていた。


「まさか、こんな雑魚どもに私が負けるとは……」


 ジークフリートが強すぎた結果、ディアボロは簡単に倒されてしまった。もはや、私は何もしていない。そして、実はいうと、キアランもほとんどなにもして……いや、キアランは相手の注意を引くという大事なことをしていた。それなのに私ときたら……


「マスター。本当に申し訳ないのですが、ここでお別れです。そして、きっともう二度と本物の貴方と私は会えないのでしょう。今回が一度きりの奇跡。だから、私も本気を出しました。既に身体もボロボロで倒れそうです。ですが、最後にこの言葉を……マスター。出会えて良かったです。また、いつか会いましょう」


私が一人で悲しんでいるうちに、ジークフリートは光となって消えてしまった。私からは言いたい事言えなかったのに、自分だけ言って消えてしまった。


「ジークフリート……そうゆうのはずるいよ……」


ジークフリートともうこの世界で会えない。それは私がこの世界からそろそろ消えるということを意味しているのだろうか。

だが、結果として私は別れを言えずにジークフリートと会えなくなった。その事だけで涙が溢れてくる。


「マスター。私もそろそろ消えてしまいそうです。今回は、本当に申し訳ありません。私は何もせず、友人に任せ、ただ隠れてた。いっそのこと今死んだ方がいいのかもしれない。騎士として、マスターを守るべき立場として守ろうとせず隠れていた。これは重罪でしょう」


「大丈夫。大丈夫だから。キアランも、もうゆっくり休んで……私、一人でも生きていけるから……」


「申し訳ありません。私もジークフリートと同じく、もう二度とあなたとこの世界で会えない。私は、貴方みたいな最高のマスターに出会えたことを感謝します……」


「私も。ほんとに、ありがとね! 」


私の言葉に最後頷いたキアランも光となり消えてしまった。

残されたのは静寂と、四天王を倒したことにより現れた扉。


「進まなきゃ……!」


ここで一人になったから挫ける訳にはいかない。ここまで来たんだから、私は進まなければ行けない義務がある。ジークフリートとキアランのため、桜、エミリ、他にもたくさんの人々の為にも進まなきゃいけない。


「次の扉にも強い人が居るのかな……」


少しだけ不安に思った。身体は震えるし、逃げたいという気持ちも溢れてくる。当然、今のような四天王クラスの力を持った敵が現れたら、今度こそ私は死ぬ。


「死ぬのは嫌だなぁ……」


最後に後ろを振り向き、キアランたちが消えた場所を見る。

そこで私はふと気付いてしまった。右端の壁。そこだけ何か違うことに。


「何かあるのかな」


まるで誘われるかのように私は歩いていた。恐怖よりも好奇心。何故か、私は好奇心に勝てない。人間にとって好奇心は最高の敵だと私は思う。


遂に私は壁の前へと立ち、明らかに壊せそうな壁を一回殴る。もはや、痛みなんて関係ない。早く中が見たかったのだ。


「だ、誰だ?」


「誰かいる!?」


「その声は……ははっ。まさかな。この俺に限って幻聴が聞こえてくるとは。そろそろ死ぬ時かもしれん」


「大丈夫!? 早く! 目を開けて! 生きてる!?」


「雪。お前は、どうして私の頭に出てくるのだ? 遂には言葉も放ち、私の心を奮わせる。生きたいという欲を私に出させるのはなぜだ?」


「そんなの分かんないよ!! それよりも早く! こっちに来て!」


「あぁ。これは幻聴ではないのか。では、俺ももう一度だけ運命を信じてみよう。既に俺の目的は破滅した。最後に、雪を見れれば満足して死ねる」


暗闇の中、私のことを執行に喋るこの相手は一体誰なのだろうか。私も声は聞き覚えがあるが、絶対にここには居ないと思っている。いる訳がない。だから、誰か分からない。


「あぁ。久しぶりの光だ」


私の肩を借り、ようやく光の元に姿を現したのは、私が会いたいと願っていた人。絶対にここには居ないと思っていたはずの人が、今私の目の前で死にかけているのだった。

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