七十七話 「まずは火山へ」
天界から戻り数十分後、私達は既に村を出ていた。
村の人達からは、まだ残って欲しいと言われていたが、私達、いや、私がどうしても出たいという意思を伝えたら、村の食料と水を大量にくれ、見送ってくれた。
「俺はまだ休みたかったのにな〜」
「一人で戻れば? 私と雪はダンジョンを攻略しに行くけどあんたは村で待機してれば?」
「い、いや。俺も行くし! なんか二人共弱そうだからな。しょうがな〜く、俺が守ってやるよ」
「雪は私が守るから良いですよ〜だ!」
「まぁまぁ二人共。そんな調子じゃこの先一緒に旅していけないよ?……そうだ! 仲良くなるにはまずステータス見せてくれないかな? まずはレギスから!」
単純に私がレギスのステータスを見たかったからとかそうゆう理由じゃないからね。うん。違う。ちょこーっと気になってたけど、ほんと、ちょこっとだからね?
「ま、ステータスなんて見られても困らねえし、見せてやるよ。ほらよ」
レギスからステータス画面を見せられ、私は驚いた。
レギス
レベル:142
HP:358
MP:0
スタミナ:256(+38)
STR:342(+241)
VIT:0(+34)
DEX:124
AGI:186(+100)
INT:0
LUCK:10
CHARM:0
武器:グラッカラス
頭:
胴:黒無のローブ
腕:剣闘士の手袋
腰:剣闘士の腰巻
足:ブーツ
アクセサリー:瞬速の指輪
スキル: 【危険察知】
能力振り分けポイント:1340
取得可能スキル:【インパクト】【一文字】【ブレイブスラッシュ】【桜吹雪】【一閃】【兜割り】
「れ、レギス? なんであんたスキル取らないの?」
私がこのステータスを見て思ったことは、ホントに沢山ある。まず、こいつがここまで強いとは思わなかった。それに、ステータスが明らかに攻撃特化だ。防御力に至っては初期値0から変わってないのだろう。
「ん、あぁ。MPがないからな。スキル取っても使えねえんだよ。まぁ元々持ってたスキルの一つだけ使えるんだけどね」
「あんた。スキルもなしにここまでやって来たの?」
さすがの花奈も驚いているようだ。とゆうか、驚くのが普通だ。だって、スキルもないということは、純粋に力勝負。剣の腕だって、スキルを使えばある程度までは上がるが、初心者だと相当難しいだろう。ってことは……
「レギス、もしかしてあなたなら国の騎士団長にでもなれるんじゃないの?」
剣の腕は相当のものだろうし、こいつなら騎士団長でもやれるだろう。レベル的にもね。
「いや、何回か勧誘はされてたんだけどね。なにせ、俺って強いからさ、スキルなくてもある程度勝てるんだよ。でも、騎士団長ってめんどくさそうじゃん? って理由で楽しそうなこっちに付いていくことにしたの!」
「お、おう。そ、それじゃあダンジョン探すか」
レギスが強いことはわかった。これで、普通の相手にも余裕で勝てるだろう。しかも、レギスには常時【危険察知】というスキルがある。安心感だけは半端ない。
「待った。二人のステータスは見せてくれないの?」
絶対聞かれると思った。ま、まぁ、私だけ隠すのもあれだし、見せるべきだよね?
「いや、何言ってんの? 個人情報! それに女の子の身体を勝手に見ようとするなんて変態! バーカ!」
「なんでやつだ! 人には見せろと言っておいて! 」
「うるさい!! 変態!ちなみに雪も見せないからね! バーカ!」
「なんだと!? くっそ。……はぁ。ま、いっか。なんとなくこんな気はしてたし、俺が強いってことだけ分かってもらえればいいや」
私は既にステータスを出そうとしていたが、レギスが諦めるのなら見せなくてもいいだろう。
私はすぐさまメニュー閉じ、歩き出した。
「それじゃ、さっさと行きますか!」
ステータスの話も一段落した所で、私達は北に向けて歩き出した。事前に村の人から聞いた情報で、北の火山の中心部分に隠されたダンジョンがあるというのを教えてもらってるのでそこを目指す予定だ。
「あ、あれだけ見とかなきゃ」
二人が先歩いている中、私はメニューを開き、残りの生存者とダンジョン数を見る。
生存者:
ダンジョン数:
「雪!置いてっちゃうよ?」
「あ〜ごめん! ちょっと待って!」
生存者数のあまりの少なさと、ダンジョンが残り少しなことに嬉しさと悲しみを覚えながら私は二人の元に走った。
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私たちが走った結果、何故かみんな走り続け、いつの間にか火山に着いてしまっていた。これはこれでいいが、正直疲れている。
「ふぅ。ここが火山か……いかにも暑そうだね……」
「ってか、もう暑いよね……」
「こんな中登って、更にはダンジョン探すとか俺的にめっちゃ辛いんだけど」
「レギスちょっと見つけてきて〜」
「そんな無茶な!!」
「ま、話しても仕方ないし行かなきゃなぁ……」
うだうだ言いながらも私達は歩き出した。
何回も水を飲み、進む。坂道な上に暑い。こんな中思い出すのは、中学の時に体験した夏の部活。あの時はほんとに辛かった。今並だね……
「おっと、敵襲か。強いやつじゃなきゃ良いけど……!」
レギスの危険察知にモンスターが反応し、私達は警戒する。
「なんだファイヤードラゴンか。なら雑魚だな」
敵が分かった瞬間、レギスは突っ走り一人で倒してしまった。
「せっかく鑑定したかったのに……」
「ごめんごめん。なんか弱そうだったからさ! で、どうだった俺の強さ! やばくない!?」
「どうでもいいし……」
私に対してドヤ顔で言ってくるが正直どうでもいい。どうせレギスじゃなくても倒せそうだったし。
「ほらほら、早く行くよ!」
私とレギスが話しているを気に入らなかったのか、花奈が私の手を取り歩き出した。
「ちょ、俺を置いてくな!」
そして、私達はまた進み、遂に頂上付近という所で、一番の難敵に出くわしてしまった。いや、まだ敵自体には気付かれていないが、私達からなら見えるというだけだが。
「ほんと、なんでこんな所でこいつと戦うかなぁ……!!」
花奈はどうやら戦った事があるらしいが、私は名前しか知らない。
「ま、俺たちなら勝てるっしょ!」
レギスがいれば何とかなるかもしれない相手。その名も『炎王』先程のファイヤードラゴンとは比較にならないほどの強さを持っている相手。この火山のボスと言ってもいいくらいだろう。
「……ふぅ。よし! 二人共! 全力で倒すよ!」
私の声を合図に二人は走り出した。
もちろん、私は援護役だ。遠くからのスナイパー。
こうして、私たちの初めての三人戦闘は始まった。




