七十一話 「ピンチ」
「ほらほら! こっちですよ!!」
私たちの作戦は順調だった。しっかりと、キアランは魔物を引き付けてくれている。
「あの。大丈夫ですか? 今この縄を解きますね」
キアランが四匹と戦っている間に、私は攫われた人を助けた。人の数は二人。どちらも美しいと言えるくらいの美女だ。
「ありがとうございます……ですが、縄を解いてくれただけで大丈夫です。貴方はあの方のお手伝いをされた方が……」
「えっ? あの方?」
私が驚き、キアランの方を見ると、キアランは傷ついていた。周りには倒したであろう魔物が二匹転がっているが、残りの二匹にやられているようだった。
「やばっ。助けなきゃ!!」
「はい。私達は村へのルートも分かりますから、後でまた会いましょう。その時に改めてお礼を致します」
「でも、本当に大丈夫?」
「大丈夫ですわ。今回の魔物には及びませんでしたが、そこらの魔物なら私の姉が倒してくれますから」
そう言って、先程から一言も喋らない姉の手を握りはじめた。
「ごめんなさい。姉は内気な性格で……」
「い、いえ! 大丈夫ですよ!! それと、私はこれから戦いに参戦しますので、村についたら花奈という方を探してください。その人がきっと村を救ってくれたと思いますから!」
「はい! ありがとうございます。あなたもお気をつけて」
「うん! 村まで気を付けてね!!」
二人は手を繋ぎ、走って行ってしまった。
「さてと、私もやりますか! 【アイスアロー!】」
やはり、援護するなら細かいところも狙えるこの魔法が一番だろう。
「キアラン!今助けるから!!」
傷ついた身体では二匹の猛攻を守りきれないのか、キアランの体に傷は増えていく。
そんな中、私の撃った矢は、見事に一匹の魔物に刺さった。そして、私の攻撃が奇跡的にも急所に当たったのか、一発で絶命してしまった。
「あと一匹!!」
「フム。ゼンインシンデシマッタカ。ナラバ、オレモホンキヲダサナイトナ」
私の攻撃に気付き、キアランへの攻撃をやめた。
一瞬は諦めたのかと思ったが、それは全く違った。逆に、最後の魔物は力を貯め始め、どんどんでかくなっていく。
「鑑定!」
私は突然寒気を感じていた。なんていうか、明らかに私より強い気がしたのだ。だから、私は鑑定を使用した。レベルを見ればハッキリするかもしれない。
オークジェネラル
レベル:94
弱点:火、雷、闇
スキル:【フルスイング】【兜割り】
やっぱりだった。私とレベルが離れている。私の約二倍だ。
ただ、鑑定をして分かったのは、まだ私に勝ち目があるという事。
「【ダーク!】」
闇が弱点だと分かった今、とりあえず闇魔法を放つ。ただの目隠しだが、やはり脳筋に目隠しは有用だろう。
現に、オークジェネラルは周りが見えなくなってか、暴れ回っている。持っている無骨な棍棒を振り回し、木を粉砕し、石をも破壊している。近付くのは容易ではないだろう。
「あれが、あいつの力か……」
もしも、あいつが私らを狙って攻撃してきたらどうなっていたのだろうか。そう考えると、自分が闇魔法を使えて良かったと思える。
「では、私が止めを刺してきます……」
キアランはふと立ち上がり、少しだけ傷が癒えたのか、愛用のナイフを手に持ちオークジェネラルへと近付いて行った。
「ダメ!キアラン!危ない!!」
私の言葉は遅かった。既にオークジェネラルの闇魔法は解け、完全に目が見えている。そんな中、フラフラの敵が近付いたらどうなるのだろうか。そんなのは、考えなくても分かることだった。
「ガハッ……」
腹に棍棒がめり込み、キアランは吹っ飛ぶ。
本来なら何処まで飛んだのか分からないが、途中で光となって消えてしまった。死んだからスキルが終わったのだろう。
そして、今わかることはもう一つある。それは、私が絶対絶命だということ。闇魔法を一度受けたからなのか、先程から【ダーク】を唱えても効いていない。
「どうしよう……戦っても勝てる気がしないし、周りに人も居ない。逃げる? いやでも、今逃げたらまた村の人が襲われちゃうし……」
私は必死に考えていた。どうすればこの状況を抜け出すことが出来るのかを考える。でも、一向に解決策は見付からない。
そんな時だった、私のことを影が覆いかぶさった。
「えっ……」
私が顔を上にあげ、前を見ると、魔物が私に対して今にも棍棒を振り下ろそうとしていた。
「ほんと、私この世界で死にかけてばっかだなぁ……」
目を閉じ、出来る限り頭に当たらないように身構える。
棍棒を振り下ろされると思った瞬間だった。私の近くで大きいものが倒れたかのような音が聞こえた。
「あんま諦めた顔してっと、可愛い顔が台無しだぞ?」
目を閉じていて、何処にいるのか分からないが、男の人の声が聞こえた。
「ほらほら!目を開けて!」
言われた通り目を開け、前を確かめる。
「おっ、やっぱり可愛い! ってあれ? どっかで会ったことあったよね?」
私の目の前に立っていたのは、オークジェネラルを寸前で倒してくれた恩人。そして、いつか何処かで見た事のある男の人だった。
やほぅ٩(。•ω•。)و




