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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
2章 『親友』

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六十六話 「バカな私」

 ドラゴンは既に戦闘態勢に入っている。

 口からは今にも吹き出しそうな炎が見えているし、スキルを使っているのかわからないが、爪が銀色に光輝いている。これは、私の予想だと先ほどのコモドドラゴンの持っていたスキル【アイアンクロー】と同じものだろう。


「雪! 下がってて! ブレスが来るよ!」


 花奈は行動パターンを分かってるのだろうか。それとも、一度でも戦ったことがあるとか?


「雪!ぼーっとしないの!」


「ご、ごめん。ちょっと考え事……」


 私が口を開き、話し始めた直後だった。人間には到底届かない上空から、炎が私達に降り注いだ。

 見事に何も対策をしていなかった私はブレスに包まれ、死を覚悟した。


「全く。ほんと、雪は考えるのが好きだなぁ」


 目を閉じ、私は死んだと思っていた。なのに、花奈の声が鮮明に耳に届く。

 私はまだ生きてるのだろうか。まだ炎に包まれているかもしれない中、私は目を開けた。


「花奈……さすがだね……」


「ま、私だからね!」


 言い返す言葉もなかった。それほどまでに花奈は凄い。私が咄嗟に判断出来なかったのにも関わらず、花奈はしっかりと私と自分を包み込むようにバリアを張ってくれている。

 そのお陰もあってか、バリアの外は火の海なのに、私達は熱くもないし、熱風も届いていない。


「さてと。雪。ここからは本当にぼーっとしちゃダメだよ。今回の敵は私一人だと多分勝てないからね。雪に背中を預けるんだからよろしくね」


「う、うん。ちゃんと私も戦う! 花奈に頼ってばっかじゃ良くないもんね!」


「ふふっ。任せたよ。 それじゃ、そろそろブレスも止むだろうし、魔法の準備よろしくね」


 まるでいつもの花奈とは違うようだった。いつもよりも言動は冷静ですごく落ち着いている。


「私の新魔法、見せちゃうよ!」


 レベルが上がってから一度も使ってない魔法。とゆうか、ずっと短剣だけで勝てて来たから使わなかっただけなんだけど。ま、今回は相手が空中だからね。魔法使わないと届かないし。そして、もちろん使う魔法は……


「雪! 今!」


「分かった! 【アイスアロー!!】」


 私が魔法を唱えた瞬間、私の手には氷の弓が現れ、更には空中に矢が現れた。

 初めてこの魔法を使った私は、一瞬驚いたが、すぐに使い方をマスターした。

 まず、弓を構え、周りに飛んでる矢を手に持つ。後はそれを放つだけ。どうやら、一回狙いを定めると正確に当たるらしく、凄く扱いやすかった。


「お、雪は魔法の扱い上手いね!」


「そうかなぁ? この魔法が簡単なだけなんじゃ」


「いやいや、私もその魔法使ったことあるけど全然当たらなくてさ……ほんと、難しかった……」


「で、花奈。あのドラゴンどうやって倒す?」


 既にドラゴンは地に落ちている。炎に紛れて見えなかったのか、私の魔法が上手く目に当たり、片目が潰れて落ちたのだろう。

 そして、片目が潰れたことに対して今にも怒り狂いそうなのは私でも分かる。


「んじゃ、私が近接攻撃するから、雪は遠距離からよろしく!」


「ま、それが一番だよね。花奈のが危険だから気を付けてね」


「雪の援護があれば余裕でしょ!」


 そう言って、花奈は刀を取り出し刀身に魔法を掛けた。いわゆるエンチャントというやつだ。

 一瞬で刀に氷が纏い、花奈に似合う綺麗な刀となった。


「おぉ。綺麗……」


「そうでしょ? ま、これで私は戦えるから、雪は引き続きその魔法で任せたよ」


「間違えて花奈に当てちゃったらごめんね」


「当てたら怒るからね〜」


「大丈夫大丈夫!」


 私達は少しだけ笑いあった。ただそんな時間はもうない。ドラゴンも完全に怒り狂い、自分の片目を潰した相手を完全に殺す気でいる。ここからは私達に余裕はないだろう。


「ふぅ。よし。殺るか」


 それだけを言い、花奈は刀を構えながら走っていった。

 私はその背中を見ながら弓を構え、花奈に当てないようにドラゴンを標的にする。


「行っくよー! 【ブレイブバースト!】」


 遠くからでも花奈の声が聞こえてくる。これはスキルを使った声だろう。

 かろうじて見える花奈がスキルを使った後の動きが凄かった。まるでアニメを見ているような光景だった。ドラゴンの攻撃を紙一重で避けてはその瞬間に一太刀加える。ほとんどそれの繰り返しだが、私の目からはまるで舞っているように見えた。次第にはドラゴンは傷だらけになり、私の援護無くしてほとんど倒す寸前までいってしまった。


「雪!危ない!」


「えっ……?」


 ついつい魅入ってた私は気付かなかった。いつの間にかドラゴンの口がこちらを向いていて今にも私にブレスを吐こうとしているのが。


「ほんと、私ってバカ……」


 今の私にはどうやっても守る手段はない。アイスアローでは防げないだろうし、花奈は近くにいない。絶体絶命というやつだろう。


「雪ー!!!!」


 花奈が私に近づいてきているのが分かる。


「花奈!ダメ!!」


 いや、近付いちゃダメだった。今にも私にブレスを吐こうとしているのならば、その直線上に来てしまったら直撃してしまう。私よりも花奈の方を大事にしたかった。また失いたくない。


「私は雪を守る! そう決めたんだがら!」


 私の言葉を花奈は聞いてくれなかった。その勢いのまま、私の前に立ち、見事にドラゴンのブレスに直撃してしまった。もちろん、私の代わりにだ。


「花奈までいなくならないでよ……」


 花奈のお陰で私は無傷だが、花奈は分からない。あれほど強い花奈だから大丈夫かもしれないが、直撃してしまったならどうなってるかは分からないだろう。


 ブレスを当て、満足したのかドラゴンは少し落ち着いている。

 そんな中、私は炎に包まれて見えない花奈を待っている。いつものように出てくるのを待っている。ただ一人涙を流しながら。

よくある展開ですんません……((´∀`*))

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