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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
2章 『親友』
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六十二話 「夢の結末」

 私は暗いところにいた。

 さっきまでは花奈と一緒に寝ていて、凄く心地よかったのに、今は不自然に気持ち悪い。


「ねぇ! あそぼうよ!!」


 何処からか声が聞こえる。私を呼んでいるのか、それとも違う人を呼んでいるのか分からない。

 でも、実際には誰かの名前を呼んでいたはず。機械音のようなものが名前の部分を塞ぎ、見事に聴こえなかった。


『うん! なにして遊ぶ?』


 また声が聞こえる。

 今度は私の知ってる声。桜の声だ。この世に居ないはずの桜の声。

 私はこの時点で気付いてしまった。

 ここが夢の世界という事に。

 そして、その瞬間に私の目の前は真っ暗から変わった。

 それは、私が元いた世界。桜も生きていて、私も桜と喋っている。更には、エミリとメールもしている。


「あはは……桜がいる……」


 これが夢だとしても、もう一度桜を見れたことが嬉しい。

 いつの間にか、私の両目からは涙が流れていた。そして、私が今見ている私からも涙が流れている。体が連動しているのだろうか。

 私は試しに自分の頬をつねってみた。


「いたっ!」


 やっぱりだ。今の私自身を傷つけると夢の世界の私も同じ傷がつく。でも、私の声は夢の桜には届かない。


「ねぇ、お姉ちゃん? 花奈ちゃんが居ないんだけどさ……何処に行ったか……お……い……る?」


 桜の声にノイズが入ったように聴き取れない。

 でも、言いたいことは大体分かった。桜は、今この場に居ない花奈を探しているということ。


「あれ? 待って、花奈って……」


 私は困惑していた。元の世界を見ていると、どうしても頭に花奈が浮かばないことに。顔もモザイクがかかって思い出せない。名前は分かるのに、何も思い出せない。


『そっか。花奈はあっちを選んだんだね』


 夢の私が急に喋った。私は考え事をしていたせいで、あまり聞けなかったが、あっちを選んだという部分だけが妙に引っかかる。

 あっち? あっちって何処なんだ? もしかして、今の私が居る世界?


「またね。お姉ちゃん」


 いつの間にか、私は夢の世界から離れていた。

 いや、厳密には、私が離れているのではなく、夢自体が私から離れている。そして、また違う夢が私に近づいてきている。


「今度はなんだろ?」


 私は薄々気付いていた。今元の世界を見たということは、次はこっちの世界の夢を見るのだろう。


「ねぇ、雪。今日は何する?」


 やっぱりだった。こっちの世界では、花奈と私が喋っている。

 これが今からの私達の未来なのか分からないが、こっちの世界では、二度と桜やエミリには会えないのだろう。


「ねぇ、雪はどっちを選択するの?」


 その声は妙に耳に響いた。さっきまで話していた花奈の声とは違う。昨日のお城探索の時に話した時と同じ真剣な表情と声。

 でも、私には分からなかった。私は何を選択するのだろうか。この夢は何を私に伝えたいのか。

 いくら考えていもなにも浮かばない。いや、本当は分かっているけど考えたくないのかもしれない。


「私は……」


 考えられなかった。花奈の言いたいことは分かる。初めから分かっていた。

 それは、私が元の世界とこちらの世界。どっちを選ぶかだ。

 違う。花奈と桜。どっちを選ぶか問いかけられているのだ。そんなの答えれる訳が無い。両方とも私には大事な存在。きっと、このまま物語が進むと、花奈はこちらの世界に残ることを選び、私と離れ離れになるのだろう。


「私はそんなの嫌だ!」


「そう。やっぱり、雪は私の親友だね。頑張ってこの結末にならないようにね」


 私が叫ぶと、声が伝わったのか、花奈も喋り出した。

 所詮今私が見ているのは夢。まだ結末は変えられる。花奈は私にこの夢のようになってはいけないと言っているのだ。

 でも、この夢を変えるのに、花奈に元の世界に帰りたいと思わせなきゃいけない。


「まだ時間はあるし、大丈夫だよね?」


 少しずつ不安になった私は声に出して確認する。そう、まだ時間はあるのだ。いや、どうだろう。時間は果たしてあるのか?

 また私が考えていると、いつの間にか夢は消え、また真っ暗な空間に戻った。


「雪! 起きて! 大丈夫!?」


 暗い空間に光が見えた。それと同時に花奈の声が聞こえる。

 これは、私が夢から覚める合図だろう。

 今回の夢は私を悩ませてばかりだ。一体私はどうすればいいんだろう。元の世界に戻って花奈の居ない生活に戻るか、こちらの世界にいて花奈しか居ない生活を選ぶか。


 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「雪!!」


「ん……花奈、おはよう」


 私は夢から覚めた。最後に考えていたが、結局私の中で答えは決まらなかった。そのまま、花奈の声で目覚めることが出来た。もし、花奈が声をかけてくれなかったら私はどうなっていたんだろうか。一生あそこで考えていたのかもしれない。


「大丈夫? だいぶうなされてたけど……」


「うん。大丈夫。ちょっと変な夢を見ただけ」


「そう。ならいいけど……」


「ふふふっ。花奈は優しいね!」


「う、うるさい! 心配だっただけだもん! もう! 早く朝ごはん食べよ!」


「照れちゃって。可愛いなぁ……」


 花奈を不安にさせないようにいつも通りを演じる。これからの選択によってはもしかしたら花奈と会えなくなるかもしれない。

 そう思うと涙が出そうだった。


「早く! 顔洗って行くよ!」


「はいはい。ちょっと待っててね」


 まだ私はどんな選択をするのか分からない。でも、これだけは分かる。今の花奈との生活。それを大事にしていかなきゃいけない事。


「まだー?」


「もうすぐ行くから!」


 私に花奈を元の世界に戻りたいと思わせることは出来ないかもしれない。だけど、私はこの限られた時間で精一杯頑張ろうと思う。

 っと、その前に朝ごはんだ。花奈も待っている事だし、私は早く行くことにした。

夢って怖いですよねぇ……

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