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ゲームで少女は夢を見る  作者: ねぎとろ
2章 『親友』

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五十五話 「謎の扉」

 抜け道を使って元々宝箱があった部屋に戻る。正直戻りたくなかったけど、勇者と出会わない方法はここしかない。


「あの暗い部屋渡らなきゃ……」


 考えるだけでも憂鬱になる。あのそこら中から見られている感覚と、追いかけられる恐怖。しかも真っ暗だから進む方向も分からない。でも、私にも対策自体はある。と言っても、ほんとに効果があるかは分からないけど。


「でもまだ使い方がなぁ……」


 スクロールを見ながら私は呟いた。このスクロールをどうやって使うのか。ただ魔法名を言えばいいだけなのか、本当に分からない。けど、いつまでもこうやってウダウダしていると、勇者達が来てしまうだろう。

 勇者は格別に強いはず。とゆうことは、ここのダンジョンくらいなら簡単に攻略してしまう。


「私が最初にクリアしなきゃ!」


 自分に言い聞かせ、私はスクロールを手に暗闇へと向かった。これ以上の時間は本当に無駄だ。ならば、いっその事進むしかない。怖いけど、私は賭ける。このスクロールが使えることを。


「【ライト!】」


 暗闇に入って、また視線を感じた。だけど、私は震え腕を上にあげ、魔法名だけを叫んだ。

 私の声は部屋に響き、少しの間静寂だけが流れた。

 たが、次の瞬間、私の手からはスクロールが粉々になって消えていき、その代わり、部屋全体が明るくなった。とゆうよりも、ダンジョン自体が明るくなったと言えるだろう。


「おぉ……これで逃げれる……」


 唖然として驚きつつも、光に対しての安心感があった。そして、この光があればこの部屋にいたのがなんなのかわかるはず。


「あれ? 誰も居ない?」


 何故だろう。私が入った時はあれほど光っていた目が今や一つもない。明かりがついたから見えにくいとかじゃなく、本当に何も居ない。ただ私が一人だだっ広い部屋に居るだけ。


「なんだったんだろう……」


 不思議に思いつつも、今のこの安全な状況のまま私は部屋から出る事にした。もしも、魔法が切れてまた暗闇に戻ったら大変な事になる。多分だけど、あの部屋に居た魔物? は暗闇の中じゃないと生きていけない感じの生き物なのだろう。


 部屋を出て、前とは違う道を進む。辺りは前よりも断然に明るく、天井付近まで普通に見れちゃうほどだ。こうなると、流石に魔物はいない。前回も見えないところにいた訳だから、明るくて見えやすいうちは出てこないだろう。

 でも一つだけ気がかりな事がある。それは、あの大きい魔物。私に眼中もなくただひたすらに大声をあげて走っていた。


「あいつには光効かないよなぁ……」


 あの時点でも、周りには蝋燭が一応付いていた。そんな中走れるということは、あまり光が効かないと言うことだろう。


「うぅ……早く行かなきゃ」


 考えるだけでやはり怖い。第一、私とこのダンジョンの魔物とのレベル差がどれくらいなのかわからない時点でやばい。とりあえず鑑定は常に発動させておくべきだろう。少しずつ体力の削られている気がするが、それも気にしなければあまり分からない程度だ。我慢我慢。


「うわぁ……最悪……」


 鑑定しつつ進んでいると、血塗れの死体と所々噛みちぎられた死体が無残にも残されていた。これは一体誰なのか。もはや、男なのか女なのかすらわからないほどにぐちゃぐちゃだ。


「あれが原因か……」


 死体から少し離れた位置に、私が最も警戒していた魔物が倒れている。明らかに死んでいるだろう。数十箇所に切り傷があり、さらには目に剣が突き刺さっている。これは、勇者の仕業なのだろうか。


「これで私の道中は安全だけど……もしあの死体が勇者の仲間とかだったら、このダンジョンやばそうだね……」


 この時私は気付くべきだったのだ。何故今ここに勇者が居るのかを。勇者がわざわざ攻略しに来るということは、どれだけ強いダンジョンなのかを。でも、私はまだその事実に気付いていない。


「どうしよう。やっぱり引き返すべきかな……」


 私は急に怖くなった。人間の死体は既に何度か見ている。こう言ってはなんだが、見慣れていると言えるだろう。多少の嫌悪感や恐怖を感じるが、叫ぶ程でもないし、魔物との戦いは死と隣り合わせなことくらい今の私でも分かる。

 でも、それ以上に怖いのが自分の死だ。

 さっき、たまたま居た昨日戦ったコウモリを鑑定することが出来たことも原因の一つだろう。その時の結果を見て、私は愕然とした。



 ヴァンパイアバッド


 レベル:17~21


 スキル:ドレイン


 弱点:光


 鑑定のもう一つの能力で、一度見た魔物の平均レベルと弱点、大まかなスキルを教えてくれる能力がある。それが、今見ている私の画面だ。


「私とのレベル差が……」


 私まだレベル2だ。いくらステータスが高くても勝てないだろう。なんてたって、レベル差が最低15。ステータスまでは分からないが、集団で襲われたら絶対に死ぬ。


「やっぱり駄目だ……」


 その時、逃げようと思った私の前に一つの大扉が現れた。いや、前というよりも、すぐ近くに現れたと言った方が正しい。


「なにこれ……」


 明らかに昨日は無かった場所にある扉。絶対に開けちゃダメな雰囲気が漂っているにも関わらず、私は開けてしまった。本当に自分が馬鹿すぎて嫌になる。


「やぁ! お嬢さん! 君もお困りかな!?」


 私が入った直後、自動で扉は閉まり、開かなくなった。さらには、目の前からやたらハイテンションな声が聞こえてくる。


「うんうん! この場所に入った時点で気付くべきだったね! そうなんだよ。僕も昨日までは冒険者だった。でも、仲間を失った僕に手を差し伸べてくれたのがこの部屋の主様だ。君も安心して魂を預けるといい! きっと素晴らしいこと……が……」


 一切何も反応していないのにも関わらず、自分語りをして、私の前まで来たその男は、突如バラバラになった。バラバラにした犯人は十中八九、男の隣に居た人物。私が見えたのは、謎の人物が男を一発殴った所だけ。それでバラバラにするんだから相当な強さだろう。


「鑑定するのはやめた方がいい。結局無駄になるのだから」


 どうして私が鑑定すると分かったのだろうか。でも、それ以上に力の差を感じる。現に、今の私は弱すぎて、相手の声だけで体が震えている。


「ふむ。ここまで弱いとは。まぁ、人間の魂は美味。とりあえず貰っておくとしよう」


 魂を奪われたらさっきの男みたいになるんだろうか。それは嫌だ。でも、足は動かないし、仮に動いたとして、反撃しても無意味だろう。このダンジョンでは私のステータスなど雑魚に過ぎないのだから。


「ふーん……ここがボス部屋かぁ……」


 扉が突然開き、一人の男の声がした。誰かが来たことに少しだけ安心感を得た私は振り返り誰が来たのかを確認した。


 振り返り、私は気付く。開いた扉から入ってくる複数の人物。そして、それを率いる一人の男。それは、この世で一人しか振ることの出来ない輝く聖剣を持つ、紛れもなく本物の勇者だった。

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