五十二話 「一人旅」
とりあえず勢いで街を出た私だが、肝心なことにどこに行けばいいか分からない。一応、酒場で付近のダンジョンや、小さい街、それに村などを教えて貰ったが、それも合っているかどうかだ。
「あ〜……結構情報に払ったお金が高かったんだけどなぁ……」
やはり、酒場で貰う情報は無料ではない。その為に払ったお金は私が今着ている防具よりも高いほどだ。
「そういえば、ステータスどうなってんだろ」
噂では、武器や装備に補正というものがついて、まるでRPGと同じようにステータスに上乗せされると言っていた。それが果たして事実か分からないが、とりあえずいつも通り、メニュー画面を開き、自分の装備やらステータスを確認することにした。一応ね。うん。一応。
スノー
レベル:2
HP:6
MP:10(+16)
スタミナ:3(+23)
STR:10(+125)
VIT:10
DEX:10(+28)
AGI:10(+15)
INT:60(+18)
LUCK:10
CHARM:10
武器:レイディスの短剣
頭:マジカルサークレット
胴:マジックローブ
腕:賢者の手袋
腰:ショートパンツ
足:ロイヤルブーツ
アクセサリー:王の指輪 鑑定の指輪
スキル: 【ファイヤーボール】 【鑑定】
能力振り分けポイント:55
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うん。まぁ、何となく噂は信じてたよ? 武器とか防具でステータスに補正が掛かるのはね。でもさ、短剣強すぎじゃない? あれだけ桁違いじゃん。
「でも、レイディスの短剣って……」
いくらなんでもその名前はないだろう。確かに、レイディスから貰った武器だけどさ、もうちょっといい名前にして欲しかったよ。
「残りの振り分けポイント……どうしようかな?」
まだ割と残ってるポイントを振るか迷う。実際、ポイントは貯まりにくい。レベルが上がってもどうせ5ずつだろうし、レベルは上げにくいし、これならば取っておくのが正解だろう。
「よし。とりあえずダンジョン行くか!」
今自分が居るところから一番近いダンジョンに向かうことにした。今のレベルでどうにかなるか分からないが、割と高めの装備と、武器があれば戦えるだろう。ほんと、私にお金をくれたあの老夫婦。感謝でしかない。また会えたら、絶対になにか返さないと。
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「ふぅ。狩っても狩っても減らないなぁ……」
私は窮地に立っていた。ダンジョンの少し手前、そこで、大量の魔物に襲われたのだ。今までなんで襲われなかったのか謎なくらいの量が襲ってきている。
「勝ててるけど疲れが……」
現状、魔物自体は弱い。一体一体の個体値はすごく弱いのだが、量が半端じゃない。そうなると、疲れが蓄積して、次第にやられるかもしれない。
「あ、鑑定しとこうかな……」
ふと自分が鑑定を使えることに気づいた。そこで、とりあえず私は目の前に居る魔物に目を向け、鑑定の魔法を使うことにした。
ボーンウルフ
HP:4
弱点:炎
スキル:なし
「ふむふむ。この魔物達、ほんとに弱いな」
鑑定結果的に、そんなに情報がないし、スキルも持ってない。相手の体力しか分からないが、まぁ現状一発斬っただけで倒せてるし、RPGで言うと、序盤の敵と同じレベルの敵だろう。
「よし、こいつらの弱点的に、ファイヤーボールで一気に倒すかな」
唯一覚えている攻撃魔法が炎属性で良かった。これなら、周りに炎上して、一気に倒せるかもしれない。短剣で倒していたらキリがないし、今はこれに賭けるしかない。
「ファイヤーボール!!」
手を前にかざし、魔力を手のひらに集める。その後、イメージして飛ばす。今まで何回もやってきた事だから出来るはず。
「うそ……出ない……」
成功してきたはずなのに、一切手のひらから出ない。魔物も私が何もしてこないと分かったのか、ジリジリと近寄ってきている。
「ファイヤーボール!ファイヤーボール!お願い!」
どうして私は焦ってるんだろう。冷静にやれば短剣でも勝てるはず。そんなにファイヤーボールに頼らなくても……
「いや、ダメだ。レイディスに教えて貰った魔法。これだけは、絶対に出来るようにしなきゃ」
今出来なくても良いじゃない、今だからこそ出来なきゃダメなんだ。正直、短剣でも勝てる。今はまだ相手が少しでも警戒心があるからダンジョンまで突っ走りながら斬れば抜けれるだろう。でも、きっと、今使わなかったら二度と使わないで武器に頼る戦いになってしまうかもしれない。
「よし。やれる。私なら、出来る。あんなに練習したんだから!」
この一撃が放てなければ、私は絶体絶命だろう。弱い魔物でも束になれば強くなる。これをいま身に染みた。でも、今回は私の勝ち。
「ファイヤーボール!!!!」
私の体からゴッソリとなにかが減った。それと同時に、手のひらからはいつもよりも数倍大きい火の玉が現れ、目の前に飛んでいった。
「凄い……」
威力はいつもとは桁違いで、魔物を瞬時に灰へと還してしまった。一人に炎が当たり、周りに飛び散って炎上していく。そうすることにより、群れの魔物は燃えて灰となる。
数分で魔物は燃え尽き、私は迂回して炎を抜けた。炎も弱まってそろそろ消える頃合いだろう。
「良かった。これでダンジョン攻略が出来る……」
炎を背に、初めてダンジョンの入り口に立った。正直言えば怖い。一人で挑むとなると本当に怖い。でも、頑張らなきゃ。こんな所でへこたれてたら二人にまで笑われちゃう。
「良し!頑張るぞ!!」
自分の士気を無理やり上げ、ダンジョンの入り口である扉を開けた。
中は真っ暗で十m先でも見えないだろう。でも、私は突き進む。
そして、私は意を決して歩き出し、暗闇へと進んだ。こうして、私の初のダンジョン攻略が始まったのだった。
今回から二章ですよ〜~( ´•౪•`)~




