四十九話 「もう一度また会う日まで」
首都は爆発して燃え尽き、首都としての機能は完全になくなった。そんな時、私の意識はなく、疲れきってしまったのか眠っていた。
「ん……うぅ……ふぁ〜……」
自分がいる眠っていた事実に気付いたのは、目が覚めてからだった。いつも通り欠伸をして目を擦る。
「ん~!……はぁ。ってか、なんで私魔物に襲われなかったんだろ……」
身体を伸ばし、周りを見渡しながら、呟いた。もちろん、反応するものは誰一人として居ない。その代わりと言うべきではないが、不自然な魔物の死体がそこら中に転がっている。まるで、眠っている私を誰かが守っていたかのように。
「もしかして、レイディス!?」
今この場で、私を助けることが出来るのはレイディスくらいだった。あの時、レイディスは私の前から消えたが、眠っていた私を見つけ、助けてくれていたのだろうか。いや、それとも違う誰かが見返りのために守ってくれていたのかもしれない。
「ん!? もしかして、あれは……」
今私がいる位置から少しだけ離れた岩陰。そこにまるでさっきまで人が居たかのような跡がある。
「近づいて大丈夫かな?」
やはりというべきだろう。安全面よりも好奇心が勝ってしまい、私は近づいて行った。一応、レイディスから貰った短剣を構え、いつでも戦える体勢だけは取っておく。
「よし!大丈夫そう!……んで、これは……やっぱり!」
岩陰から見た感じ、周囲には人影もなく、安全そうだった。そして、その場に残されていたのは、私の見たことがあるもの。さらには、唯一あげたものが残されていた。
「クゴの実……でも、あの時レイディス食べてたのような気がするんだけどなぁ……」
クゴの実の食べた跡と、乾燥肉を食べた跡がある。この二つを見た時、真っ先にレイディスを思い浮かべたが、レイディスにあげたクゴの実は一つだけ。となると、違う人の可能性も否めない。
「他にも何か無いかなぁ……」
辺りをもう一度よく見渡すと、不自然な石があった。薄くて平べったい。尚且つ、割と大きめの不自然な石。
「石版? まぁいいや!それより、裏になにか書いてあるのが気になる……」
少し重たいが、引っくり返し裏を見てみる。なんと、そこには文字がビッシリと書かれていた。何故か日本語で書かれており、私に読むことが出来た。
『私の三人目の友へ
お前を裏切って済まない。もし、お前がこれを読んでいる時、俺はもうお前の側には居ないだろう。だが、俺は生きている。それと、俺はまだお前には会えない。目的を達成しなければならないからだ。もし、俺が生きて目的を達成した時、また会おうじゃないか。あ、クゴの実は美味かったぞ。あと、お前の寝顔、ちゃんと見ておいたからな。
レイディスより』
これを読み、真っ先に思ったことは一つ。何故、手紙みたいな文章なのかということ。日本人でもないのに、この書き方をするとは思わなかった。やはり、手紙というのは、どこの国でも変わらないのだろうか。
「レイディスが生きてて良かった……でも、目的ってなんだろ? ま、レイディスがまた会おうって言ってるんだし、大丈夫だよね! わたしも自分の目的を果たさなきゃ!」
もう一度だけ身体を伸ばし、私はその場を離れた。首都がない今、向かう場所が無くなった。こうなると、行く場所行く場所によって私の旅は変化していく。
「よし!行くか!」
これ以上ここにいると、要らない涙が溢れてきそうだったから、私は動いた。まだ見ぬ桜と花奈を求めて。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「あっ、そういえば、レベルアップしたからステータス見とこうかな!」
歩き始めた瞬間に思い付いてしまったため、とりあえず私はメニュー開き、ステータスを確認した。
スノー
レベル:2
HP:6
MP:10
スタミナ:3
STR:10
VIT:10
DEX:10
AGI:10
INT:60
LUCK:10
CHARM:10
武器:
頭:なし
胴:ジャージ
腕:
腰:ジャージ
足:
アクセサリー:王の指輪 鑑定の指輪
スキル: 【ファイヤーボール】 【鑑定】
能力振り分けポイント:55
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
「うーん。ここじゃ魔法とスキルが一緒って事かなぁ?」
歩き携帯ならぬ、歩きステータスで私は自分のスキルを確認していた。まぁ、ここで歩きステータスをしても、魔物に襲われるくらいしか危険はないから大丈夫なのだが……
「そういえば、この指輪。ほんとに貰ってよかったのかなぁ?」
人差し指に嵌めている二つ目の指輪。レイディスが私に投げ渡した物。それは、紛れも無く、本当に鑑定魔法が使えるようになる指輪だった。
「ま、とりあえず、レベルはあげにくいってことと、魔法とスキルが一緒って事が分かったし良いかな!」
実際には、レベルによってステータスは上がってないし、能力値ポイントも5しか増えていない。あまり、気にしなくていいだろう。
「後は、そういえば、私の最後に見た夢。あれなんだったんだろ……」
私が首都に居た時の光景とは被る部分が少なく思える。最後に放ったあの言葉も、見つかっまレイディスに言ったのか、いや、あの場面でレイディスにあの言葉はおかしいだろう。ってことは、ほんとに誰に言ったんだ?
「うーん。よく分かんないし、あれはただの夢ってことにしとくかぁ……それに、あの夢には助けられたしね!」
あの夢のおかげで私は首都が燃えていることに気付き、レイディスとも最後に話すことが出来た。ただの夢だとしても感謝はする。そう思うのと同時に、ずっと歩き続けている私は少しだけ絶望していた。先が見えないことへと絶望だ。
「はぁ。私、どこに向かってんだろ……」
独り言をめっちゃ言いながら、歩いている少女。しかも、周りには誰も居なく、草原だけが未だ広がっている。
「これからどうしよっかな……」
既に数時間は合計で歩いているだろう。なのに何も起きないし、何もない。景色も変わらない。こうなってくると、段々嫌な気分になっていく。
私が歌でも歌おうかと思ったその時、私の少し前の道を馬車のような物が走っていることに気付いた。
「とりあえず、あそこ行ってみよっと!」
少しだけ元気が出た私は、歩くのを止め、すぐ追いつけるように走った。馬車の動きは想定外に速かったが、私の体力が限界を迎えそうな時、ようやく追いつくことが出来た。
「はぁはぁはぁ……あの、すいません。私を何処かの街に連れてってくれ、ませんか?」
疲れ切り、息切れをしながら訊ねる。幸いにも、馬車の所有者は優しそうな老夫婦で助かった。いきなり、こんな少女が話し掛けてきたら、普通はヤバイだろう。
「ん、あんた、街に行きたいのか。私らは、少し先にある街。カルロに向かうけど、そこでも大丈夫なら、乗ってくかい?」
やっぱり、この人たちは優しかった。私は、お言葉に甘え、少し空けてもらった荷台に乗り、老夫婦との会話を楽しんだ。ほとんどは、話を聞いていたが、退屈はしなかったから良い時間と言えるだろう。何より、この世界について色々教えてもらえたのは嬉しかった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
体感的には凄く短い時間だったが、いつの間にか街に着いていた。辺りは、そろそろ夜を迎えそうだし、だいぶ時間は経ったのだろう。
「うーん。この世界は三つの国で争ってるのかぁ……」
一人ボケーっとしながら呟いていると、老夫婦から話し掛けられた。
「あんた、街に着いたけど、お金は持ってるのかい? 無いようなら、これを使いなさい。多少は足しになると思うけど、後は、自分で稼ぎなさいね」
そう言って、私に少し重たい袋をくれた。中には、金色に輝く硬貨や、銀、それに続いて銅色の物が結構な量入っていた。老夫婦は少ないと言っていたが、これは充分な量だろう。
「ありがとうございます!ほんとに、なにからなにまで……」
「良いのよ。貴女と喋る時間はまるで娘と喋っているようで楽しかったわ。それのお礼だと思ってちょうだい」
それだけ言った後、馬車を動かし、街へと入ってしまった。私は、過ぎ去る馬車に、深くお辞儀をし、歩き出した。
歩き出して間もなく、門の近くにいた、衛兵に話しかけられ、持ち物のチェックをされた。その後、私はようやく街に入ることを許された。辺りには、人が沢山いて、誰もが首都の話をしている。
そんな中、私は一人ようやく街に着いた喜びと初めて一人で歩く街にドキドキするのだった。
もしかしたら、更新頻度二日に一回に出来るかもですよ〜~( ´•౪•`)~